マイペース
地竜の卵を取り返すべく地下室へ到着したのだけど……先客のノームと遭遇し何故か地竜の卵を一緒に奪還する事になってしまった!?
『おい人間!その箱を開けろ!』
「ハイハイ」
ノームに箱を開けろと言われ金庫をよく見れば鍵が掛かっていて開けようがないんだけど。
『人間まだか?』
『早く開けろ!』
『サッと開けろ!』
「いや鍵が掛かって開かないし、コレって魔道具の金庫だよね?多分」
何か色々魔方陣が描かれてるんですけど……変に抉じ開けたりしたらヤバいんじゃないの?
『使えん人間じゃ!』
『本当じゃ!』
『人間ダメダメじゃ!』
「…………」
何か好き勝手言ってるし、持ち上げようにも固定されて持ち上がらないし……まぁこのバカでかい金庫を固定されてなくても持てないけどな……さて どうしようコレ?
「ノームさんは、金庫の鍵なんて持ってる?」
『そんなモン無い!』
「鍵持ってないのか……ノームさんは、どうやって開けようと思ったんだ?」
『そんなモン考えておらん!』
「なんだよ行き当たりバッタリかよ……」
『おい人間早く開けろ!』
『おい人間まだか?』
『おい人間無理矢理開けろ!』
「無茶言うなよ……」
さてと、無理矢理開けるのは簡単だけど魔道具らしい金庫だからね無理に抉じ開けて警報見たいなモノが鳴って騒ぎになるのも面倒だしな……
ここは俺の能力で何とか出来ないかな?もう一度金庫を透視で見て……ウン人が入れそうなスペースはある。
中に瞬間移動出来そうだな……一応試してみるかな(テレポ)シュン!
『さっきの人間消えたぞ!』
『人間消えた!』
『一大事じゃ!一大事じゃ!』
おっ!行けた。外では急に俺が居なくなって騒いでるし。
しかし思った以上にデカイなぁこの卵。取り敢えず抱えて(テレポ)シュン!
『なんじゃとー!』
『急に現れおった!』
『一大事じゃ!一大事じゃ!』
「……いやそれもうイイからさぁ」
『人間!どうやって卵を取り返した!』
『箱は開いておらん!』
『人間教えろ!』
「俺の能力で金庫へ入って卵を持ち出したのさ」
ホント面倒だから一々聞かないでくれ!
『おい人間凄いな』
『おい人間やるな』
『おい人間見直したぞ』
「ハイハイ。それより卵を持ち出したのはイイんだけど中身が無い金庫だとバレたら騒ぎになりそうだな……ノームさん、何かイイ手は無いか?」
『任せろ人間!』
『大丈夫じゃ人間!』
『心配するな人間!』
そう言ってノーム達は、何処からか取り出した土の塊を三人で捏ね出し 今俺が持っている卵を型取りだした……スゲー!
見る見るうちに本物の卵ソックリなモノが完成した。
どうやって作ったのか解らないけど色といい形といい大きさ、しかも重さも本物と区別が付かないモノだ。
ウゼーちっこいオッさんだと思っていたけど中々やるな精霊ノーム!
偽物の卵を抱えテレポし金庫の中へ入れ保管完了!
よし卵も取り返したしバックへ入れよう。
「アレ?入らない……おかしいな?ある程度の大きさのモノでも入る筈なんだけど……?」
『人間何をしておる?』
「いやバックに入らないんだ……」
何故バックに入らない?今までこんな事なかったんだけど……条件とか制限があるのか?
……ハッ!そうか。もしかして この竜の卵って生きているから……生きたモノはマジックバックに入らない……しかも時間停止機能付きだから余計入らないんだろうな。
バックに入らないんじゃ後はノームに任せるか。
『人間どうした?』
「あー何でも無い。取り敢えず卵は取り返したから後は任せる」
『ダメじゃ!』
『最後まで手伝え!』
『そうじゃ!最後までやり遂げろ!』
「…………」
何なの?元々自分らで取り返して地竜に返す予定だったんじゃないのか?
もしかして自分らで運ぶのが面倒だから押し付けてるんじゃ……
「もしかして運ぶの面倒だから最後まで手伝えとかじゃないだろうな?」
『そんな事は無い!』
『全くその通りじゃ!』
『最後まで成し遂げる許可を与えよう!』
「…………」
メチャ目が泳いでるんだけど……仕方無いノームより卵の方が大きいから運ぶの躊躇したんだろう。そういう事にしておいてやろう。
「はぁ〜仕方ない」
『そうか!最後まで成し遂げるんじゃな』
「それで どうやって地竜のトコへ持って行くんだ?そもそもノームさんは、何処からココへ入ったんだ?」
ノームの指差す方向を見れば、納得!地中から地下室へ入って来たようだ。でも潜入したにしては穴が無い。
ノームの能力で穴でも掘るんだろうか?
『ココへ一時的に穴を掘る!』
『一緒に付いて来い!』
『卵を落とすなよ!』
「あっと、その前に連れを外で待たしているんだ。そいつに今から卵を竜に返しに行く事を伝えて来るから少しだけ待っててくれ!」
ノーム達に外で待たしている連れに一度報告する事を伝え千里眼と透視を使いシィーナさんの現在地を確認シュン!
(シィーナさん)
(!アスラ殿!いえアスラさん、いつの間に背後に!?)
(スマン急だったから)
(……それで竜の卵は見つかりましたか?)
(一応見つけたから今から運びだす。多分建物の中の奴らには見つからないだろうけどシィーナさんには伝えておこうと思って)
(では私も卵を運びだす手伝いをします)
(いやそれが―――)
俺はシィーナさんに地下室で精霊ノームに会った事を伝えた。
「せっ精霊!?」
(シィーナさん声大きい!)
(すいません)
(信じてもらえるか解らないけど本当の話しなんだなコレが……)
(俄かに信じ難い話しですね……ごく稀に目撃事例は聞きますが直接会って会話までするというのも聞いた事がありません……)
しかも精霊の手伝いで竜に卵を返すなど……アスラさんが嘘を言っている素振りは無い……やはり貴方は伝説の……
(と言う事でノームと一緒に地竜のトコへ直接卵を持って行くから)
(解りました)
卵の事はアスラさんに一任する方が良いかもしれませんね。
(この後の行動は任せる。一旦エーナさん達と合流してからでも遅くは無いと思う。ただ……勇者と一戦交えるの避けた方がいいと思うぜ)
(そうですね)
エーナ達と合流し一度城へ帰りアスラさんの話を纏めて王に報告しましょう。
それからでも――ブツブツ
エーナさんが考え事をしている間に(テレポ)シュン!
(では私は……アレ?もういない……)
「待たせたな」
『人間、待っておったぞ』
『人間、もう良いのか?』
『人間、待ちくたびれたぞ』
「ハイハイじゃあ卵を運び出そうか」
『人間!今から穴を掘るから付いて来い!』
『一時的な穴じゃからワシらを見失うなよ』
『時間が経てば直ぐに穴が塞がるからな』
そう言って何処からか取り出したスコップのような物で地面に穴を掘り出した。
サクサク道具で掘っているようだけど、コレって魔法なのかな?
ちっこいノームは体長12㎝くらい(本当に、ちっこい)俺に配慮してくれているのか分からないけど俺が普通に通れる穴と言うか空洞の大きさだ。
あっ!卵を持っているからか
穴の中を通るから暗いのかと思ったんだけどノーム達が掘っている穴は視界がハッキリするくらい明るい……ノーム固有の能力なんかね?
そして通って来た空洞を振り返れば穴が自然と塞がっていってる!
ボヤっとしていたら生き埋めになりそうだね脇見を振らずに、しっかり付いて行こう。
卵を抱えた腕が痺れてきたよ……1時間程かな?穴を掘り続けていたノーム達の手が止まる。どうしたんだろ?
「どうした?」
『人間、休憩じゃ!』
『疲れたから休憩じゃ!』
『人間も休憩するのじゃ!』
「了解!」
そうだな丁度良い。必死に卵を抱えたまま1時間も移動しているから腕もパンパンだ。精霊も疲れるんだね
『人間!』
「何かなノームさん?」
つか、いい加減名前で呼んで欲しいんだけど……
『人間は何の目的でこの世界に来た?』
『そうじゃワシも その事が気になっていたんじゃ』
『ワシらの世界を荒らしに来たのか?』
「イヤイヤこの世界を荒らしに来た訳じゃ無いし!この世界で旅でもしながら楽しもうと思ったんだよ」
『本当か?』
『嘘じゃないだろうな?』
『そんな目的の為にこの世界に来たのか?どうやってやって来たんじゃ?』
「本当だし。どうやって来たかと言われたら……」
『どうした人間?答えれぬ理由でもあるのか?』
『召喚されたのか?』
『人間の能力で来れたのか?』
「ん〜精霊のノームさんだから話すけど……神様に この世界へ連れて来てもらったんだ……」
相手は精霊だからベラベラ言いふらさないだろう
『何じゃとー!』
『神に連れて来てもらったじゃとー!』
『イヤこ奴は神の眷属、満更嘘でも無いのかもしれぬ。人間!神から何か天啓でも授かり得て この世界に来たのか?』
なっ何だって?意味解らんぞ?
「てんけいが何だって?解りやすく言ってくれ?」
『神託の事じゃ!』
「神託?神託ってオラクルの事か?ってか 神様から何も お告げみたいなモノは無いぞ。異世界を楽しんでこいとしか……」
『『『…………』』』
神は、この人間に何を託しておるのじゃろう……
「そんな事よりさぁーいい加減俺の事を”人間”じゃなく名前で呼んでくれない?」
『人間は人間じゃ!』
『そうじゃ!人間は人間じゃ!』
『文句でもあるのか?』
「あるから言ってるんだろ」
『名で呼んで欲しいとは贅沢な人間じゃ!』
『本当じゃ!』
『仕方無い奴じゃ!』
贅沢とか仕方無いとかって言ってるし……
「ノームさん達も名前くらいあるだろ?教えてくれ」
『ワシらはノームじゃ名など無い!』
『そうじゃ!』
『ワシらはノームであって、それ以外では無い!』
「そうなのか?」
だから俺の事を名前じゃなく種族で呼ぶのか?
『で、名は何じゃ?』
『呼んで欲しくば言わぬか』
『そうじゃ名を申せ!』
「エッ!?マジで?俺最初に名乗ったよね?」
コイツら人の話を全然聞いてねーし!
精霊って全部こんな感じなのか?偶々この ちっこいオッさん達がこんな感じなのか?
どんだけマイペースなんだよー!ったく。