城内探索(探検
客室(籠の間)へ囚われたアスラであったがようやく落ち着きも取り戻し逃走(探検)に取り掛かろうとしていた。
「あー腹減った!」
もう昼過ぎてるんじゃないの?一応客人なんだから昼飯くらい持ってこいよな、ったく!
全く呑気なアスラである
昼飯は城を出てから食べるとして、もう一度部屋を確認して……………逃げる隙間すら無いね、じゃアレかな。
少し苦手な『透視』で隣の部屋を覗いて見るか。
ジー……
アスラが何故『透視』が苦手かと言うと、男なら誰しも憧れる能力、一度透視(覗き)を使い そこに見えたものは、よく理科室などで見かける人体模型が映ってしまったからだ。哀れ
それ以来アスラの中で邪な事で使用したら駄目だと言う結論に達したのだ。当時のアスラは単純に能力の使い方が未熟なだけである。
ふむふむ、誰も居ない部屋ですね(テレポ!)
隣の部屋に到着!これを何度か繰り返し人気がないとこ探索だな。
人気が無い部屋へ通路へと探索を繰り返すアスラそこで目に留まった場所で立ち止まる。
部屋の前で椅子に腰掛け座りながら居眠りしている侍女が居たようだ。
侍女さんが居眠りしてる……職務中に居眠りしてる部屋だから、たいしたものはないのかな?まぁイイか入ってみよう。シュン!
ん?女性の部屋か(キョロキョロ)!!人の気配がするヤバ!
「そこに居られるのは誰ですか?」
「!!!」
見つかった!
「す、すみません!城内のトイレを探してて迷ってるうちに、この部屋へ」
スゲー言い訳してもーた
「プッ、クスクス 面白い方ですね?表に侍女のリリは、居りませんでした?」
クスクスと笑う方を見れば、一人の少女が居た。腰くらいある長い金髪、白磁の様に綺麗な肌、優しそうな笑顔?まるで、お姫様みたいだ。
「あ、ハイ その侍女さんなら表で居眠りしてますけど?」
「あら、リリったら また侍女長に叱られるわクスクス」
「すみません!では俺は、これにて失礼します!」
「お待ちになって、少しお話しませんか?」
「えっ?!」
なにこの娘?
「自己紹介がまだですね。私ヴァルトリア王国第二王女ユーリア・ザイル・ヴァルトリアと申します」
「!!!」
エエ!?王女!お姫様!
「おれ、いえ私はアスラです!」
「クスクス そんなに畏まらなく楽にして下さいね。それと言葉使いも普段通りで、よろしいのですよクスクス」
「はぁわかり、分かった」
無理って!
「で、どうしてお姫様が俺なんて怪しい奴に?」
「クス そうですね話相手が欲しかったのと、私親しい友人が居りませんので、それともうひとつアスラ様の声は、とても優しい『音』がしたので」
「音?あー俺の事、様付けいらないよ」
音ってなによ?お姫様ボッチかよ!
「?何か おっしゃいました?」
「いえ、何も!で、どんな話をしましょうか?」
「私お城の外を出た事がありません。殆どこの部屋で過ごしていますので、出来ましたら外の世界の事を お話し下さい」
「はぁ?」
そうか お姫様だから おいそれと城から出れないのか。
「分かった、じゃあ」
外の世界っていっても、この世界来て間が無いからなぁ〜なにを話せば喜んでくれるかな?
そうして俺は元いた世界(地球)の出来事など、こちらの世界風にアレンジしてお姫様の相手をした。
お姫様は「アスラさん」とは呼んでくれない、様付けはむず痒。
お姫様に年齢を聞いたら「女性に歳を聞くのは失礼ですよ」って怒られた!彼女の年齢は15歳教えてくれました。
どの世界でも女性に歳を聞くのはタブーなのね。
年齢の割にはすごく落ち着いた感じだね、とても歳下とは思えない。
俺の話が相当面白かったのか終始クスクス笑っていた。その時お姫様の笑顔の違和感に気付いた……この娘目が見えてない……
「アスラ様の『高校』と言う学園 凄く楽しそうですねフフフ」
「…ぁ……うん…」
「アスラ様どうかされましたか?」
「……ぇ ぁ」
「……お気付きになられたのですね、はい私見えておりません」
「!!!」
やっぱり……
「でもアスラ様は、お気になさらないで下さいね」
「あの……いつ頃から……」
あー俺のバカなに聞いてんだ!
「私がまだ幼い頃の事です。その時に流行り病を患い幸いにも宮廷魔導師、医術師の処置も早く命を救われましたの」
「そして後遺症が目にきたのか……」
「はい、ですが命を救われたのは事実です。私誰も恨んでいません。むしろ命を救っていただいて感謝しております」
「治らないのか?」
「はい、アスラ様もご存知だと思われますが回復魔法では傷を癒せても病気は癒せないのですよ」
「え」
し、知らなかった……
「ですので お気になさらないで私城内の者たちに大変良くして頂いておりますの」
「ごめん!変な事聞いて、ごめん!」
あー、俺って絶対バカだわ。
「フフフいいのですよ、アスラ様、もっと色々お話しお聞かせ下さい」
そうか あの時宰相さんが医術師だとか回復魔法使えるかだとか、この娘の為に……
「あー分かった!お姫様王都にも学園あるだろ?お姫様は行かないのか?目が悪いのは分かったけど護衛つけてとかさぁ」
「お父様にも同じ事言われましたわ、ですが私一人の為に色々な方々に ご迷惑をお掛けするのは心苦しくて、ですのでお断りしましたの」
「そうか」
ああああーこの娘ええ子すぎるー!好きになりそううぅ
「アスラ様ひとつお伺いしても宜しいですか?」
「答えれる範囲なら」
「王宮へは、どのようなご用件で いらしたのですか?」
「あ、それね なんかね、急に来いって言われて来たらさ〜お前ー人かー!とか劣等種だぁー!とか訳分からん事言われて「籠の間」だったかな?そこへ放り込まれて腹立つからさぁ、抜け出して探検してたら、お姫様のとこへ巡り着いたんだ」
「プックスクス アスラ様って本当に面白い方ですわクスクス」
「そうかな?」
俺なにか面白いコト言ったかな?
◇ ◇ ◇
「じゃあ俺帰るわ」
「もう お帰りになられるのですか?」
「あー部屋から抜け出したのバレても面倒だし」
「また ここへは、来られないのですか?」
「あー機会があれば」
「………」
「お姫様」
「はい……」
「お姫様は奇跡を信じますか?」
「奇跡?」
「はい奇跡です。もう一度願って下さい、自分の目で見たいと!」
そう言って彼の手は私の瞼にそっと触れた……とても優しい温かい手…彼の温もりが伝わり、そして優しい温もりが薄れた時……
「じゃーな、お姫様!」
「あっ待って!アスラ様待って!」
彼は窓から鳥の様に飛び立って行ってしまわれた……ぁ 見える……
ユーリア姫の大きな叫び声に、慌て駆け込む侍女リリ
「姫様!ユーリア様!どうされましたか!」
「リリ……私 私目が、目がみえるの……」
「ぁぁ!姫様ユーリアさまああああ」
抱き合いながら喜びに泣くユーリア姫と侍女リリ
◇ ◇ ◇
その頃王宮の一室で円卓を囲み王を始め重鎮達が会議を開いていた。
「それで各地に散る密偵からの情報は、どうなんだ?」
「それが、あの者と一致する情報は有りません」
「現在通信魔道具で、彼の国より伝達が届いたのですが今現在も勇者3名は、彼の国に滞在中との事です」
「ではアスラと言う者は勇者では無いということか……」
「やはりただの劣等種か……」
「陛下!この度は私が招いたこと申し訳有りません」
「うむ、ギブソン頭を上げよ お主が娘ユーリアを思ってしたまでの事、この場におる全員誰もその事を咎める者などおらん!」
「ハ!」
「それでは次の議題に移ろう」
このヴァルトリア王国が平穏なのは表向き王、その他各領主の治世によるものだが、裏では各国へ派遣されてる密偵による諜報の活躍なのである。
冒険者に扮する者、行商など様々な所で日々情報収集を行っている。
どの世界においても情報を制する者は世界を制するのである。
然しヴァルトリア王国は戦争をする為ではなく戦争を回避する為の諜報なのである。
コンコンッ!「し、失礼します!」
「今は大事な会議中、陛下も居られるのだぞ!」
「さ、宰相殿申し訳有りません。し、至急お伝えしたい事が!」
「何をそんなに慌てておる申せ!」
「ハ!『籠の間』の者が逃走しました!」
《《《なにぃー!》》》
「あり得ん、あの部屋は対魔法、対物理攻撃に特化した作り、しかも鍵は魔道具で出来ておる!逃亡は不可能だ!」
「して部屋の破損状況はどうなっおる」
「ハ!それが何処も破損が無く鍵をこじ開けた形跡すら有りません!」
「陛下!」
「今すぐ総員を配備して隈なく探しだせ!まだ城内にいるはずじゃ抵抗すれば危害をくわえても構わぬ!」
「ハ!直ちに!」
「うーむ、あの者は一体何者なのだ」
「やはりゲイル殿が言われたように人でないのか?」
「しかし私の鑑定では人族でしたが……」
「うむ、ギブソンお主はあの者どう思う?」
「私も普通の青年に見えましたが……」
暫く沈黙が続いたその時、一人の侍女が駆け込んで来た。
「王様ー!陛下ー!」
「バカモン!侍女がこの様な場へ来るなどと!」
「ヒィさ宰相様ごめんなさい!」
「うむ、構わぬリリ慌ててどうしたのだ?」
「ユーリア様が!「なにーユーリアに何かあったのか!?」
その場の全員が一斉に立ち上がる!
「ユーリア様がどうかされたのか!」
リリを問いただすギブソン
「リリ!ユーリアがどうした?」
冷静な王子まで慌て出す。
そこへ一人の少女がやって来た!勿論ユーリア姫その人である。
「お父様、いえ陛下、皆様、このユーリア目が見える様になりましたわ」
《《《えー》》》
「ユーリアその目は、どうしたのだ?突然視力が戻ったのか?」
「いえ治療をして頂きましたわ」ニコ
「一体誰が姫様にそんなことを?」
「ユーリア誰なのだ 目を治療したのは?」
「それは、アスラ様と言うお方ですわ」ニコ
《《《なにぃー!》》》