ティータイム
「―――以上が報告になります!」
「なに?精霊と卵を取り返し竜に卵を返すジャと?」
「ハイ!報告した通りで間違いありません!」
「ウ〜ム……信じ難い話ジャ……」
「そうですね。精霊を見たと言う事例は何度か聞いた事がありますが、直接会話する者など余程精霊に愛されていない限り聞いた事がありませんね。父上、先ほどの報告は本当の事なのでしょうか?」
「大昔の話では精霊と共に暮らし共に過ごした者は居たという……」
以前から調べ今回の報告を纏めると……やはりアスラは……
「父上、いや王よ!今回の件如何致しましょう?」
「そうジャのぅ……明日の闘技大会は表向き平常通り行おう。そして――――」
「……解りました。早速その様に手配し準備致しましょう」
「ウム任せたぞ」
◇ ◇ ◇
「なぁノームさん、まだ地竜のトコには着かないのか?」
『まだじゃ!』
『まだまだじゃ!』
『そういう事じゃ!』
「そうなのか」
一体どれくらい移動したらいいんだ?結構な時間移動しているような気がするけど……まぁ余りにも近くにいたら逆にビックリだけどな。
ベスティアから離れた場所にいるんだろうね。コレだけ移動して会わないと言う事は、獣人に卵を奪われたの気付いてないのかな?
しっかし何回も卵をパクられるとか どんだけドンくさいんだ地竜って!
危機管理しろよ、ったく。
だけどアレだな視界は明るいとはいえ洞窟内を移動していると距離とか移動時間が若干微妙に狂ってくるね……万が一何かあって瞬間移動するのも躊躇しそうだし、現在地が全く判らないからな。
移動した先が土の中とかシャレにならんし。
しかしノームの穴掘り能力って不思議だなぁ どう言った原理で掘っているんだろう?地中の中でも明るいし酸素もあるんだろう全然息苦しくないから。
俺のアースキネシスとも違うような能力……次の休憩タイム中にでも聞いて見ようかな。色々と聞きたい事もあるし
休憩
『ノームさん。質問あるんだけど聞いてもイイかな?』
『何じゃ人間アスラ?』
「ノームさんの穴掘り能力って穴をそのままにする事も出来るのか?」
確かに名前を呼んでくれているけど名前の前に”人間”は付くんだね。
『勿論出来るぞ』
『それが質問か?』
『何じゃくだらん質問じゃのう』
「じぁあさダンジョンとかも造れるのか?」
『簡単じゃないが勿論造れるぞ!』
『簡単じゃないが得意中の得意じゃ!』
『簡単じゃないがな』
「ん?どう言う事だ?」
簡単じゃないけど造れるって、どう言う意味?
『ダンジョン自体を造るのは簡単じゃ!じゃがダンジョンには核が要る!』
「なるほどね〜コアが要るのか」
そりゃそうだよなコアが無ければ唯の洞窟だからな。
『ダンジョンを造って欲しいのか人間アスラ』
「いや興味本位に聞いてみただけさ」
『造って欲しければ核を用意しろ!』
『核さえ有れば希望のダンジョンを作ってやる!』
「へ〜コアさえ有れば造ってくれるのか……所でダンジョンコアって何処にあるんだ?」
『説明しても良いが人間の頭じゃ理解でけん!』
『そうじゃな理解でけん』
『手っ取り早いのは既存のダンジョンから核を壊さず移動するのじゃ!』
「へ〜」
理解でけんって……でも他の手として壊さずダンジョンコアを奪えばいいのか。
でもアレだな、誰も手を付けてない未開のダンジョンに限るだよね。
修行用に自分のダンジョン欲しいけど、やっぱダンジョンは天然モノがイイかな。
『聞きたい事はそれだけか?』
「ん〜そうだなぁ……そう言えばノームさんは500年前に召喚された勇者達を知ってたみたいだけど、知り合いか?」
『アノ者達か』
『勿論知っておる』
『アノ者達と一度ダンジョンを造った事がある!』
「へ〜一緒にダンジョンを造ったんだ」
と言う事はアレかな?マナの森のダンジョンかな?
「それってマナの森のダンジョンか?」
『そうじゃ』
『良く知っておるの人間アスラ』
『入った事があるのか?』
「一度入ったぞ。それとマナの森のエルフから聞いたんだ人工のダンジョンって!でもダンジョンはダンジョンだろ?人工って どう言う事だろ?」
『核が違うんじゃ』
『そう核が人の手によって作られておるのじゃ』
『当時の天才錬金術士が作った核じゃ!名前がリーリーリー何とかじゃ!』
「リーレオンだろ?」
一応憶えているぞ。
『そうじゃ!そんな名じゃ!』
『奴は凄い奴じゃ!人工で核を作るのじゃから』
『そうじゃな、あれ以来核を作れるような天才は現れんのう』
「なぁその人工で作るコアでメリットと言うか利点なんかあるのか?」
『成長せん!』
「エッ?」
『核が成長せん!』
「核が成長しない?」
『そもそも あのダンジョンはエルフの修行用に造られたダンジョンじゃ、そして人工で作られた核は自然に出来る核と違い成長せんのじゃ』
「なるほど……」
飽くまで修行用(成人の儀)、ダンジョンが成長すれば難易度も上がって修行どころじゃなくなる訳か。
『他に聞きたい事あるか?』
「そうだなぁ〜精霊は何を食べて生きてるんだ?」
『ワシら精霊は人や獣のように食事はしない』
『強いて言うなら魔力(魔素)が食事じゃ』
『そう自然界に溢れる純粋な魔素こそが食事じゃ』
「へ〜魔力(魔素)が食事かぁ」
せっかく休憩中ってのもあるからコーシーでも淹れようと思ったけど自分の分だけで良さそうだね。
バックからコーシーセットを取り出しコーシーを淹れる準備をし始めると精霊ノーム達は物珍しいのか興味津々で食い入る様に見ている。
能力を使って水を出したり、それを温めたりするのが珍しいのかな?それともコーシーかな?
まぁいいやコーシーの完成!
フーフーゴクリ「うまーい!」
久々のコーシーは美味いね〜王都を出る前にルチハから予備のコーシー豆を貰っていて正解だ!
精霊ノームはジーっと俺の飲んでるコーシーが気になるのか凝視している。
まぁ仕方ないよなぁ食事が魔素とか言っていたし。
『人間アスラ!ワシの分は無いのか?』
『そうじゃ!ワシの分が無いぞ!』
『何故一人だけ飲んでいる!ワシの分が無い!』
「エエっ!?さっき自分達は魔力(魔素)が食事だとか言ってってなかったか?」
『食事をしないだけじゃ!』
『食事が出来ないとは言っておらん!』
『早くワシらの飲み物も用意せんか!』
「ハイハイ」
何じゃそれ?しかしワガママジジイだね精霊ノームって、素直じゃないし。
コーシーを精霊ノームに淹れてやろうと思ったんだけど……俺の手持ちのカップじゃデカ過ぎる事に気づいた。
「ノームさん、俺のカップじゃ大きすぎるんだけどコレで飲めるか?」
『ちと大きいの』
『任せろ人間アスラ!』
『待っていろ人間アスラ!直ぐに作る!』
そう言って、ノーム達は偽卵を作った時のように土を捏ね出し自分達のコーヒーカップを、いやコーシーカップを作り出した。
あらま何て素敵なコーシーカップなんでしょう。精霊ノームってモノ作りに精通しているのは知っていたけど(ファンタジー知識)間近で見たら凄いね。
「ノームさん、コレってコーシーを注いでも大丈夫なのか?」
『大丈夫じゃ!』
『ホレ早く淹れぬか!』
『まだか?早く淹れろ人間アスラ!』
「ハイハイ」
各自作ったマイカップにコーシーを淹れてやりコーシーを飲む反応を伺う。
さっき食事はしないとか言っていたけど味が判るのかな?そもそも味覚自体あるのか?
『コレは!?』
『美味い!』
『初めて知る味じゃ!』
「あっそ、良かったね」
一応味覚は、あるんだ。じぁあ試しにアレを出して食べるか聞いてみよう。
「ノームさん、コレなんだけど食べてみる?」
取り出したのはルチハに作って貰った生クリームたっぷりのクレープ。
『コレは何じゃ?』
『甘い匂いがするの?』
『人間の食べ物か?』
「コレはクレープって言う食べ物だぜ。俺の元居た世界の食べ物をこちらで再現したんだ。因みに今飲んでるコーシーも再現したんだ」
臭覚もあるみたいだね。
『ほ〜異界の飲み物と食べ物か』
『どれ頂こう』
『人間アスラ、三等分に切り分けてくれ!』
「ちょい待ってな」
そりゃそうだな、ちっこいオッさんからしたら今取り出したクレープ一個分でも大きすぎるよな。
キラーモールのナイフは切れ味イイね、クレープを潰す事無く綺麗に切れたよ。
「ほい切り分けたぞ召し上がれ」
序でにコーシーももう一杯淹れてやろう。
『コレは!?』
『なんと!?』
『美味い!!』
「それは良かった」
なんだ精霊と言っても普通に飲食出来るんだね。
『人間アスラ!』
「ハイハイ。おかわりか?」
『いや違う』
『見返りは何がいい?』
『そうじゃ何がいい?』
「ハァ?何それ。見返り欲しさにやってないぞ?」
『なに!?見返りが欲しくないのか!』
『なんと!?』
『こんな人間がまだ居たとは!?』
「なにそれ?」
この世界の人達って精霊に対して等価交換と言うか見返りや対価欲しさに近づくのか?
『こ奴は異界の者じゃ!』
『そうじゃ!この世界の人間じゃない!』
『じゃから欲が無いのか!』
「いやいや欲は有るけど今ので見返りなんか要らないだけさ」
『そうか欲は有るのか』
『ワシらに出来る事なら何でもしてやる』
『ダンジョンが欲しいのか?』
「いや要らんって。じぁあさコーシーカップを俺の持ってるサイズで何個か作ってくれるか?デザインは任すから」
ルチハの店にお土産出来るしノームお手製のマイカップもイイかもね。
『お安い御用じゃ!』
『お茶の子さいさいじゃ!』
『朝飯前じゃ!』
「何だ?その言い回しは?」
『500年前の勇者達が使っていた言葉じゃ!』
「あっそ!」
そう言って、ちっこいオッさんは、土を捏ねまわしコーヒーカップを作ってくれた……しかも大量に。
でもコレって窯とかに入れて焼かなくても大丈夫なのか?聞いて見よう。
「なぁノームさん、普通陶磁器とか仕上げに窯に入れて焼くと思うんだけど焼かなくても大丈夫なのか?」
『大丈夫じゃ!』
『問題ない!』
『心配するな!』
「そうなのか?」
コレも精霊ノームの能力の一つなんかね?
『ウム美味い!もう一杯じゃ!』
『ワシもじゃ!』
『クレープも追加じゃ!』
「ハイハイ」
食事はしないんじゃなかったのか?しっかり食って飲んでるんだけど……
「なぁノームさん。精霊ノーム以外に精霊って居るのか?」
『居るぞ』
『ありとあらゆる場所に居る』
『じゃが人の住む場所には滅多に居らぬぞ』
「へ〜やっぱり居るんだ。他の精霊にも会って色々と聞いて見たいな」
『人間アスラ!』
「何かな?」
『精霊王には会った事があるか?』
「精霊王?会った事は無いし精霊にも王様がいてるんだ」
『機会があれば一度会ってみるがよい』
「その精霊王って何処に居るんだ?」
『それは言えん!』
『自分で探せ!』
『お主が邪な人間でない限り何時でも会える筈じゃ!』
「あっそ」
何じゃそれ?直ぐに会えるとか紹介してくれるんじゃないのかよ。折角異世界らしいイベントでも始まるかと思ったんだけどな。
『精霊王にお会いした際、このコーシーとクレープを差し出せば嘸喜ばれるじゃろう』
『そうじゃな』
『精霊王も美味しいモノには目がない方じゃからな』
「あっそ。何処かで会ったらコーシーとクレープをご馳走するか。さぁ片付けて移動だな、ノームさんのコーシーカップも洗うから貸してくれ」
一応水洗いだけどしっかり洗っておかないとな。
『ヒソヒソ ヒソヒソ?』
『ヒソヒソ ヒソヒソ』
『ヒソヒソ ヒソヒソ』
なんかヒソヒソと内緒話をしてるし、聞かれて不味い事も有るだろうから聞き耳は立てないでおこう。
さて地竜がベスティアを襲って来る前に卵を返せたらいいんだけど。