瞑想時間
「本題に移ろうでは無いか巫女姫よ……今はマナミであったな」
「…?…」
「主はアスラを葬りに顕現したのであるまいな?」
「…!?…」
突然のバハムートの問い掛けに戸惑いを隠せないマナミ…
「…違う…」
「主はアスラの魔力に魅かれて顕現したのであろう?」
「………」
「だがなコヤツの魔力は我らが知らぬ異質な魔力ではあるが魔王の様に邪なモノでは無いぞ?それとも勇者と闘うコヤツを見て魔王と判断したのであるか?」
「…マスター…違う…」
「では何故今更顕現したのだ?終わった事を蒸し返すつもりはないが……500年前にもカツヤが主を手にした時に顕現する機会は、いくらでも有っていたであろう?主がカツヤと契約し奴に力を与えれば、あの戦いも もっと楽であった筈……本来聖剣である主が何の反応も示さないまま最終的に使われる事が無く魔王との決戦に挑んだ。邪気を含んだ魔力を浄化する聖剣も、ただの魔力を喰らう魔剣『魔力喰い』などと呼ばれるまでに堕ちる事も無かったであろうに。それを何故今更契約し顕現したのだ?嘗ての友カツヤの実力では主を扱いきれぬと申すのか?」
"コクコク"
「主と契約出来るには魔に対する強い想いだけではダメだと言う事か?」
"コクコク"
「では何が条件なのだ?」
「…魔力…わた…マナミの…力を引き出すには…魔力が…足らなすぎる…」
「ヌゥ……」
カツヤほどの膨大な魔力量でも足らないとは……コヤツの力が強大故の弊害と言う事か……
「…マスターの…魔力は…無尽蔵…マスターの…魔力…とても温かく…優しい…」
「フハハハ!そうであろう!アスラの魔力量は底なしであるからな。先程主が吸い上げた魔力が既に回復しておるからな。なるほど!そうであるか疑って済まぬ事をしたマナミ」
「…でも…マスターは…気づいていない…」
「ンン?どういう事だ、気づいていないとは?」
「…自分には…魔力が…無いと思って…いる…」
「なんと!?我の魔力を遥かに凌駕する程の魔力量を宿しているにも関わらず、自分の魔力に気づいていないとは!?」
"コクコク"
「では、どのように勇者と闘ったのだ?よもや自らの能力のみで闘ったと申すのか?」
"コクコク"
「…マナミは…少し…助力しただけ…」
「ウ〜ム……」
……まさかとは思うたがケンジと同じ壁に当たるとは……エスパーという特殊な生きモノは厄介よのう……
◇ ◇ ◇
翌日
「ふぁ〜良く寝たぁー!」
昨日はバタバタしてて疲れたのか夜中に起きるコト無くグッスリ眠れたよ。ん〜快調快調!
「アスラよ、目覚めたか」
「あーバハムート、おはよう!」
目覚めればダハムートが仙人モードのまま、仁王立ちしてる。まさか朝から物語を聞かせろと待ち構えてるんじゃあないだろうな?今日は何を話そうか、まだ考えてないんだけど……マナミは俺の横でスヤスヤお休み中のまま。
「アスラよ、主に少し話がある」
「えっ?話?」
一体なんだろ?急に話があるとか?しかもスゲー真剣な顔だし……とりあえず話を聞く前にコーシータイム。
「うむ、このコーシーという飲み物は美味い」
「で、俺に話って何?」
「アスラに一つ確認しておきたい事がある――」
ダハムートの話を聞けば、俺の魔力についての話だった……今まで俺には魔力自体が無いものと思って居たんだけど、ダハムートの話では相当量の魔力が俺のカラダの中には存在しているとか?しかもダハムート以上に魔力を持ってるって!?ダハムートもこれだけの魔力を持った者は嘗て見た事が無いって?ホントか〜?
但し俺の魔力は、この世界とは異なる……なんか異質な魔力だと言う。だから魔力に長けた者が見ても俺には魔力が無いように伺えるとか!?
だけどダハムート曰く魔力は魔力、見る者が見れば一目瞭然らしい。話には続きがあって、あの伝説の賢者と呼ばれたケンジが宿していた魔力に非常によく似ているって!?なんだそれ?
話にはまだまだ続きがあって恐らくケンジや俺の持っているスキル(超能力)が原因じゃあないかと言っていた。
ケンジも俺ほどではないが、人並み以上の魔力を宿していたらしいけど魔法が一切使えない時期があり、しょっちゅうボヤいていたとか……そして魔法が使えるように試行錯誤し漸く魔法が使えるようになった時には大魔導師的な魔法使いになり、伝説の賢者なんて呼ばれるようになったって。
「ほ〜なるほどね〜凄いな」
「そうであろう。ヤツは努力家なのだ!自分のスキルには限界があると言い、魔法を使えるよう日々努力していたのだ!」
「で、どうやって魔法を会得したんだ?」
スキルに限界があるだと?アイツって、あまり超能力に長けてなかったのか?
「我にも分からぬ」
「なんじゃそれー!意味ねーじゃん!」
しっかり見とくか聞〜とけよ!
「だから主もケンジのように努力し魔法を使えるよう励むのだワッハッハ!」
「え〜っ!面倒だって!別に魔法を使えなくても全然不便はしてないし……」
今更魔法が使えるから使おうとか思わないって!正直ホント不便はしてないからなぁ〜少しは使ってみたい気もするけど努力してまで会得しようとは……しかしダハムートの言う事がホントだとしたら俺のステータスで見た魔力の部分で『計測不能』って表記は魔力量が多すぎて、そんな表記なんだろうか?
「アスラよ、急に静かになって何を考えておる?ケンジのように試行錯誤しておるのか?」
「いや、俺の魔力が有る事がどっから情報かなぁって思っていたんだよ。バハムートは俺に魔力が有る事を出会った頃から知っていたのか?」
「うむ、最初に主に出会ーた時から知っておった。が、主が己の魔力に全く気づいて居ない事は、マナミの口から昨夜聞いたのだ」
「えっ!?マナミが……」
「うむ、そうである。マナミと契約し元ある姿に顕現さすには相当量の魔力を持つ者でなければならぬ、そのマナミが言っておったのだ 。アスラ自身 魔力が有る事に気づいて居ないとな」
「へ〜そうなんだ」
マナミって人見するタイプの子と思っていたけど、俺が寝た後にダハムートと話してたんだ……でも、今ダハムートが言ってたよな?マナミを顕現さすには相当量の魔力が必要だって……って事は、マナミは低燃費じゃ無くスゲー燃費が悪いんじゃあないのか!!
アノ身を削られる様な感覚ってゴッソリ魔力を吸われていたんだ。
って、まぁイイか!俺の魔力はタダだし。
魔法を会得するって事は、呪文とか色々覚えないといけないし、はっきり言って頭で覚える鍛錬は面倒だ!超能力の様に念じるだけで発動する方が簡単なんだけどなぁ〜。
ダハムートが煩く魔法を会得しろって言うから、じゃあ魔力を練る練習からなってコトで目を閉じ瞑想を…少しやる気を見せた途端 気を良くしたのか仙人モードのままウンウン頷いている。
これって傍から見たら仙人に修行をつけられてる弟子って構図だよね?
ダハムートには悪いけど瞑想するフリをして今日の物語を何にしようか考えよう。
取り敢えず2、3日の滞在なってコトで話もまとまり、昼は魔力の訓練、夜は物語の話……結局魔力を練るナンチャッテ瞑想も体内の魔力が全く変化してない事に気づかれて本当に練習する羽目になるし……魔力を練る練習で少しだけ良いことも。
地竜のお姉さんに貰った竜眼の瞳の色を変化出来る事に成功!オッドアイはカッコイイけど会う人会う人に説明するのも面倒だし結果オーライかな。
ダハムートに何故にそこまで俺に魔法を覚えさすか聞いたところ『主は異界より来りし魔を打ち倒す為にこの世界へ来たのだろう』って言われたよ。
ハァ〜ため息しかでないよ。そんな任務を背負って来てないっつーの!説明するのも面倒だから適当にあしらって下山しようかな、アマゾーン国とランバー国にも行きたいしな。あまり長居し過ぎたら一か月超えちゃうし、ルチハとシャルに怒られるよ。
物語といえば、アレからエラく異世界モノの物語が気に入ったらしく、話をせがまれてるんですが?しかも定番の勇者が魔王を倒すとかじゃなく、魔王が主人公だったりドラゴンが主人公だったりとか、注文が多いって!それと物語に感化されたのか何を思って言っているのか分からないけど『差し詰め主は、魔王ではなく魔力の王!魔力王だなワッハッハ!』って、言ってるし。それにしても魔力王って何だよ!もっとイケてるネーミングないのかよ。ったく
まぁ満足して帰らしてくれるんならイイけどさ。
「じゃあ俺は行くな!また暇な時は遊びに来るからさ」
「うむ、いつでも待っておる。アスラよ、日々の努力を怠るでないぞ」
「あー!じゃあな。マナミ行こうか」
"コクコク"
偉そ〜に言ってら、まぁ実際に竜の世界じゃ偉いんだろうけど。長年生きて色々物知りだしな、今度から この世界で分からない事が有ったら真っ先にダハムートに聞くのがイイかもね。
さぁー次はアマゾーン国だ。皆んな元気かな〜?
「…マスター…帰るの?…」
「イヤまだ帰らないよ。マナミはアマゾーン国って知ってるか?」
"フルフル"
「そうか知らないのか。今から行くトコは女性しか居ない国なんだ」
アタマをフルフル振ってる、かわいいね。マナミの人として生きた時代には、まだアマゾーン国は存在してなかったのかな?それとも樹海の中だから見つからなかったのかな?まぁ〜どっちでもイイや。
しばらくモンスターを蹴散らしながら進んで行き、思いだした事が有る!ダハムートに精霊について聞くの忘れちゃったよ。まぁ今度来た時に忘れてなきゃ聞くかな。
さぁー迷子になる前に先を急ごう!