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契約

 あ……おれ死んだわ……


 ヤベー!みんなに最後の別れを告げる前に死んじゃうとかシャレにならねー!

 ああ〜今思い起こせば俺の人生って短かったなぁ……



 …力が欲しいか……



 ん?なんだ?今の声は?声と言うか頭に直接響いて来たぞ?



 …力を欲するか……



 まただ……これはテレパシーか?イヤなんか違うような気もするけど……?俺って、もしかして死んでないのか?あの時、一瞬気が遠くなって……そして目の前が真っ暗になったから死んだと思ったんだけど?


 自分が死んだのか死んでないのか思考を巡らすアスラ。先程まで千里眼を発動していた筈なのだが辺りが見えず、身体そのものもない、意識だけの状態と気づく。アストラル・コントロールのように幽体離脱をし、魂だけの状態でもなさそうだと判断したようだ。


 死んだらアストラル・コントロールのように魂だけの存在だと思ったんだけど違うようだね。それにしても、これって誰かの意識の中なのか?でも誰の?



 …を……解放……



 まだ言ってる……"力が欲しいか"とか"解放"とか言ってるし……一体なんなの?てか、俺ってやっぱり死んでなさそうだね。しかし一体誰だ?俺に話しかけてるのは?神様でもなさそうだし?

 まぁイイか!力をくれるんなら貰っておこう。イヤイヤ!解放とかも言ってるし、なんかヤバイ奴とか出てくるんじゃないだろうな?それとも力の解放と言う意味なのか?


「ええっと、どうしよう……何の力か分からないけど……くれるんなら貰います…けど!ヤバい力じゃないよね?それと、あなたは誰?」


 …と……契約を望むか……


「エッ!?」

 契約?契約って、なんだよ?ヤバイ契約じゃないよな?魂を差し出せとかじゃないよね?……って、どのみち俺って後3日しか生きられないからイイか。


「契約は詳しい話を聞いてから。納得できる話なら契約します。説明よろしく!」

 まぁ力を貰って隕石破壊できるんならラッキーだし、ヤバそうな契約なら破棄したらイイしね。


 …契約は……成立した……では……頂く……


「エッ!?」

 頂くって、何を!?ちょ!ちゃんと説明してよ!やっぱ魂を頂くとかじゃないのか!?


「ィ″!!!?」ドクン

 いっ、今のは?いま確かに……意識しか無い状態なのに……体から何かをゴッソリ削られて持って行かれたような感じがした……




 …では……参る……





 " ピシッ "

「エッ!?」

 今のは!?夢?って、マナイーター!ヒビ入ってるしっ!!!


 夢か現実か区別がつかないアスラであったがヒビ入った辺りからドス黒い靄のようなモノが剣を纏い出す。

 理解が追いつかないアスラであったが既に渾身の一振りを放った直後、ブレーキも掛けられずマナイーターを振り切る!


 "ピシイィィィッ"


 振り切った直後、剣は折れず隕石に亀裂が走る。それを見た直後、迷う事なくマナイーターを振るい捲る。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 マナイーターッ!頼むから破壊できるまで折れないでくれよおお!


 全神経を振るう魔剣マナイーターに注ぎ凡ゆる角度から斬りまくる!そして――


「トドメだッ!吹き飛べ───────ッ!」


 最後の一撃を加えた瞬間、ドオォゴオッと、轟音と共に隕石に亀裂が走り中心部から爆裂し砕け散る。隕石を破壊する事に成功するアスラだが、直後爆風で逆に吹き飛ばされてしまう。


 そして地上でも、爆裂の衝撃が襲い掛かっていた。衝撃波と共に爆風が吹き荒れ瓦礫の山と化した闘技場へ竜巻を起こす勢いで襲って来たのだ。地竜の下で避難している者は吹き飛ばされぬよう必死に堪えていたが、外の様子が気になったオウガの仲間、クッチョロとワイズが気を許した瞬間、暴風に攫われてしまった!


「グヌゥ!賢者殿が命を犠牲に護りぬいた命ヲ!」

 爆風吹き荒れる外へ救出に出向く勇気ある者は居ない。いや居たとしても自殺行為なのだ。殆どの者が傷つき体力も限界に近い状態、一歩外へ出れば死者の数を増やすだけなのである。


「オレが行く。アシュラが繋ぎ止めた命、こんなコトで絶ヤサンッ!」

「オウガ!ダメだ!負傷している君が行けば命が無いぞ!」

「このまま我が身可愛さでジッとしているコトなどオレにはガマンできん!それにヤツらはオレの仲間ダ!オレが行かずダレが行く」


 今すぐにでも飛びつきオウガを止めたいリオンヌであったが彼の真剣な眼差しを見た瞬間、躊躇い無事を祈る事しか出来ない。


「決して死にに行くのでは無いのジャな?」

「アア!アシュラと同じダ。自分を犠牲にしてまで死にに行く勇気は無い!」

「ウム分かった……生きて帰って来るのジャ!決して死ぬコトは許さん」

「父上!」

「レオ兄、心配するな。必ず生きて帰って来る」


 爆風吹き乱れる中、オウガは決意を秘める。そしてアスラの言葉を思い出す。


 "己れの限界を超えろ"


「今超えずにイツ超える!」

 傷つき残り僅かな体力の中、オウガは駆け出す。

「ウオオオオオッ!」

 片足が無いハンデを獣化で補い爆風に攫われた仲間を救うべく。そしていつしか自分でも気づかぬウチに覚醒していた。


「フッ、皮肉なもんだな。己れの戦いの為ではなく誰かを護る為に覚醒するとはな」


 覚醒を果たしたオウガは吹き荒れる瓦礫を粉砕しながら仲間を助けるべく進み出す。

 オウガが仲間の救出に向かい程なくして漸く吹き荒れていた爆風も治り出し静まり返った闘技場であるがアスラも仲間の救出に向かったオウガも未だ帰って来ない。


 業を煮やした獣王は捜索の手を差し伸べる、マリーとポアンはアスラの安否を心配しアスラ捜索へ、残った者は二手に別れアスラとオウガの捜索へ各々動き出し程なくしてオウガと爆風に巻き込まれた者は見つかったが……


 爆風に巻き込まれた仲間を傷つきながらも覆いかぶさるように庇うオウガ。幸いオウガに護られていたクッチョロとワイズは気を失っているものの軽傷の様だが2人を庇っていたオウガは予断を許さないほど瀕死状態である。


 それを見たリオンヌは周りの目など気にする事なくオウガの元へ駆け寄る。


「オウガ!オウガ!死なないで!」

 薄っすら目を開けリオンヌに語り出すオウガ。

「リオ…すまない。数年ぶりの会話が……別れの…挨拶に…なりそうダ……」

「イヤァッ!オウガッ死んじゃイヤッ!」


 泣き崩れながらオウガにすがりつくリオンヌ。獣王とレオンは回復魔法を使える者を探すが、今ここへ居る回復魔法を使える者は重傷者を回復できるほどの魔力が残っていない。回復薬なども隕石騒動で全て吹き飛び、所持していた者も全て使い果たしている状況なのだ。


 オウガの仲間たちは"大将!大将!"と泣き叫び出す者もいる。それを見ている周りの者は涙を浮かべながらソッと見守る事しか出来ない。


「最後に…リオに…伝えたいコトが…ある…」

「イヤ!そんなコト言わないでオウガ!もう喋らないで!」

 スーッと目を閉じ

「リオ…愛して「な〜に勝手に死のうとしてるんだオウガ」!?」


 最後に別れの挨拶(愛の告白)をしようとしたオウガの元へ空からアスラが舞い降りて来た。ここに居る全ての者は騒然とするがアスラは全く気づいてないようだ……色々な意味で。


「アッ、アシュラ!」

「アスラ先生!オウガが、オウガが!!!」

「姫様、もう大丈夫だぜ。俺が居るから誰も死なせやしないって」

 そうアスラがリオンヌを励ました途端、オウガが見る見るうちに回復して行く。傷が治るのも勿論のこと、失った片足まで再生して行く。

 それを目の当たりにした全ての者は目の前で起きている奇跡に只々、絶句するのみ。

 それもそのはず、その奇跡はオウガだけに留まらず、ここに居る傷付いた者全員を癒してくれているのだから。


「な!もう大丈夫だぜ。治療終了!」

「あ、あぁオウガ!」

「リオ…」

 見つめ合い抱き合うオウガとリオンヌ、2人の世界へ入ったオウガとリオンヌにアスラは、もう好きにしてくれと言う感じだ。そこへ獣王とレオン、そして空から舞い降りて来る姿を目撃していたマリーとポアンがアスラの元へ駆け寄る。


「アスラ君〜無事だったのね〜」エッ!?

「賢者殿!」ムムッ!?

「アスラ君だね私の足を元どおりに治してくれたのは?」おや?

「アスラ!生きてたか!」……

「ああ、なんとか無事にな…」

 …アレ?みんなの視線がおかしいぞ?


「みんな、どうかしたか?」

「アスラ!スッポンポン」

「エッ?」

 わー!隕石とバトル中に服が燃え尽きちゃったんだ!みなさんに全裸見られちゃったよ!やけにスースーすると思ったんだよな…人間集中すると周りが見えなくなるって言うのは本当の事だったんだね。


「ポアン〜ッ!()()じゃないでしょ〜!」


 気がきくレオンから戦闘でボロボロになってるけど、羽織っているマントを頂き、取り敢えず隠す!ん?()()じゃない?


「賢者殿、その手に握っているモノは……?」

「ん?」

 手に握っているモノ?手に握って物は魔剣マナイーターだけど……魔剣マナイーターに目をやれば……!!!


「エエエッ!?どう言う事!?」

 魔剣マナイーターを握っているつもりが見知らぬ幼女の手を握っている!?しかも俺と同じようにスッポンポン。なんで?


「賢者殿、その子供は……どこから連れて来たのジャ?」

「そ〜よ〜アスラ君、一体どこから連れて来たの〜?」

「イヤイヤ俺も分からん!」

「アスラ、人攫い!」

「イヤイヤ誘拐なんかしてないし!ちょ、誰か説明してー!」


 ワーワー騒いでいるアスラ達の元へ1人の女性がやって来た。


〔アスラよ、何を騒いでおるのだ!〕

 そう先程まで死力を尽くし皆を護ってくれた地竜が再び人の姿に変化しアスラの元へ。

「あ!地竜のお姉さん。無事……ではないな。今すぐ治療をする」

〔このようなモノ、ケガのウチに入らぬ!〕

「イヤイヤ普通に大ケガだって(ヒール)」

 背中から血が滲んでボロボロじゃないの!普通の人間なら立ってられないって!みんなを護ってくれたお礼にケガの治療をしてあげる。


 治療の経過を見ていると俺と地竜のお姉さんの目の前で獣王様が行き成り跪く。エッ?っと思っていたら次にレオン王子も跪き、順を追って次々に俺と地竜のお姉さんの前にココに居る全員跪いた!?勿論自分達の世界に入っていたアノ2人も。


「賢者アスラ殿、地竜殿!国の代表として言わせてほしい!我が国、ベスティア獣国を救ってくれて誠に感謝致ス!」


 国の王自ら頭を下げた途端全員が一斉に頭を下げ俺と地竜のお姉さんに感謝の言葉を言っている。毎度の事なんだけど感謝されたくてやっているんじゃないんだけどね。

 ただトラブルに巻き込まれただけなんです。そんな事を思い地竜のお姉さんをチラ見したら。


〔我は感謝されるような事は一切何もしておらぬ。何やら邪悪な気配を感じた故に、様子を見に来ただけじゃ……主らを護ったのもアスラとの約束故にやったまでの事〕

「そう言う事らしいぜ。まぁ俺も感謝されたくてやってるじゃないから気にする必要ないさ」

「イヤそれではワシ達の気が治らぬ!」

 其の方は我らを護る為、寿命まで削っている……


〔その様な事よりも、アスラよ。お主の手を握っておる小童はなんじゃ?〕

「なんじゃと言われても何だろ?俺も分からん」

 あー今シレッと、獣王様を無視してコッチに話振りましたよ!このお姉さん!しかも無視された獣王様も俺の横に居る幼女が気になる様子だし。イヤ獣王様だけじゃなく皆さんも気になってる。


「え〜と、どう説明したらイイのかな?最後の隕石を破壊して戻って来たら何故かこの子が居たという事かな?」

 なんか凄く疑わしい眼差しがアチコチから……ホントの事だって!


「ところで君のお名前は?」

「…………」

「どこから来たのかな?」

「…………」

 ん〜会話になりません。


「アスラ君〜やっぱり攫って来たの〜?」

「攫ってません!」

「しかし、今日は一般客は入れない筈……ましてこの様な子供が……アスラ君の知り合いでもなさそうだし……」

「アスラ人攫い!」

「ポアンさん!やめてーシャレにならないから!」


 1人黙って幼女をジーッと見つめいた地竜が口を開く。

〔アスラよ。このモノ、人では無いぞ……〕

「エッ!人じゃ無い?」

 はぁ?どーゆーコトですかー?人じゃ無いって?地竜のお姉さんが意味不明な事を呟くから頭が混乱してくるし、周りもザワザワしてくるし、なんなの一体?仕方ない、この子の思考を読んでみるかな。


 んー、読めません!なんで?能力が使えなくなったのか?試しにアノ2人の思考を……ウン頭の中お互いの事でイッパイだね。能力は使えると……じゃあなんで、この子の思考は読めないの?


〔我の言い方が悪かったな、このモノ、生き物では無い。アスラよ、このモノに接する前に何ぞ変わった事は起こらなんだか?〕

「変わった事ね……?」

 生き物じゃないって何よ?色々あり過ぎて、変わった事と言えば…確か隕石を破壊中に一瞬意識が遠のいて…力…解放…契約…!!!そうだ、何かと契約したんだ!しかも説明無しで!


〔その顔だと何ぞ思い当たる節が有るようじゃな?〕

「それが……現実かどうか分からないけど……最後の隕石を破壊している時に急に意識が飛んで……夢なのかどうか分からないトコで何かと契約したような気がするんだ……」

〔フム、契約とな?〕

「それで意識が戻って隕石破壊して戻って来たら魔剣を握っている筈だったんだけど何故か、この子の手を握っていたんだ。信じてくれるかな?」

〔フム、恐らくそのモノは、お主が所持していた魔剣がお主との契約により顕現したのじゃ〕

「はぁ?じゃあこの子は魔剣なのか?」

契約したら顕現するとかって……まぁ確かに昔読んだ漫画で魔剣が人の姿になってる物語を読んだ事があるけど……


 ザワ ザワ


 地竜の一言で一斉に騒めく。魔剣が顕現した話など誰も聞いた事がないようだ。


「父上、一体どう言う事なのでしょう?」

「分からぬ。ワシも魔剣が顕現する話など聞いた事も無い。まして魔剣との契約など……」


〔元々魔剣などと言う代物は生あるモノの魂や思いが武器に宿り魔剣などに成ると聞く。古き時代の魔剣使いどもは魔剣と契約を結び強大な力を手にしてたものよ〕

 今話した話は、ほんの一部……嘗て強大な力を所有していた者を無理矢理武器などに封印した事は話さぬ方が良さそうじゃな。


 ザワ ザワ


 へ〜この世界の魔剣って、そーゆーモノなんだね、地竜のお姉さん勉強になります。流石長年生きて居る竜だね、あとで色々聞いて見ようかな。


「え〜っと君は魔剣なのかな?」

 "コクコク"

 んー頷いてる魔剣なんだ。

「んー俺と契約したのは君かな?」

 "コクコク"

「君のお名前は?」

「…………」

 名前はないのかな?さて…どうしよう

「契約したから君は人の姿に顕現したのかな?」

「??」

 どうして顕現したのかは分からない見たい……


「契約したという事は君の所持者は俺でイイのかな?それと言葉は話せる?」

 "コクコク"「…マスター…」

 なんと!可愛らしい声!アニメキャラみたいな声だ。って、そこじゃない!今マスターって呼んだよね。ヤッパリこの子の契約者は俺なんだ。でも頭の中に響いてきた声と雰囲気違うような……


「アスラ君〜どうするの〜この子〜?」

「どうすると言われてもどうしよう?取り敢えず名前を付けようか…」

「そうね〜名前ナシじゃあ可哀想よね〜」

「アスラ!マナイーター」

「イヤイヤそれは流石にストレート過ぎて可哀想だし!」

 名前ね〜?俺って、ネーミングセンス無いからなぁ〜さて、どんな名前がイイかな?まぁ何でもイイか考えるのも面倒だし。


「じゃあ君の名前は今から《マナミ》でイイかな?」

 "コクコク"

「アスラく〜ん、適当に付けてない〜?」

「アスラ適当!」

「そんな事は無いです!マナミも名前気に入ったよな?」

 "コクコク"

「ほらね」


「本当に適当なんだから〜。それでアスラ君、今からどうするの〜?」

「今から?そうだなぁ…取り敢えず、マナミの服を買いに行くかな」

「そうじゃないでしょ〜」

「アスラ、バカ!」

「エッ?」



 全く呑気なアスラである。自分に残された時間が後3日しか無いと言うのに、すっかり忘れているのか、死に対しての自覚が無いのか……


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