閑話 (大切な贈りもの
クリスマスに因んだ話を考えて見たのですが良い話が思いつかなかった……。
短いお話ですが読んでやって下さい。
アスラが民達の健康状態を診断してから数ヶ月が経過した……もう一度逢いたいのじゃ。
いまやアマゾーン国は出産ラッシュのピークを迎えておるえ。
次々と産まれて来る子は母体とも合わせて心身共に健康なのじゃ。
不思議な事に未だ産まれて来る子は女の子ばかりじゃ――それに難産すらする者も今回に限り一人も居ない――アノ者が何か分からない力を使ったのかえ?まさかとは思うがそう捉えてしまうほどアノ者の力は偉大だからのぉ。
今日(現在)出産する者を終えれば残すのは妾のみ……期待と不安で押しつぶされそうじゃ。
「エロイーナ様、こんな所に居ては風邪を引きますよ」
「クレアよ、妾は不安じゃ」
「初めての出産で不安になるのは仕方ありません。ですがこれから母親になるエロイーナ様が不安がられては産まれて来る子も不安になりますよ?大丈夫です。アスラ殿の癒しの能力は継続しています。無事に出産出来ますから」
アスラ殿が妊婦たちを診て下さり、いつもなら誰かしら難産な者も出るのですが今回は初めて出産する者も含めて難産な者が一人も居ない、母子共に健康ときています。
なんて素晴らしいことなどでしょう。
「そうじゃの」
妾にはアスラがついておるえ。
アスラのお陰か分からぬが食欲もあるしカラダの不調も見当たらぬのじゃ。
以前見た夢ではないと思うのじゃがツワリなどの吐き気すら無い……本当に夢ではないよの?
「って!エロイーナ様ぁあ!破水してるじゃないですかあーっ!」
「えっ!?」
急に大声をあげるとビックリするであろう。
「えっ、じゃないですよーっ!どうして貴女は気づかないのですかあーっ!」
初めての経験なので破水していることすら気づかなかったのじゃ。
クレアにも他の者にもメチャクチャ怒られてしまったのじゃ。
妾以外の者が必死でバタバタしだしている光景は初めて見る光景なのじゃ。ふふ
少し滑稽な感じがして笑みが溢れそうになったのじゃが、それを顔に出せば凄く怒られそうな気がしたので我慢するえ。
そうこうしているうちに(イタイ!)こ、これが陣痛というヤツじゃな、初めて知る痛みじゃ。
周期的に陣痛の間隔も狭まり――いよいよ出産の時を迎えるえ。
(うーんうーん!)これは想像を絶する痛さじゃ!自らの剣で己の腕を斬り落とした時の痛さの比では無いのじゃ!
クレアが皆の者が赤子の頭が出たと言っておる!もっと気張るえ!(うーんうーん!)
「オギャーオギャー!」
うっ、産まれたのじゃ!
嬉しさのあまり涙が込み上げて来たのじゃが、妾が泣くより先に皆の者が泣いておる……
「エロイーナ様!お喜び下さい、女の子です」
「そうか良かったのじゃ……」
……男の子でも女の子でも無事に産まれさえすれば性別など、どうでも良かったのじゃ。
じゃが正直女の子が産まれホッとしたのじゃ……もし仮に男の子だったとした場合、産まれた赤子と一緒に誰の目にも触れず国を棄てるところだったのじゃ。
その事は例えクレアにも言えぬ、生涯妾の胸の内に仕舞っておく方が良いよの。
産まれた赤子を見れば可愛いのじゃ。
「エロイーナ様。お子の名前は決めておられるのですか?」
「勿論じゃ。この子の名は【アシュリー】そう決めておったのじゃ」
「アシュリー様ですね。とても良い名です」
フフ、皆 喜んでくれておる。
実は男の子が産まれた時は、名は【アシュラ】にする予定だったのじゃ。
どちらにせよアスラから妾に大切な贈りものなのは間違いないのじゃ。