とっておき
翌日前回治療で使用した闘技場で検診する事になった。
獣人の国ベスティアの闘技場を見ているだけに、ココの闘技場は規模も狭く感じられる。まぁ主要目的が異なるから仕方ないよね。
今日集まった人達は一応健康な人達、昨日の今日なので、そこまで人が集まらなかったと聞いたが……結構集まっているように思える。
とりあえず一人ずつ診るのは流石に時間がかかるので5人1組でヒーリングをかけていく。
ランバー国でやったように一気に50人くらいはヒーリングできると思うけど、また何を囁かれるか分からないから、ここは大人しく5人1組で。
前回の俺の治療法を知っているだけにスムーズに進んで行く。
一応健康な人達といっても本人すら気づかないうちに病気にかかっている可能性もあるし、この世界に存在しているかは分からないけど風疹なんかにかかっている場合、妊婦さんには最悪だからね、医学に疎い俺でもそれくらいは知っている。
目標として5日くらいで大人たちの検診を済ませ、次に子供たち、そして最後に妊婦さんたちを診て1週間前後で検診終了の予定。
――検診3日目、本日の検診も何事もなく無事に終了し、夕食を食べたあと与えられた部屋でマナミと2人で寛いでいると "コンコン" と、ノックの音がしたので開けてみると!
「アスラさん!お久しぶりですッ!」
「あっ!セシリア。久しぶり」
そう、俺の部屋に訪れたのは懐かしいカオ、セシリアでした。
しかも!お腹が大きいじゃないの。
クレアさんから話は聞いたらしく、早速来てくれたようだ。
妊婦さんだと分かっていたら俺の方から出向いたのに。「たまには散歩して動いた方がいいんですよー」とのコトらしい。
前回俺に渡してくれたボイスチェンジャーの見本を作っていたらしく、それを渡しに来てくれたようだ。
性能は前回くれた物と一緒。
そしてクレアさんから事情を聞いて、今回くれた物とは別にニューバージョンを製作してくれているらしい。どんな物を作ってくれているのか聞いたところ、出来てからのお楽しみとか「とっておきな物に仕上げますねー」っとのコト。
セシリアのとっておきは、本当に驚くくらい良い物だから、楽しみが一つ増えたね。
「アスラさんに、こんな可愛らしい妹がいるなんて想像しませんでした。でも、ここへ来るまで大変だったでしょう?」
「ちょっと人には言えないけど、俺の能力を使えばすぐに来れるさ」
「そうなんですか?」
そうですね。アスラさんは神様の様な人だから私たちの想像しない能力をお持ちなんですね。
「そういえばアスラさん聞きました?」
「ん?なにを?」
「アスラさんの癒しの魔法が評判ですよ」
「えっ?一応今診ている人達は健康な人だろ?誰か病人でもいたのか?」
「それがですねー ――」
なんでもセシリアの話では、今俺が検診している人達は一応健康な大人たちであるのだが、肩凝りが急に治ったとか、視力が悪い人達が急に視力が回復したとか、虫歯で悩んでいた人達も虫歯が治り欠けていた歯まで元に戻ったと話題になっているらしい……
「みんな噂してますよー救世主様の癒しの魔法は、本当に女神様を降臨していると!アハ」
他にも色々と聞いているのですけどネ
「………」
カラダ全体にヒーリングをかけたせいだな。
「それとですねー」
「まだあるのか!?」
「いえいえアスラさんの事じゃないですよ。アスラさんの妹さん、マナミちゃんでしたっけ?」
「マナミがどうかしたのか?」
マナミをチラッと見る。もしかして人じゃないのがバレたのか?
「それがですねー。アスラさんが検診している横で大人しく座っている様子がお人形さんみたいでカワイイってウワサになってますよー。アマゾネスの子供たちは活発な子が多いですからねー、悪く言えばガサツですもんね」
「なるほど……それで行儀よく大人しくしているマナミがカワイイのか」
「そーなんですよー」
「だってさ、マナミ」
"コクコク"
あ〜良かった。マナミが人じゃないのがバレたとヒヤヒヤしたじゃん。
「そうだ!子供と言えば、俺ってアマゾネスの子供たちと、ほぼ面識ないけど男っていうので怖がられないかな?」
「そうですね〜――大丈夫だと思いますけど、一概には言えませんねー」
「やっぱりそうだよなぁ〜初めて見る大人の男だもんなぁ。セシリア、なにか怖がられない様な手ってあるか?」
「そうですねーやっぱり食べ物とかで釣るとかじゃないですかねー」
「やっぱりそうなるか」
セシリアの言わんとしていることは分かった。つまり、お菓子の様な甘いオヤツで餌付け、いや釣ろうと言う作戦なんだろう。
セシリアにアマゾネスの子供たちが普段食べているオヤツ系を聞いたところ、クッキーの様な焼き菓子とか保存にもきく干した果物だそうだ。
なるほど……じゃあ俺の秘密兵器のお出ましだな。確かバックの中に一つくらいは入っているはず。バックの中に手を突っ込みゴソゴソし、発見!
「セシリア、コレなんだか分かるか?」
「何ですかコレ?綿のような物みたいですけど?」
そう、バックから取り出した物は以前作った綿菓子だ。
「一応食べ物だぞ。食べてみ」
セシリアに綿菓子を渡し、食レポをしてもらおう。
棒の部分を持ったまま不思議そうに綿菓子を色んな角度から見ている "クンクン" ニオイを嗅ぎ「なんとなく甘い香りがしますねー」と呟き、一口食べた。
「えーっ!口の中で溶けましたよコレ!しかも甘い!」
ビックリしてる。妊婦さんをビックリさすのはダメだけど、コレは大丈夫だよね?
「ふぁー!綿のように、ふわっふわなのに口の中では溶けて甘い!不思議な食べ物ですねー。アスラさん、コレはなんですか?」
「それ、俺が作った綿菓子っていう、お菓子なんだ。材料は砂糖だから単純に甘いオヤツさ」
「コレはいいですねー。絶対子供たち大喜びしますよー、いえ大人にもウケますねー」
セシリアに食レポしてもらって正解というか、綿菓子を初めて食べる人の反応が殆ど一緒だ。
さて問題は材料だな……
「それでセシリアに相談なんだけど」
「なんでしょう?」
「最初に子供たちの人数を聞いたんだが材料の粗目は子供たちにまかなえるくらい足りているけど、今セシリアが持っている細い棒が足りないんだ、なんとかなるかな?」
「あーなるほど。全然大丈夫ですよー。アスラさんから頂いたデリバで大量に弓矢を作成しているので、これくらいの細い切れ端は結構出ると思いますから」
なるほど、弓矢のシャフト部分の使わない材料を綿菓子の棒にリサイクルするのか。それは良い考えだ。
「もし大人たちも食べたいなら棒の追加と粗目なんかあるかな?」
「大丈夫ですよー。砂糖類は全然問題ないと思います」
「へ〜そうなんだ〜」
砂糖は結構希少かと思ったんだけどセシリアの話では、サトウキビのような植物が一部樹勢しているから砂糖には困らないらしい、逆にアマゾーン国では塩の方が希少らしい。
今度ココへ訪れた時は塩を大量に持って来てやろうと思った。
その後セシリアは色々手配してくると言って部屋を出て行った。あとはセシリアに任せておけば大丈夫だろう。
そう思いバックから綿菓子を作る機材をテーブルに取り出し就寝するまでの時間まで作れるだけ綿菓子を作ろうと思った。
早速作りたい理由は他にもある。
綿菓子に魔力を流し込みマナミに綿菓子を食べてもらおうと思ったからだ。
さぁー始めますか!レッツチャレンジ。