思わぬ大発見!?
リンカから貴重な情報を得た私は至急エロイーナ様に報告に伺う事にしました。
コンコン!「エロイーナ様、大切なお話があります」
「クレアか?入って良いのじゃ」
「失礼します」
私は意を決してエロイーナ様の部屋へ入る事にしました。速く報告したいのは山々なのですが、エロイーナ様を慌てて驚かす事はしません。
「大切な話とは何なのじゃ?外がやけに騒がしい様じゃが調達隊が戻って来たのかぇ?」
「はい、先程無事に戻って参りました。しかも栄養価の高い魔獣を大猟にです」
「それは良い事じゃ。大切な話とはその事かぇ?」
「はい、その事も含めまして報告に上がりました。エロイーナ様、落ち着いて良くお聞き下さい。アスラ殿が近いうちに、お越しになられるかもしれません」
「なんじゃと!アノ者が来るのかぇ!?」
「はい。調達隊がアスラ殿の姿を目撃したのです―――」
私はリンカから受けたアスラ殿に関しての情報をそのままエロイーナ様に報告しました。エロイーナ様は嬉しさのあまり飛び跳ねそうな勢いでしたが何とか静止させました。
「して、アノ者は、いつ来るのじゃ?」
「それは分かりません。ですが覇竜様との用件が済み次第お越しになられると思われます」
「そうじゃったのぅ、覇竜様の元へ数ヶ月に一度向かうと言っておったのぅ」
「はい、ですので私達もアスラ殿がいつ来られても大丈夫な様に準備は、しておきましょう。アスラ殿のコト、私達の約束もきっと忘れず守って下さいます」
「そうじゃのぅアノ者は律儀な男だからのぅ……」
言葉を言い放った後に浮かない表情をする女帝エロイーナ。
「どうかされましたか?エロイーナ様」
先程までアスラ殿の話で大変喜ばれていたようですが、急に浮かぬ表情をされて?
「クレア。妾はアスラに逢いとう……じゃが逢えぬえ。妾のこの姿をアノ者に見られとぅない」
ポッコリ出た お腹を優しく摩るエロイーナ。
「まだ気にしておられたのですか?アスラ殿もエロイーナ様のお腹の子が自分の子だとは思いもしませんよ?」
そうです、あの日 アスラ殿がこの地を去り三ヶ月が過ぎた頃、エロイーナ様が慌てて私に "月のモノが来ぬのじゃ" と言い放ち、良く良く話を聞けばアノ夜 一夜の契りの夜、エロイーナ様が最中に "痛い" と呟いた一言にアスラ殿が反射的に、あの奇跡の様な癒しの魔法をお掛けに成ったと聞きました。
普通に考えれば女性の月のモノは病気ではないのですがアスラ殿の身体を癒す能力は健全な健康状態にまで癒してくれるのでしょう。
コレはもしやと思い、もうひと月様子を伺う事にしました。そしてエロイーナ様のお腹にアスラ殿の子が宿っている事を確信しました。
その事実が国中に広まるや大変な騒ぎと言いますか、歓喜に見舞われしたねー勿論私も大喜びしましたけど。
「アノ者に会い、この子をアスラの子では無いと否定するのはイヤじゃ!この子は紛れも無くアスラと妾の子じゃ。じゃがその事をアノ者に話せばアスラは責任を感じてしまう……そして妾に対して幻滅してしまうであろう……アスラに不安を与えたりするのも幻滅され嫌われるのも妾には耐えられないのじゃ」
「それは重々承知しております」
コレは困りましたねー……
「仮にアスラがこの国へ訪れた時には、妾は所用で出掛けておると伝えて欲しいのじゃ」
「……エロイーナ様の気持ちは分かりました。ではその様に対処致しまょう」
さて、どうしたものか……何とかエロイーナ様とアスラ殿をどうにか引き合わせたいものです。
今のエロイーナ様を見ていると愛おしくもあり不憫でなりません……ここは私が一肌脱ぎましょう。
リンカの話ではアスラ殿を見かけたのは4日前と聞きます。どれくらい覇竜様の元へ滞在されるのかは分かりませんが、いつ来られても大丈夫な様に準備だけはお拘らずしましょう。
◇ ◇ ◇
一方アスラの方はというと、3日ほどバハムートの話し相手をした後、下山しアマゾネスの国 アマゾーン国を目指していたのだが道中お約束どおり迷子となり、マナミの手を取り上空からアマゾーン国へ向かった。
本来であれば重い荷物を抱えた調達隊よりも1日速くアマゾーン国へ到着しているはずなのだが、マナミと一緒に "遊覧飛行〜" などと呑気に空を飛んでいた時に鳥獣の群れに遭遇し奮戦することに……
いつものアスラならば "面倒くせ〜" などとボヤきながら遣り過ごす筈だったのだが、襲って来た鳥獣がヴァルトリア支部冒険者ギルドの資料室で魔獣などの資料を閲覧していた時に観ていた鳥獣であった。
このデリカシーバード通称 《デリバ》は、食通の間では可なり珍味な味わいで有名だが市場には余り出回らないとか、そして肉だけではなくクチバシと羽根の部位が弓矢の矢尻と矢羽でも使われるほど貴重な鳥のようだ。
但し先程も述べたようにデリバの肉自体が市場に出回らないイコール、捕獲するのには難易度も高く至難の業らしい。
数百羽単位の群れで行動するデリバは移動スピードも速く攻撃に関しては文字通り自然弓矢の如くクチバシを突き出し体当たりをしてくるなど、可なり危険な鳥なのである。
そんな危険な鳥だと知りながらでも "ジュル" っとヨダレを拭き『焼き鳥食べたい』などとバカな事を言い出す始末。
序でという事でアマゾーン国へお土産として狩りを開始してしまったのだ。
単純に食いしん坊なだけであるが……
最初こそそのスピードと優れた機動力に翻弄されていたアスラであったがデリバの高速機動力よりもアスラの食欲の方が勝っているようだ。
相手の動きをジーっと観察し見切ったところで反撃開始!高速移動には高速移動で対抗しトンファー片手に突進してくるデリバにカウンター気味に一撃で仕留め次から次へとバックに放り込む。
大方一つの群れを制圧した辺りで、お腹のムシが"キュ〜"っと鳴ったようだ。
ここで一旦狩りは終了、昼を大幅に過ぎた頃で休憩がてらに昼食の準備をしようと、どこかモンスターに襲われ難い場所を上空から探すアスラ、先程倒したデリバを早速食べたいようだ。
安心して休憩出来る場所を飛行しながら探していると、フッと目に付いた場所を発見する。そうそこには岩に囲まれポツンと小さな泉がある。
取り敢えず、その場合へ降り立ったアスラは首をひねりながら変な場所だと思ったようだ。
「この場所だけ周りと何か違う……?」
アスラが感じたものは、獣の気配が一切しないこと、それでもいつものように「まぁイイか!」と、一人で納得したアスラはデリバを適当に数羽バックから取り出し解体を始めた。
解体した肉は木の枝を削った串に刺し焚き火で炙り焼き、クチバシと丁寧に処理をした羽根はバックの中へ、焚き火で炙った肉に塩をパラパラ掛け、焼き鳥の完成のようだ。
「コレは、匂いだけでも堪らねー!」
早速パクリ―――――――――――!!!
「うまぁ───────い!なんだコレ!?俺の簡単手料理でこれだけ美味いとか有り得ん!」
コレはアマゾーン国にお土産と思ったけど、俺の家族用とマスターへのお裾分け用にもっと捕獲しなければ!ルチハとマスターならもっと美味い料理に仕上げてくれるはず!ウンそうしよう。
「マナミも食べてみる?」
マナミがジーっと俺が食べているのを見ているので一応聞いてみた。
"フルフル" 「…要らない…」
やっぱり……
「そうなの?美味しいのに。お腹空いたらいつでも俺の魔力食べてイイからな」
"コクコク"
しかし美味い!パクパク!次は塩コショウをパラパラ、パクリ!うぉーマジ美味い!病み付きになりそう。
クソーこの世界に醤油が有ればイイのになぁ〜…どこか他所の国に無いかなぁ〜旅を開始して探そうかな?イヤ前にも思ったけど日の和ノ国へ行けば醤油も味噌もあるんじゃあないかな?
しばらくデリバの焼き鳥を堪能しながらブツブツ考え事をするアスラ。
「あー美味かった!ちょっと食べ過ぎたな〜ノドが渇いたよ」
ちょうど目の前には透き通るほどキレイな水が湧き出てる泉があるのでコーシーカップをバックから取り出し、何気なく水を掬い口に運んだ。ゴクリ…
ブフォーーッ!!!「ゲホッゲホッ!?」
「…マスタ…大丈夫?…」
「ゲホッ!あーゴメン!マナミ。大丈夫、大丈夫!ちょっとビックリしただけだよ」
マジビックリ!コレ水じゃねーし!少し口当たりも良くクセの無い水ならコーシーにどうかと思ったけど、コレはコレで大発見!この世界にもあるんだ。
落ち着いて、もう一度一口クチに含んで確認……間違いない。
「やっぱりコレ、炭酸水だ!」
うぉー!やったぜ。天然炭酸水の泉を発見したぜ!もしかして獣の気配が全くしないのは炭酸水が苦手だからなのか?まぁイイか!
せっかく見つけた炭酸水なので、空の水瓶にソ〜っと炭酸水を入れバックへ収納!そして次にバックからゲーハー国で頂いたカキ氷用の甘〜いシロップを取り出し、炭酸水にシロップを掛けて掻き混ぜ完成!ゴクリ
「美味ぁ―ーーい!」
コレ最高!異世界で炭酸飲料飲めるとか思ってなかったからメチャ興奮する!テンション上がるぜ!
あっ!そーだ!ソーダを飲もう。って親父ギャグは置いといて、ダハムートの元での特訓の成果を試して見たかったんだ。
「マナミ、コレ飲んでみる?」
飲みかけの炭酸飲料をマナミに勧めてみた。
"フルフル"「…要らない…」
俺の飲みかけだからイヤとかじゃあないよね?
「やっぱり飲めないか……」
首を横に振ってカワイイね。
やっぱ魔力以外は食べれないのか……そうと分かれば飲みかけの炭酸水を一気に飲み干し新たに炭酸水とシロップを割り炭酸飲料を作り直す。
そしてカップに入った炭酸飲料にダハムートのトコで鍛えた『魔力練り』高密度に練り上げた魔力を慌てず少しずつ少しずつカップに入った炭酸飲料へ流し込むようにイメージ……………良し!完成。
「マナミ!コレならどうかな?」
ジーっとカップを見つめていたマナミが……小さな手が俺の持っているカップに手が伸びた!そして恐る恐るカップに口を付け炭酸飲料を一口飲む!?
「…おい…しい…」
「そうかそうか美味しいか、良かった良かった!」
魔力しか食べれないなら食べ物とか飲み物に練り上げた魔力を注げばどうかと思ったけど見事に的中したねー!食べ物の方は分からないけど今度試してみようかな?取り敢えず飲み物の方は成功して良かったよ。
余程美味しかったんだね。だっていつも表情が乏しいマナミがニッコリ微笑みながら涙を流しているんだから……
其の身を投じて魔剣に成る事齢700年……自分のエネルギーとして取り込めるモノは魔素でしかなかったマナミ、アスラの温かく優しい魔力に更に味が加わり700年振りに味の有るモノを取り込めたマナミは自分すら気付かぬうちに微笑み涙を流していた……