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当たって砕けろ!

「フッ、最後の悪足掻き見せてやろうじゃないの!」


 そう呟くや否や魔剣マナイーターを握り締め、サイコキネシス(念動)で停止させた隕石目掛け斬り込んで行く。隕石といっても小さいモノで直径5m、大きいモノで10〜15mのモノだ。しかし隕石には違いない、物量が物量だけに完全な停止までは行かない様だが、完全に落下する前に粉砕出来るよう隕石に切り目を入れまくる。



 高速で飛行し次から次へと隕石に切り目を入れ後の処理は地上で待機している者達に任せる。

 しかし豪雨の如く降り注ぐ隕石に対し幾ら全方位に千里眼を発動しているとはいえ落下する全ての隕石を100%サイコキネシスで動きを封じる事は不可能といえる。

 留め損ない落下する隕石に対し瞬間移動などを駆使して破壊して行く。


 誰の目から見てもその光景は尋常ではない。そう通常の人の動きではないのだ。そしていつしか装着していたバンダナも眼帯も外れ自らが傷つき負傷しながらも懸命にココ闘技場に居る全ての命を護るべくその勇姿。


 それでも被害が全くゼロという訳では無い。未だ死者は出していないものの傷つき動けない者が続出しているのだ。瞬時に察知したアスラは傷つき動けない者達の元へ行き動ける程度ヒールを掛け徐々に場外へと避難させて行く。


 人々の目に映ったその姿は神に等しく希望そのものなのだ。


 希望に満ち溢れる彼の姿に触発されたのか、獣王自らも獣化(三段階)し巨大な(隕石)を粉砕して行く。そして触発されたのは獣王だけでは無い。片足を無くした2人の漢たちもだ!三段階目の獣化は、まるで片足が無い動きとは思えない程、素早く力強い動きであった。そしてココにも――


「む!あたいも負けてられない!」

 体力温存の為一段階目の獣化に留めていたポアンも負けていられないとばかりに――

「ポアンの獣化三段階目って〜久々に見るわ〜無茶だけはしないでね〜」


 そして全ての隕石を破壊する事に成功したかに思えた。辺りを見渡せば戦場と言うより瓦礫の山、ココ闘技場に残された全ての者は満身創痍ボロボロになりながらも誰1人とて挫ける者を出す事なく成し遂げたのだ。

 ヒラリと地上に降り立ったアスラの元へ死力を尽くした者達が集まり――


「賢者殿!」

「アシュラ!」

「アスラ君〜やったわね〜」

「イヤ、まだだ!」

「「「エッ!?」」」

 ザワ ザワ ザワ ザワ

 アスラの一言でどよめく人々。


 空を見上げ苦虫を噛むアスラの表情が伺えた。そして未だ遥か上空に目を向けるアスラ、千里眼を通し彼の目に映る巨大な影、先程の豪雨の様に降り注ぐ隕石とは比べ物にならない巨大な一粒の影が映ったからだ。

 アスラが見上げた方向へといつしか全員目を向け視力に長けた者達がソレを見た瞬間"ギョッ!"っとする。


〔我にも見えるぞ。アレは今までにも増して厄介な大きさじゃの〕

「あーそうだな」

「賢者殿!これ以上は危険ジャ!」

「アスラ君!今の自分の状態を見るんだ。無理し過ぎだ!」

「そうよ〜これ以上は無茶よ〜」

「無理でも無茶でも何もせず死を迎えるのを指を咥えて眺めるなんてできないさ。獣王様だってそうだろ?いつでも避難できるのにココへ残って皆んなを逃す事を優先してるじゃん。他の皆んなもそうだろ?ここで諦めるのなんか俺はイヤだぜ。それに……遅かれ早かれ俺には残された時間が無いからな」


「ムゥ……敢えて死にに行くのでは無かろうな?」

「まっさか〜。敢えて死にに行くほど勇気は無いよ」

〔アスラ、やれそうか?〕

「今更退けないだろ?当たって砕けろだぜ!」

〔後の事は我に任せよ〕

「あー頼む、任せたぜ!」


「アシュラ!コレ以上やれば魔力も枯渇するゾ!」

「アスラ君、オウガの言う通りだ!今まででも相当な魔力を消費してる筈だ、これ以上は君の身がもたない!」

「問題無い!元々魔力なんか無いから」

「エッ!?」

「じゃあ行くな」


 再度空へ舞い上がるアスラ。


「マリー殿!どういう事なんだ?魔力が無いって!?」

「ん〜ちょっと説明しにくいけど〜……」

〔……もう良いか?悠長に構える時間など無いぞ。皆の者!今すぐ我の元へ集まるのじゃ!〕

 謎の女性の呼びかけに何事かと集まり出す残された者達。



 空へ舞い上がり先程レオンが言った言葉で自分のカラダを改めて見るアスラ。


「うは!」

 集中し過ぎて気づかなかったけど、俺って全身ボロボロじゃん!そこらじゅう怪我しまくり!そりゃ心配されるよな。まぁ治療は後でもイイか!今はアノ最後のデカイ奴に集中しなくちゃだし。


 深呼吸し最後の隕石に集中するアスラ。そして地上では――


〔ここへ集まった者が全員か?〕

「そうよ〜」

 アスラとココへ残った者の奮戦の甲斐もあり徐々にではあったが全体の8割を闘技場から逃す事に成功している。そして残りの2割の者が地竜の元へ集う。


「リオンヌ!何故其方まで居るのジャ?」

「皆を置いて我先に逃げる事など……そんな恥ずべき事など出来ません!」

 申し訳なさそうに頭を下げるリオンヌの親衛隊達……

「イヤしかし……」

(父上)よ説教は後で!」

「ウム」

 困惑しているのは獣王だけでは無くオウガもである。既に安全な場所へ避難していると思っていた様だ。

〔もう良いか?〕ギロ

「アハ〜もう良いわよ〜話を続けて〜」

 人間の姿とは言え〜竜のひと睨みは怖いわ〜


〔アノ者、アスラが巨岩を対処仕切れるまで、我が貴様らを護る!我の膝下へ隠れておるが良い〕

 目の前の謎の女性が話す言葉に何を言っているのか理解が追いつかない面々……そして次に起きる異変に驚愕する。

 謎の女性の姿が見る見る内に巨大な竜へ変わっていくからである。そう5年前に対峙した地竜の姿に。ある者は腰を抜かし、ある者は口を開けたまま目が点になり、そして武器を構える多数の者!!!


「みんな〜落ち着いて〜今はこの方を信じて〜」

 必死に説得し(なだ)めるマリー。

〔アスラとの約束。我を信じられぬ者は好きにするが良い!〕

「私は信じます!アスラ先生も、そして貴女も!」

 リオンヌの必死な叫びにハッとなり我にかえる面々、終始戸惑うが5年前に遭遇した地竜に似ているがオウガの父、クウガが与えた傷が無い事に気づく。


〔どうするのだオマエ達?もう時間が無いぞ〕

 先程までアスラ同様自分達を護り必死に助けてくれた地竜の言う事を信じ始め出す。

 そしてビクビクしながらも地竜の足元へ入ると、そこには先程まで無かったクレーターの様な窪み、広い空間があるではないか。

 そう地中から傍観していたノーム達、そこに姿こそ現せないが1人でも多く受け入れるようノーム達の粋な計らいであるようだ。



 上空では隕石を睨みながら高速で思考を巡らすアスラ、どう対処するのか決まったようだ。


「何も思い浮かばない!やっぱ当たって砕けろだね」

 そう呟き隕石目掛け突っ込んで行く。半ばヤケクソ気味に、これも異世界ファンタジーならではのイベントと頭を切り替える。そして隕石に接近し自分の使える(あら)ゆる能力を全て解放し挑む!


 地上からはアスラの無事を祈る者達が窪みの隙間から空を見上げた直後、閃光が(ほとばし)り次の瞬間衝撃波と共にゴオォと爆風と轟音が響き渡る!!!

 ()()は闘技場を中心に襲い掛かって来た!地竜は既に防御態勢に入っている、土系の魔法操作を行い瓦礫などをカラダに纏い即席の防具にしたようだ。そうアスラが初めて地竜に遭遇した時、土と岩を纏っていた時のように。一方隕石に《当たって砕けろと》激突したアスラは!?



「ぐああああああああああッ!」

 コッ、コレで何回目の再生だあああああ!?


 幾らアスラがチート紛いな超能力者とはいえ、先程のモノより巨大な隕石を相手にするには可なりの無茶があるようだ、全身焼けただれ、切り傷、四股の欠損などをヒーリング全開で何度も何度も繰り返し、それでもマナイーターは手放さず斬り込んで行く。間近でソレを見ようものなら完全に人の領域を超えている姿であった。


 クッ、クソッ!ダメだ!もっとダッ!もっと速く!もっと強く!剣を振るうんだッ!

 もっと力を!俺ならできるッ!

「ぐぉおおおおおおおおおお斬れろおおおおッ!」


 自分を鼓舞するかの様に魔剣マナイーターを渾身の力を振るい斬りつけた瞬間!

 " ピシッ "

「エッ!?」

 有ろう事か魔剣マナイーターにヒビが入ってしまった!?


 直後、意識は遠のき目の前が真っ暗になり……



 あ……おれ死んだわ……

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