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腐っても勇者

 アスラが精霊ノームの案内の元、地竜と出会い何事も無く無事に卵を返し終わり話を進めていた頃、戦場と化した闘技場では勇者討伐の為 獣人連合が死闘を繰り広げていた。


「なんやぁ?コイツら倒しても倒しても全然死なへんやんかっ!?」

「タカシっさん!後続に控えてる回復部隊っす!」

「あれ厄介やな」

「潰そうにも あっこまで手が届けへん!」


 伊達に((獣王))勇者では無いな、コレが勇者の力なのか……何たる強さジャ!!!だがしかしっ!ワシとて甘く見ておらん対策は出来ている。

 闘技場が広いとはいえ戦場にするには狭すぎる!ましてこの人数、一斉に掛かれば混戦に成る、混戦に成ればなるほど奴らに此方の隙を与えてしまう、そして被害の進行も速まるだろう。

 そうならない為にも数パーティーに分け勇者達を分散させ攻撃!負傷者が出るパーティーは即座に次のパーティーへ交代させ後続の回復部隊で回復さす。決して誰一人死なせはしない!


 如何に勇者とはいえ疲労までは拭えまい、その時が勝負どころか……


「奴らは三人だけだっ!一人ずつ分散さすのだっ!」

「「「「「「オオッ!!!」」」」」」



 既に闇商人達は勇者に護られること無く獣人連合に取り押さえられていた。


「クソーッ!あのクズ勇者め!俺たちを盾に使いやがってっ!!!」

「黙れ!犯罪者!」

「ぐぬっ!」


 そして戦況の行方を静かに見守る二人の漢が、そこに居た。


「こうして話をするのも久しいなオウガ」

「アー、こんな場で無ければ酒でも交わすのだがなレオ兄、いやレオン王子」

「ふふ、昔の呼び名で構わないよオウガよ。オウガは、まだ行かないのかい?」

「アー、マダダ。コレは普通の魔物討伐とは訳が違う、まして戦争でも無い!勇者の仮面を着けたバケモノとの戦いなのだ、今は冷静な判断こそ必須!」


「ふふ、同感だ。ところでオウガ、リオンヌとは会ったのかい?」

「イヤ、()()から一度も会っていない……闘技大会でレオ兄に勝ち優勝し改めて会いに行こうと思っている」

「フッ、見事私を倒しリオンヌを奪ってくれよ。だが私も手は抜かないよ、今の君がリオンヌに相応しい漢か見極める必要があるのでね」

「望むところダ!」


「取り敢えず今は勇者達が分散するのを待とう。オウガは誰を殺るんだい?」

「オレか?オレは、あのタカシと言うヤツを殺ろうと思っている。レオ兄は、どいつを殺るんダ?」

「私は当初の予定通りユーゴと言う勇者を殺る!但しそうなると残りタクと言う勇者を殺る者が居ないな……」

「心配するコトは無い。アノ二人にタクは殺ってもらおう」

「ほぅ彼女達か……ポアン・グレイシス、地上戦において彼女の右に出る者は居ないと言う、そして彼女の相方も相当な手練れと見た」

「ポアン……彼女とも真剣に立ち会って見たいものダ……」



 そしてここでも


「どうなの〜ポアン、倒せそう?」

「勇者三人は無理!だけど一人だけなら」

「それなら大丈夫そうよ〜あの二人が一人ずつ相手してくれそうだから〜」

「ん!残った一人をアタイとマリーで殺る!サポート宜しく!」

「フフ、マリーさんに任せなさい〜」

「ヴォルフ居ればもっと余裕」

「居ないものは仕方ないでしょ〜。でも私たちには切り札が居るじゃないの〜」

「ん!アスラ早く来る!!!」


 そうよ〜アスラ君、貴方は一体何処で何をしているの〜?早く私たちの前に現れて〜。





 ◇ ◇ ◇


「なぁ地竜、せっかく取り返した卵を置いて行くのか?」

 置いていって大丈夫なのか?

『フム心配無い。ノーム達がシッカリ護ってくれる』

「そうなのかノームさん?」

『三名ほど残し卵を護衛さすのじゃ!残りのメンバーは穴掘りじゃ!』

「ほ〜なるほど。10人で掘ってくれるのなら帰りは速そうだな」


 流石に10人のノームが穴掘りしてくれているので最初に3人で掘っていた時より遥かに掘るスピードが違う。

 速いね楽チン!俺と地竜のお姉さんは只管付いて行ってるだけ、でも夜通し卵を抱えたまま移動していたせいか凄く眠い……チョット疲れが出てきたかな。


『のうアスラよ』

『何かな地竜のお姉さん?』

 あっ、ボ〜としてたから心に思っていた呼び名で言っちゃったよ。

『フッお姉さんか……まぁ良い。アスラ、お主も我と同じ隻眼なのか?』

「あっ!コレね。外すの忘れていただけだよ。素顔が分かり難くする為に眼帯を付けているんだ」

 眼帯を外して見せて見る。


『人で言うところの変装と言うものか……何故に変装などしておる?』


「さっきも話しただろ?俺って異世界人じゃん。俺の固有の能力(スキル)欲しさに知人が狙われかねないし勇者三人も一応異世界人なんだ、そいつらにも俺の存在を隠したいんだ。だから遭遇しても素顔の俺ってバレないようにしている訳さ」


『……我が見る限り、お主は相当な力を秘めている様な気がするが……悪しき勇者を倒そうとは思わないのか?』


 相当な力って!買いかぶり過ぎだよ。

「そうだなぁ……俺に対して害があれば考えるけど今の所は……それも無いし倒そうとは思わないぜ!まだ死にたくないしな。だけど俺の大切な者に手を出す様なら容赦はしない、それが勇者であろうと魔王であろうとな」


『なるほどの〜』

 勇者であろうと魔王であろうとか……この者正しく真の勇者でなかろうか……。



 休憩タイム


 俺の為に頑張って穴を掘ってくれているノーム達に感謝を込めてコーシーを淹れてあげよう。

 基本精霊は食事はしない筈なのに凄く喜んでいる。初めに会った小っこいオッさんノームも地底湖の水で淹れたコーシーの味も分かるようで、こちらのコーシーの方がお気に入りみたいだ。


「なぁ地竜のお姉さん、俺との約束覚えてる?」

『我の()と関わりが無い者には手を出さない事か?心配せずとも約束は守る!我は一度交わした約束を破る事などせぬ!』

「じゃあさ、約束を守ってくれるのを信じて、その片眼治してあげようか?」

『お主も この世界に来て気づいておろう?回復魔法等では我の潰れた片眼はもう戻らぬ、片眼が無くとも我には造作(ぞうさ)もない。気遣い無用じゃ』


「ん〜気遣いじゃないんだけどね。せっかく綺麗なお姉さんだからビジュアル的にもだし片眼が潰れているより治って見える方がイイじゃん。それに俺の大切な人も両目が見えない辛い時期があったしね。魔法では治らないかもしれないけど俺の能力なら治せるかもよ」

()()()()()が何か分からぬが……魔法では無い違う能力とな?少し興味が湧く能力よな。では治してみるが良い』


 地竜のお姉さんから治療をするコトへのお許しが出たので治療をしてみるコトに、失われた目玉の再生治療は初めてだけど大丈夫でしょう。多分



 異界より神の力でやって来たお主(アスラ)の力、この目で確と見せてもらおうぞ。

 ムッ!?この者が我の傷付いた瞼に触れた途端!何じゃコレは!?失われた筈の眼が!鼓動を打つように熱い!!!


『グヌヌッ!』

「痛いか?少し我慢してくれよ。多分脳に近い部分だから再生するのに神経が張り巡らして痛みが走っているかもな」


 我には理解し難いコトを言っているが痛みは然程ない!先程の熱を持つモノも今では心地良い温かさじゃ……


「よし!多分治ったぞ。ソ〜っと眼を開けて見てくれ」

『なんと!?みっ見えるではないか!』

「見えるなら問題ないな」


 ムゥ……なんと凄まじい癒しの能力じゃ……嘗て500年前に魔王討伐の為 この世界へ召喚された勇者どもの力に似ておる……


『凄いの!人間アスラ!』

『まさか失われた眼を治してしまうとは!やるな人間アスラ!』

『人間アスラ見直したぞ!その力は神から授かった力なのか?』

「いやいやコレは元々俺が持っていた力だぜ」

 見直したって……一体俺をどんな風に見てたんだよ。

 でも目玉の治療をして正解!竜だけど、より一層綺麗なお姉さんになったよ。


『アスラよ!』

「何かな地竜のお姉さん?」

『我の失われた眼を取り戻してくれたコト感謝する。故に何か礼をしなくてはな』

「礼なんか要らないぜ。俺との約束さえ守ってくれるのなら それでイイよ」

『ム!その様なモノで良いのか?』

『地竜、諦めるんじゃ!』

『こ奴には損得は無いんじゃ!』

『人間にしては珍しく欲が全く無いのじゃ!』


 イヤイヤ欲はイッパイ有りますって!好き勝手解釈しないでくれって!


『ならば一つ貸しにして置こう。何か困った事が有り、我の力で助けれる事なら力を貸そう』

「じゃあ、それでイイよ」


『休憩も終わりじゃ!皆の衆 気合いを入れて掘るぞー!!!』

『『『『『『オオオ!!!』』』』』』


 穴掘りも再開し、小っこいオッさんノームの話では、もう直ぐベスティアに到着するらしい。

 しかし最初に地竜の話を聞いた時、狂ってベスティアで暴れまくったとか聞いていたから凄く狂暴な奴かなって思っていたけど話をすれば普通に話も通じるじゃん。

 まぁそりゃそうか卵とはいえ自分の子を奪われたら誰でも怒り狂いそうになるからな、もし俺が自分の立場なら俺も地竜のお姉さんと同じコトしてたかもな……




 ◇ ◇ ◇


 闘技場


 始めこそ余裕で対応出来ると踏んでいた勇者達であったが、獣人連合と対峙するも入れ代わり立ち代わり応戦する敵に対して疲れが徐々に溜まりつつある勇者達、焦りと苛立ちに(つい)にキレ、猛反撃を開始するコトに……そしてアスラでは覗くコトが出来なかったタクのスキルが発動する。


「アカン!これやと埒があけへん!タク、召喚や!!!」

「オーケータカシ!虐殺やな」

「タクさん大丈夫っすか?召喚魔法は可なり魔力消費するっしょ?」

「大丈夫や!このままやと俺ら死んでまうならな」

「了解っす!詠唱中、僕とタカシさんでタクさんをカバーします!」

「タクッ!いてこましたれ!」


『冥府の闇に堕とされし邪悪なる魂よ!今一度現世に戻りし我の下僕になりて魂を喰らい敵を殲滅せよ!』


 邪悪なる勇者タクが召喚魔法を詠唱した直後、凶々(まがまが)しい魔法陣が出現した!!!



 なんジャ((獣王))あの凶々(まがまが)しい魔法陣は!?


 闘技場にて勇者と対峙する全ての者は、勇者タクが呪文を唱えた直後に一同騒然とした。

 それもその筈、魔法陣から次から次へと武装した骸骨兵(スケルトン)が続々と100体も出現するからだ。


「怯むなーっ!!!皆の者!迎え撃つのだっ!!!」

「「「「「オオオッ!!!」」」」」

 怯むコトの無い獣人連合は骸骨兵(スケルトン)に対し応戦する為に迎え撃つ!

 先程まで獣人連合が優勢な戦いを展開していたが勇者タクの召喚魔法により状況は一転し混戦状態になった。


「雑魚は骸骨兵に任せて後ろで控えてる奴ら(回復部隊)殺るで!」

「よっしゃ三方に散って反撃やなタカシ!」

「そや!固まってたら動きずらい散るで!」

「了解っす!僕はアッチやりまっさー!」


 骸骨兵(スケルトン)が出現と同時に兵に紛れ方々に散りだす勇者達、それを見逃さないレオン、オウガ!そしてマリーとポアンであった!




「なぁ〜にぃ〜アレ?召喚魔法じゃないの〜私初めて見たわよ〜!」

「マリー!ボーっとしない!行く」

「待って〜ポアン!」

 アスラ君が勇者と関わるなって言うコト頷けるわ〜強大な力を所有しているからなのね〜。


 悪しきとはいえ腐っても勇者ってコトなのね〜。


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