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地底竜

 精霊ノームが最後の一掘りをした瞬間だだっ広い開けた空間が現れた。目の前には地底湖もある洞窟だ!?


 と、同時に開けた空間に居た別のノーム達と目と目が合った瞬間!一斉に蜘蛛の巣を散らす様にアチコチに駆けずり回りながら隠れた……慌てて隠れなくても襲ったりしないから。


『皆の衆!大丈夫じゃ!』

『皆の衆!この人間は無害じゃ!』

『皆の衆!安心するのじゃ!』


 小っこいオッさんが洞窟内で待機していたノーム達に俺が害の無い人間だと説得(説明)してくれたお陰で難なく受け入れてもらえた。

 洞窟の空間内に待機している精霊ノームは10名程いたが……オヤ?目的の地竜が居ない……急に脅かす様に出てくるんじゃないだろうな。ドキドキ



『貴様か人間!我の()を奪ったモノは!』

「!!?」

 やっぱりね、そう来ると思ったよ。一瞬頭の中にその声が響いたと同時に何処からか禍々しい殺気が!?


『地竜!やめるのじゃ!』

『こ奴は味方じゃ!』

『お主の卵をワシらと共に取り返してくれたのじゃ!』

『なんじゃと?我の()を取り返してくれたとな?』

『そうじゃ!この人間を殺しては成らぬ!殺せば お主も唯では済まされぬぞ!』

『人間如きを殺して唯では済まされぬとな?』


 な〜んかノームが俺を庇いながら地竜と話をしてる……っーか、地竜姿見せろよ。


『地竜!この人間を良く見るのじゃ!』

『そうじゃ地竜!良く見るのじゃ!』

『お主の目が節穴じゃなければ解る筈じゃ!』


『……………!?』

 この小さき人間を良く見れとな?別段変わった様子も無い……ム!?ムムム!

 この小さき人間は!?彼奴(あやつ)の加護持ちではないか!?然も神達の加護も……ノームもこの小さき人間に加護を与えておる……そうじゃな、この小さき人間を殺せば我とて唯では済まされぬな。


『ノームよ、お主達の言う事信じようぞ!小さき人間 我の()を奪い返してくれた事眞こと感謝する』

「疑いが晴れたならイイさ。卵を返すから姿を見せてくれ」

『既に貴様の目の前に居るぞ』


「ん?目の前?」

 目の前と言われ目の前を見れば巨大な岩?土の山?……もしかして目の前の巨大な岩が地竜?いやカラダに岩や土がへばり付いているのか……


『分かりづらいか?暫し待つが良い』


 地竜がそう言って、巨大な岩がブルブル震え出しカラダに付着している岩や土がバラバラ崩れ出した所で漸く地竜らしき姿が現れた。


 カラダに付着している物が取れても元々土色っぽい体色だから丸まってたら土の山にしか見えません。

 だけど鋭い眼光が俺を射抜くように覗いている……


『ほぅ我を目の当たりにしても臆せぬか』

「いやさぁ〜駄竜を毎日相手してたら少々な事じゃビビらないって」

『ん?()()()()とな?』

「あっ!ゴメンゴメン。覇竜!バハムートの事な」

『ほぅ小さき人間は彼奴(あやつ)の名を知っておるのか……して、何故に()()()()なのだ?』

「イヤだってさぁ〜ココだけの話だけど一応竜の頂点に立つ奴だから どんだけ凄い奴かなぁ〜って思ったら唯の漫画好きな駄目駄目な竜じゃん!」

『駄目駄目な竜とな?それで()()か!なるほどなアッハッハ!』

「そう言う事」


『それで小さき人間。()()()とは何ぞや?』

 フハハハ彼奴(あやつ)の事を駄目駄目とは、面白い事を言う。


「あっ!それな。言うの遅れたけど俺の名前はアスラ!異世界から この世界にやって来た者さ。さっきの漫画と言うモノは、想像し難いだろうけど俺の元居た世界にあるモノで絵で物語を表現して描いた書物さ」

『なんと!?貴様は異界の者とな?』

「そうだぜ(漫画の事はイイのかよ!)まぁ別に信じてくれなくても俺には問題ないからな。じゃあ卵を返すな」


 地竜の前にソ〜ッと卵を置いてやると少し微笑みを上げて喜んいるような気がした。

 ずっと抱えてたから腕がパンパンだよ、今思えば念動で運べば良かった……


「じゃあ卵も無事返したし俺は帰るな」

『では我も一緒に行こうではないか』

「一緒に行く?なんで?」

 卵返しただろ?何で付いて来ようとしてるんだ?

『我の大事な()を一度ならず二度までも奪ったモノ達に報復をしようではないか。ノーム達の話では奪ったモノ達は以前と同じく獣人ではないか、獣人の国を滅ぼしても文句を言われる筋合いは、無い!』


「ハァ?なに言ってんだ?そうならないようにノームさんと一緒に苦労して取り返しだぜ」

 ノーム達も騒ぎにならないように頑張ったのに今の言葉で困惑してるじゃないの!


「心配せずとも貴様には手出しはしない」

「イヤそう言う問題じゃなく、全く関係無い者まで襲おうと しているだろ!」

『そうだが何か問題でも有るのか?我の()を奪った獣人どもが悪いのだ』

「イヤイヤだからさぁ俺にも大事な獣人の知り合いが居るんだって!」

『では、どうしろと言うのだ?我の怒りを貴様が受けてくれるのか?』


「そんな事出来るかっ!!!」

 お前は恩を仇で返すのかっ!?


『では、どうしろと言うのだ?』

「責めて卵に関わった者だけにしてくれ!聞き入れてくれなければ……力ずくでも止めるぞ!」

 そう言いながらバックからいつでも魔剣を取り出す態勢を取る。


『ほぅ我と一戦交えようとな?』

「そうだぜ。本当は竜相手に闘いたくは無いけどな……さぁどうする?」

 チラッとノーム達を見れば一塊になってオドオドこちらの様子を伺っている。

 スマンなノーム。


『フハハハ!小さき人間、いやアスラと申したか、我を前にし臆する事の無い その態度!気に入ったぞ!フハハハ!』


「……で、どうするんだ?」

『そうじゃな、ここはノーム達の顔を立ててアスラの言い分聞き入れようぞ』

「そうか……」

 言い分って、何だよノームだけじゃなく俺の顔も立ててくれよな!まぁ聞き入れてくれたから良かったけど、本当にコイツと戦闘なんかしたら絶対死ねる自信があるからな。あ〜良かった!


『では我の()を奪い関わった輩どもの話をジックリ聞こうではないか』

「ああ」

 竜と対峙する緊張の余り喉がカラカラだ……話をするならコーシーでも飲みながら話をするかな。

 ついでだから、ここに居るノーム達にもコーシーを振る舞ってやろう。


「話をする前に飲み物を用意するからチョット待ってくれるかな?ノームさん、コーシー淹れるからコーシーカップが無い仲間に自分のコーシーカップ作らして」

『分かったぞい人間アスラ!』

『皆の衆!こんな感じの器を作るのじゃ!』

『さぁ皆の衆!気合い入れて作るのじゃ!』

 ワイワイ ガヤガヤ


 気合い入れて作らなくてもイイって!

 地竜は何の事か解らずジーッと静かに俺たちの様子を伺っている。

 地竜にもコーシーと思ったけど流石に 地竜のサイズじゃね、カップはノームさんに頼んで作れてもコーシーが足りません!


 各自カップも作れたようなので、順番にコーシーを淹れて行く。

 因みに水は地底湖の水を使用してみる事に、飲めるかどうか確認したところ飲めるらしいけど一応アクアキネシスで余計な不純物を除いた純粋な水だけを抽出してみました。


 初めてコーシーを飲むノーム達から”美味い美味い”と連呼する様に声が聞こえる。最初に遭遇した小っこいオッさんノームは”どうじゃ美味いだろう。コレはコーシーと言う飲み物じゃ”と、自分の手柄のように自慢している……



 そして お約束通り、それを見ていた地竜が何かを呟いた。


『おいアスラ!我の飲み物は無いのか?』

「淹れてやってもイイけど、このカップで、そのカラダのサイズじゃ足らないだろ……」

 やっぱりね、小っこいオッさんと同じコト言うと思ったよ。


『フム、暫し待つがよい』

 そんな事を地竜が呟いた瞬間!?ヤツのカラダが変化(へんげ)して行く……ほ〜この世界のドラゴンって変化(へんげ)出来るんだ。漫画やアニメでお馴染みだから驚きませんよ。

 駄竜も変化(へんげ)出来るのかな?出来るだろうな。

 人の姿に変化(へんげ)した地竜は身長2mを超える長身の女性の姿に……凄く綺麗なお姉さんになったよ!しかも服を着てる……服はどこから出てきたんだろう?異世界ファンタジーの七不思議にしておこう。


 でも折角綺麗なお姉さんなんだけど残念な事に片目が潰れている。

 これはオウガの親父に潰された傷痕なんだろうな。


 別に治療してやる義理は無いけど気が向いたら治してやろう。


「ノームさん、地竜用にコーシーカップを若干大きめで作ってくれるか?」

『任せろ!人間アスラ!』

 しかし器用に作るもんだね、後で地竜用に作ったサイズのカップも数個作ってもらおうかな。


『ムムッ何じゃ!?この飲み物は!?う、美味いではないか!!!アスラ!もう一杯淹れてくれ』

「ハイよ、気に入ってくれて嬉しいよ」


 竜にもコーシーの味の良さが分かるんだ!チョット驚き!人の姿に変化(へんげ)したからなのかな?

 地竜と小っこいオッさん達に、もう一杯淹れてやり一息ついた所で俺もコーシーを一口飲む”ゴクリ”!!!?

 なっ何だこれは!?コーシーが美味くなっている?


「ハッ!!!」

 そうか、地底湖の水を使用して淹れたからだ!これは新しい発見だな……暇な時、各地の水で試してみる価値があるなコレは……後でカップと水を入れる容器も小っこいオッさんノームに作ってもらおう。水、お持ち帰り決定!


『アスラよ、我の()を奪った輩どもの話を聞かせてもらおうではないか』

「ああ分かった」


 地竜の卵を奪った者達の話を地竜に聞かせ既にノーム経由で聞いているだろうけど五年前にも同じ事をした者も今回と一緒の者と告げた。

 ノーム達は俺と地竜の話を静かに聞いてくれている。

 そして五年前の騒動の時に地竜と戦った者達は恐らく卵と全く関係が無いことも付け加え、前回同様今回も獣国自体の犯行では無い事を敢えて強調して伝えた。


 もちろん今回卵に関わりの有る者達、闇商人そして勇者の事も告げるコトに……


『何じゃと?勇者が我の()を利用して何かを企んでいたとな?』

「俺が調べた範囲だと そうだぜ。卵を餌にアンタを誘き出して闘い倒そうと目論んでたぞ」


 今の話を聞いて何か考える様に目を閉じている。何か思う所でもあったのかな?

 恐らく勇者は地竜を討伐し更に自分達のステータスを上げておこうと思ったんだろうね。多分

 別に勇者に対して俺個人も恨みは無いけど話の流れでつい喋っちゃったよ。

 そして考えがまとまったのか目を見開き俺に詰め寄って来た!なんだ?人の姿とはいえ竜だからさぁ怖いって!


『アスラ!お主は勇者では無いのか?』

「はぁ?何言ってんの?勇者は別に居るだろ、さっき話したじゃん」

 またその(くだ)りかよ、異世界人が絶対勇者や賢者とは限りません!実際今回召喚された奴らも一応勇者だけど、まともな勇者じゃないしね。


『我の記憶によれば勇者とは異界から やって来る者が殆どだと記憶しておる』

「それは偶々じゃないの?俺は、この世界で旅をしながら楽しみたいの!」


 取り敢えず地竜に卵泥棒の話も話し終えたので俺に付いて来るなら卵と関係が無い者には絶対手を出さないよう約束させ、地竜の姿では無く今の姿で付いて来るよう薦めた。

 だって地竜の姿で現れたら余計な騒ぎになりそうだし……さてと飲み終わったカップを全部洗ってから出発しようかな。




『地竜よ、あの者は神の力で、この地へやって来たのじゃ』

『それは本当かノーム?ではアスラが真の勇者なのじゃな?』

『それは解らぬ……解らぬがワシらは見届けるしかできん!』

『フム……彼奴(あやつ)も認めた人間……我も、しかと見届けて見るかの』




 カップを洗っている最中に新しいコーシーカップと水瓶を作って貰ったぜ!早速水を入れて、サッサと用事済ましてヴァルトリアに帰るぜ!


 ここの水で淹れたコーシー飲んだら皆んなビックリするだろうな。


 楽しみが増えたぜ!

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