目的
闘技大会3日目
闘技大会も昨日の1回戦に比べると、かなり盛り上がって来たようだ。
2回戦では然程でもなかったのだけど、この3回戦は結構見応えがある。
今観戦している試合はポアンさんと人族の対戦なんだけど、人族の使っている武器がイイね。
「なるほど鞭か……」
「そうね〜ポアンも攻めあぐねている感じがするわ〜」
「鞭で牽制しながら離れた隙に魔法攻撃か……上手いな」
「威力は低いとはいえ当たればダメージ喰らうのはモロだもんね〜」
しかし鞭を振りながら”オホホホ”って笑うの止めてくれ!アンタはSの女王様かって!
「あ〜でも勝負あったな、ポアンさん既に相手の動き見切った感じがするし」
「本当に〜?あ〜でもそんな感じがするわ〜」
相手の鞭の動きに逆らう事無く自分の武器に絡ませ、そのまま鞭を引っ張り引き寄せる!
相手のS女王様も鞭を離せばいいのに離さないから…引き寄せられたままポアンさんの強烈なパンチで吹っ飛び場外。
オウガ達もそうだがやはり獣人って目がイイな、ポアンさんも鞭の動きよりも相手の鞭を扱う手の動きを見てる感じがしたし……さて今の試合で女性限定の3回戦は終了だな、次は無差別級の3回戦の始まりか。
その頃
「退屈やな〜」
「そやな、ブーが闘技大会へ出たいって付いて来たけど暇やな〜」
「なんかオモロイこと起きへんかな?」
「起きへんやろ?」
「大体今更何が悲しーて闘技大会やねんホンマしょーもな〜」
「ホンマやな、アイツまだゲーム感覚が抜けてへんからな」
「暇やからブラつこか〜」
「そやな」
別の観客席では
「親分、少し見え難いですがーあそこで女と観戦してるガキが例の医術師でさー」
「ハン!本当に噂通りガキじゃねーか!本当にあんなガキが医術師なのかぁ?」
「本当っス!まちげーありやせん!」
「お前らあのガキが一人になった所を狙え」
「ヘイ!わかりやした!」
「抵抗するよーなら骨の二、三本折っても構やしねーキッチリ攫ってこい!上手く攫えたら卵に縛り付けて平地へ捨てて来い!」
今回の計画を台無しにしてくれた お礼にキッチリ落とし前をつけてやる。
「しかし親分いいでやんすか、あの卵ごと捨てて?」
「構やしねーあんな危険な卵 後生大事に持っていたら、こっちに危険が迫る!一緒に捨てて来い!出来るだけ遠くへだ」
「ヘイ!分かりや..あん?何だテメーら?」
「なんや面白そうな話してるやん」
「ちょーど退屈してた所やから詳しく聞かしてくれへんか?」
「おい!?テメーら」
「親分から離れやがれ!」
「うっさいのー殺すぞ?」
「そーそー大人しくしてたら何もせーへんから騒ぐと手元が狂って親分の喉にナイフが刺さるかもしれへんで?」
「お、お前ら大人しくしていろ」
何だぁこの2人?急に現れたと思った瞬間喉にナイフが当てられている……唯のゴロツキじゃねーな?
「し、しかし親分!」
「構わねーこんな所で騒ぐと余計厄介になる……」
「さすが親分!話が分かるやん。ほんで何の話してるん?卵がど〜とか言ってけど詳しく聞かせて〜や?」
「それよりテメーら いってー何処の組織の者だ?」
「俺ら?俺らは勇者やけど」
「なっ!?」
勇者だと?何言ってんだコイツら?勇者がこんな所へ居るはずが無い、しかも眼つきが悪い……いや待てよ、この勇者気取りのバカに……最悪竜の卵はコイツらに押し付けようクク
「勇者の旦那、こんな所で話をしてたら誰が聞いているか分かりゃしねー 俺達の棲家へ来てもらうがいいか?」
「ほう招待してくれるんか?」
「あ、あー」
「ほな、あっこで今闘ってるデブおるやろ?あのデブも 俺等の仲間やねん、誰か一人残して後で連れて来てくれへんか?」
「あー分かった。オイ、お前 試合が終了してから お連れしろ」
「ヘイ!分かりやした親分」
あのハゲデブ人族にしては強いな……デブの割に動きが機敏だし……流石闘技大会各国から優勝目指して強者が集まるんだな。
「ね〜アスラ君、あのユーゴって人族強いわね〜ウチのバカより強いんじゃないの〜?」
「そうだな……ん?」
今マリーさん何て言った?ユーゴって言わなかったか?
「どうしたの〜アスラ君?」
「ちょマリーさん!トーナメント表見せてくれ!」
「イイわよ〜って、乱暴に扱わないで〜!それ高いのよ〜!」
「なに言ってんだ金出したの俺だろ?」
「あっ!そうだったわね〜テヘ」
何がテヘだ、イイ歳こいて。実際の年齢は知らんけど。
それよりもトーナメント表だ、あった……やっぱり今闘っているのは、ユーゴと言う奴だ……ツンツルで髪の色まで分からないが、あの顔立ちは日本人だ。
しくったな……頭の中でユーゴじゃなくブーゴで憶えていたのがマズったな。
取り敢えず千里眼を発動して観戦者を………………………!……あの二人がタカシとタクか?黒髪じゃない……イヤどう見ても日本人だ!
ん?今から引き上げるようだ……周りに居る獣人は仲間か?
「どうしたの〜アスラ君?急に黙り込んだと思ったら〜怖い顔して〜?」
「マリーさん、俺先に宿屋へ帰るからマリーさんもポアンさんを連れて出来るだけ速く帰って来てくれるか。その時に事情は話す!頼む」
「ん〜何か分からないけど分かったわ〜ポアンの試合も終わったから迎えに言って来るわ〜」
「じゃあ宿屋で!」
今から奴等を尾行しても見失うだけだ、どうせブーゴは試合に勝っている、明日も出場する筈だから最悪タカシとタクがいなくてもブーゴの後をつければいいし。
まさか獣人の国ベスティアで勇者に出会すとは……獣王様にも一応知らせておかないとな。
◇ ◇ ◇
「アスラ君一体どうしたの〜観戦を止めて急に帰っちゃうなんて〜?」
「アスラ!お腹空いた!」
「あースマん!ポアンさん飯は話の後な、それまで我慢してくれ。取り敢えずコレを摘んでくれ」
バックからお菓子を取り出しポアンさんに与えた……何故お菓子如きで目がキラキラしてるの?しかも酒好きなマリーさんまで……ハイハイいっぱい食べて。
「アスラ!ありがと!」
「今から話す事に騒がず聞いてくれ」
コクコク
「今…この国へ勇者がいる」
「エッ!?勇者がこの国に居るの〜?」
「マリーさんは、勇者に対してどんな情報を掴んでいる?」
「そうね〜噂でしか聞いた事が無いけど〜余りいい噂は聞かないわ〜噂を聞く限りでは、お伽話とか伝承に聞く勇者らしくないわね〜」
「……その程度の情報か……じゃあ勿論 顔とか名前なんて知らないな?」
「そこまで情報は入って来ないわね〜」
「あたいも知らない!」
「それで〜どんな人なの〜?」
「今日闘技大会で試合していた人族のユーゴって奴が勇者の一人だ」
「え〜アノおデブちゃんが勇者なの〜?勇者にしては悪人面よね〜」
だよね〜俺もブーゴを見た感想がそうなんだ。勇者にしては人相悪すぎだって!
「アスラ!勇者の一人って何?」
「二人のその顔だと知らないようだな、勇者は全部で三人いる。俺も確信持って言えないが、その三人共現在ベスティアにいる……」
そうなんだよな……ハッキリこいつだ!って言えないのが現状。でも会話を聞き名前を割り出せれば確信できる。
そうだ!別に会話なんか聞かなくても思考を読めばイイじゃん!そうしよう。
「残り二人もベスティアに居るの〜?」
「その二人も人族?」
「あー全員人族だ。名前も一応伝えておく、一人はさっき話したユーゴ。通称ブーゴと言うらしい。残り二人が”タカシ”と”タク”と言う名だ」
「ユーゴ(ブーゴ)、タカシ、タク」
「余り聞かない名前ね〜?他にはどんな情報があるの〜?」
「他の情報か……」
さて……どこまで話そうか……この際だから この二人にも俺の秘密を明かすか……。
その方が動きやすいし、この二人なら信用も信頼も置ける。
一応確認したが部屋の外には怪しい奴は居ないようだ。でも念には念を……
「今から話す事で一切驚いて声を出さないように、二人とも分かった?」
「は〜い」
「ウン!」
『二人とも俺の声が聞こえるか?』
「「エエーッ!」」
『シーー!二人とも声を出さないで』
コクコク
『勇者三人の事を話す前にマリーさんとポアンさんに俺の秘密を話す。聞く覚悟があるなら このままココへ居てくれ。聞いたからには他言無用で』
コクコク
『今二人には頭に直接話しかけている。返事を返す時は心の声で語りかけてくれたらいい』
コクコク
『二人に話す俺の秘密と言うのは……俺は、こことは違う世界からやって来たんだ』
『エッ?』
『違う世界?』
『そう、こことは違う異なる世界、つまり異世界から来た異世界人なんだ……』
『エエ〜!?』
『い、異世界人?』
ハハ 二人とも驚いてる驚いてる。
マリーさんとポアンさんの手を繋ぎ三人の心の声を共有する事にした。
今の俺なら多分出来る筈。
『二人には俺の言動や行動がココの世界の人達と違って映っていたのと違うか?』
『そう言われたらそうよね〜普通出来ない回復魔法使ったり転移魔法も、そして声を出さない語りかけとか普通考えられないわ〜』
『確かに』
『ハハ これは魔法じゃない俺の能力だからね』
『アスラ君の能力は後で聞く事にして〜、勇者について教えて〜』
『俺の聞いた話だと勇者はかの国から召喚された者だと聞く。俺の認識では勇者が異世界へ現れる時と言ったら普通魔王討伐って言う お約束的なモノなんだけど、かの国は自分の国の利益の為召喚したようだぜ。そして召喚された者は俺の住んでた国の者だと思う』
『同郷の人なの〜?アスラ君は、その人達を知っているの〜?』
『どうして同郷の者だと分かる?』
『いや知らない奴らだ。さっき話した勇者の名前からして同郷の者だと判断出来る。奴等の能力ついては一切知らない。だけど奴等の事を聞く限り勇者らしからぬ人格じゃない事は間違いない』
『私達も一緒よ〜良くない噂しか聞かないし〜』
『今の所この国での目的は分からない。もしかしたら闘技大会だけの為に来たのかも知れない……だけど気を抜かず二人には警戒をしていてほしい』
『分かったわ〜』
『アスラ分かった!』
『余談だけど500年前に召喚された勇者達、カツヤとケンジも同郷だな』
『エッ!?どうしてアスラ君がそんな事知っているのよ〜?』
『カツヤとは面識は無いけどケンジの方は俺が居た世界で見た事あるからな、召喚された時、此方の世界と彼方の世界の時間軸までは分からないけど、間違いなくケンジは知っているぜ。奴は俺の事知らないけどな』
二人とも複雑か顔をして悩んでる。
エルフの長老からスマホを見せてもらった事は今は話さない。知らない方がマリーさん達やエルフの人達の為だからね。
『所でアスラく〜ん、貴方の元いた世界の事を聞かせて〜?』
『アタイも聞きたい!アスラ聞かせる』
『ん〜そうだなぁ……まず文明が全く違う。俺のいた世界は100%では無いと思うけど多分魔力は無いと思うし魔法を使えない。それに動物はいるけど魔獣や魔物は一切いない』
『エエ〜!?そんな世界かあるの〜!』
『アスラ!種族は?』
『残念ながら人間しかいない。獣人もエルフ……亜人さえ居ない世界だ』
『人族が君臨する世界なのね〜でも魔力が無く魔法が使えないのじゃ不便じゃないの〜?』
『そんな事は無いさ。失礼な言い方だけど、この世界より文明は先を行っている、魔力が無くても科学が発達している分 色々と魔道具には無い機械もあるしな』
徐ろにバックからスマホを取り出し二人に見せる。
『コレは一体なんなの〜?』
『コレは俺の世界のモノだ』
スマホで二人”パチリ”そしてその場で今写した画像を見せる……二人とも固まっている。
『ちょっと〜コレ私の知る魔道具より凄いじゃないの〜!』
『こんなの初めて見た!』
そしてこの世界に来てから写したモノをスライドして二人に見せる。
『ちょっと〜エルフが大勢映っているじゃないの〜』
『ヴォルフの小さい時……かわいい』
『あっ!』
あっ!ヤベ
『アスラく〜ん、今のちょっと見せて〜?』
『いや今のは無しで』
『姫様映っていた!』
ドキッ!
『そ〜よ〜今のどう見てもユーリア様よね〜?アスラ君、ユーリア様とどう言う関係なの〜?』
『…………』
『アスラ!白状する!』
はぁ〜この二人には敵わないな……正直白状するか。
『仕方ないなぁ〜絶対誰にも言うなよ?俺たち付き合っているんだ』
「「ハァ?」」
『ちょ!二人とも声出てるって!』
『ちょっと〜詳しく聞かせなさいよ〜?』ワクワク
結局二人には出会いから付き合い出した所まで白状させられた。
しかし女の人って どうして人の恋話が好きなんでしょう?やっぱオウガ達の事は黙っておこう。
『へ〜王族公認なんだ〜アスラ君やるわね〜』
『アスラ!姫様とは、どこまでの関係?』
『ハァ?何聞いてんの?そんなの言えません!』
「チッ」
『アスラ君の元いた世界の道具は凄いわね〜他には何があるの〜?』
『そうだな〜』
俺が此方の世界については興味あるようにマリーさんポアンは彼方の世界に凄く興味があるようだ。
まぁこれで話もお終いは可哀想なので色々話してあげた。マリーさんは特に飛行機に興味深々のようだ。
『アスラ君の元いた世界って凄いわね〜そのひこうきって言う乗り物で自由に空を飛べるなんて素敵だわ〜』
『ハァ?何言ってんの?そんなの魔法でピューって飛べばイイじゃん!俺なんかいつも飛んでるぞピューって』
『アスラ君は自分の能力で飛べるかも知れないけど〜魔法で空を飛べる訳ないでしょ〜浮遊は出来ても飛行は無理なの〜』
『エッ?マジで?』
『本当の話』
『アレ……?』
確か前にエロイに飛行していた事を言われたような記憶があるな……
『アスラく〜ん。他にも何か隠しているんじゃないの〜?』
『エッ!』
『アッシュバーン!』
『……』
『アッシュバーンってアスラ君の事じゃないの〜?』ジー…
『アスラ!白状する!』ジー…
『ハハやっぱバレました。ハイ俺です!アッシュバーンの正体は正しく俺です』
俺って隠し事は向いてないのかな……
『でもアッシュバーンがアスラ君で良かったわ〜。あの時あのバカが魔族とか言い出すもんだから〜一瞬 肝を冷やしたのよ〜』
『バカが悪い!』
『あのヤローか魔族なんて言い出したのは!ゲーハーでは魔族なんて言われなかったからなぁ』
『でもアスラ君のお陰で皆んな無事よ〜本当にありがとうね〜』
『アスラのお陰!死人無し!』
『ハハそりゃどうも』
『所でアスラ君。ルチハちゃんやシャルちゃんにはアスラ君が異世界人だと伝えているの〜?』
『いや伝えていない。あの二人に限って口を漏らす事は無いと思うけど、どこで情報がバレてアノ二人が狙われるか分からないからな、だから目立つ行動をする時は俺ってバレないよう変装を心掛けている』
『そうね〜そうよね〜世の中には善人ばかりじょないものね〜』
『悪い奴多過ぎる!』
『俺が異世界人だと知っているのは王宮の一部だけだぜ』
マナの森のエルフもだけど。
『それとアスラ君、貴方の元いた世界って〜魔力も魔法もないのでしょ〜?貴方の能力は一体何なの〜魔法じゃないの〜?』
『さっきも言ったけど元の世界では魔法は使えない。俺の力は元の世界から引き継いだ”超能力”と言う能力なんだ。俺もこの世界で実感したけど魔法と俺の力は異なるモノだと思う』
『魔力無しで使える力……凄い!』
『ホントね〜魔力も呪文も無しで使えるなんて〜隠せるものなら隠してる方がいいわね〜』
『あっ!それと魔力が無く魔法が使えないのは俺だけで召喚された勇者達は使えると思うし、強力なスキルなんかも持っている可能性大だ。だから警戒をしつつ関わらない方が良いかもな』
『分かったわ〜勇者には関わらないように心掛けるわ〜』
『近づかない!』
『最後にアスラ君に聞きたい事があるのだけど〜』
『ん?なんだ?』
『貴方が、どうやってこの世界に来たのかと〜目的を話して〜?』
『それが一番気になる!』
『どうやって来たかと聞かれると、ある人物に連れて来てもらった……目的と言われたら……』
『アスラ君貴方!もしかしたら〜伝説の賢者で悪い勇者を討伐に来たのね〜?』
『アスラは伝説の賢者!』
『いやいや違うって!何都合のいい解釈をしてるんだ!俺はこの世界で楽しく旅をしながら色々見て回る為にやって来たんだ!異世界ライフを満喫する為に来たんだって!』
「「エエーッ!!」」
二人には悪いが勇者討伐なんて とんでもない!命がいくつあっても足らないつーの。
降りかかる火の粉は払うけど自分から危険に飛び込む勇気は無いって!
世界を救うのは本当の勇者に任せればいいんだから。
そうでしょ神さま〜貴方は俺に勇者討伐の為にこの世界に連れて来たんじゃないでしょ〜この世界を存分に楽しめって言ったよね〜神さま〜。
『……』