裏路地
振り返ればゲーハー国で知り合った獣人7人組。
「おっ!オウガ達じゃないか!久しぶり!」
「お前、アシュラか!?」
「そうだぜ、何言ってんだ?」
そう言えば、こいつらにはアシュラって名乗っていたな。
「ほら大将、やっぱり綿菓子屋じゃネーですか」
「そうだな前に会った時は髪の色が緑だったから他人だと思ったゾ?」
「あ〜アノ時は髪の色を染めてたからなハハ」
それもすっかり忘れてた。
「それでアシュラはイツこっちへ来たんだ?」
「今日着いたばっかりだぜ」
「観光か?」
「いや ちょっとした仕事だ」
「フム、てっきり近々行われる闘技大会に出場しに来たのかと思ったゾ?」
「いやいや出ないって、観る方が楽しいじゃん」
「そうか?」
「大将、あんちゃん、こんな所で立ち話もなんだから飯屋にでも行きやしょーや」
「そうだな、アシュラ今からオレ達は昼食を食べに行くが一緒に行かないか?」
「おっ!イイね〜丁度俺も昼に何食べようか迷っていたとこだ」
都合のイイ事にオウガ達も昼食らしい、何を食うか迷うより地元の人に付いて行くのが一番だからね、同行させてもらうことにした。
付いて行った店はファミレスじゃなく大衆的な食事処でした。この世界には残念ながらファミレスはありません!いやまだ見たことが無いのが正解かな?もしかしたら有るかも、なんてね。
食事処へ行き改めてオウガ達から自己紹介をされた……そう言えばオウガ以外のメンバーの名前を聞いてないや。
聞いても忘れそうだからモブキャラ1とか2とかでもいいんだけどね。
俺のことを”あんちゃん”と呼ぶ犬人族のクッチョロ。
腕相撲の審判をしていた、これまた犬人族のワイズ。
そして腕相撲の初戦で対戦した兎人族のコニー。
2回戦で対戦した狸人族のラグー。
3回戦で対戦した猪人族のホッグ。
4回戦で対戦した熊人族のブリッド。
そして大将の虎人族のオウガだ。
こいつらに闘技大会には出場するのかと聞いてみた所、クッチョロとワイズ以外は出場するとか、オウガにしつこく”アシュラも出場しろ”と何度も言われたけど、仕事に差し支えあると丁重に断った。
オウガにはハッキリ断ったんだけど今度は”ジャア訓練の手合わせをしてくれ”って言うもんだから”暇があったらな”と返してやれば一応納得した様子だ。
暇があっても相手はしないけど。
正直言うと武闘派の獣人と闘いたく無い!襲われたら応戦はするけど自分から敢えて闘おうとは思わ無いな……だって人族と違って元々の身体能力が桁違いに高い上に動きが読め無い!
それに武器を失っても自らの爪や牙といった武器が存在する……ハッキリ言って怖い!
食事を食べながらオウガに獣人の国で案内が必要な時はいつでも言ってくれと言われ、毎日ココ食事処で昼食と夕食は食べてるからと 用がある時にはココで待ち合わせと言う事になった。
仕事については敢えて聞かれなかったけど多分ん何処かで綿菓子の露店でもやると思われてるのだろう。
まぁ聞かれても誤魔化すけど一応姫様の病気の事はゲパルドさんにも公には公表してないと聞いてたし、まぁ国の民に心配掛けない措置だろうね。
その事で胡散臭い商人やら医術師 薬術師とか現れそうだしな……。
食事も終わり オウガ達から近い内にまた会おうと約束され、その場から別れた。
そして再び獣都の街を散歩開始だ!獣都の街も人の街と変わらず賑わっている、基本俺が訪れる国とか町とかは治安が良いみたいだね。
まぁ敢えて裏路地とかは行かないけど、行ったらお約束の展開になりそうだし、体質的にトラブルに巻き込まれるからね。
◇ ◇ ◇
その頃獣都の裏路地の一角で怪しい身なりの商人風の男数名が何やら密談をしていた。
「おい!例の物は手筈通り到着するんだろーな!」
「手筈通りでゲス」
「しかし親分 またアノ五年前の事が起きないでしょーか?」
「ハン!大丈夫だ!仮に起きても、今回は闘技大会が行われる。各国からも優勝目指して強豪ばかり集まるだろう。そいつらがなんとかするだろうよクク」
「なるほど〜それで例の物を闘技大会中に運ばす訳デスね」
「そうよ如何に竜とは言え強豪ばかりの精鋭の前じゃ なす術もないだろうな」
「その後 城に高い値で売り付けるって寸法っスね」
「それで例の情報は確かなんだろうな?」
「まちげーネーです。王女は重い病気に掛かっているらしく日に日に痩せコケてるらしいっス」
「例の物が卵とはいえ竜の卵、万能薬の素材になる筈だ。前回はアノ騒動で割れて使い物には成らなかったからな、どのみちヴァルトリアではもう使えネー王女も治るし今じゃ得意先のダマスー商会もネーからな」
「ちげえネーっスね」
「卵が売れりゃ俺たちは数年遊んで暮らせるからな、それに多少被害が出ても王女の病気が治りゃ安いもんよアッハッハ」
「親分のゆーとおりっス!」
「ゲヘゲヘ」「グフフ」「フヒヒ」
「アッハッハ」
◇ ◇ ◇
今日でベスティア獣国へ来て一週間は経った。リオンヌ王女の体調の経過も良く日に日に元の姿に戻りつつある。
食事もそうだが俺のヒーリングで効果を促せてる お陰だろう。
しかし未だ婚約者の情報は一切入らない!城に居る者達にさり気なく問うてみるものの全員知らない聞いたことが無いの返事ばかり。
う〜ん さてどうしたものか……最終手段で獣王様に直接聞いてみるか?いやダメだ……機嫌を損ねて鉄拳制裁なんか喰らうのは嫌だなぁ〜。
そんな事を考えていたら
「どうしたんだいアスラ君 そんな浮かない顔をして?」
「いや何でもないよ」
気付けば姫様の兄貴が目の前に居た。
「何か悩み事でもあるのかい?リオンヌの治療が捗らないとか?」
「いや姫様の治療は順調さ」
「そうかい、それにしては浮かない顔だね」
そう言えば兄貴には姫様の事 聞いてなかったな……どうする?聞くか?
行き成りバーサクモードにならないよな?確か戦闘中に成るとか言ってたし。
「なぁレオン王子、ここだけの話で聞きたい事があるんだけど」
「ん?秘密の相談事かい?」
「約束は守れるか?」
「話の内容によるけどね。君が最近城内で聞きまくってる事かな?」
あらま!兄貴にはバレてるじゃん。
じゅあ話は早い。
「なんだ知ってたのか、その事なんだけど何か心当たりはあるか?」
「どう言う目的で、それを調べているのかは知らないけど リオンヌの病気の原因の一つだとしたら話そう」
「察しがいいな、教えくれ」
「フフ リオンヌには許婚も婚約者も居ないさ」
「本当か?」
「本当の事さ、私の知る範囲ではね。もし仮にそんな奴が居たら私がリオンヌに相応しい相手か確かめる」ニヤ
なんか急に目つきがギラついたんですが……確かめるってアレだよな……怖!
ユーリアの兄貴がこんな奴じゃなくて良かった!逆に応援してくれてるからね。
兄貴も知らないと言っている……やはり獣王様に聞くしかないのかぁ?余り聞きたくないなぁ……聞いて逆鱗に触れなければいいんだけど……首を突っ込んだからには仕方ない、聞くか。
獣王様のトコへ姫様の病気の事で話があると言う名目で行った訳なんだけど……やっぱ怖〜
「アスラ、リオンヌの病気の事でワシに話があると言うが どんな話なのだ?」
「獣王様には既に姫様の病気に関して伝わってると思うけど、根本的な原因までは話してなかったからな」
「ワシの元にきた報告では精神的ストレスによる拒食症だと聞いたぞ。何に対して精神が病んでいるのかは知らんがな?」
「その事なんだけど、ぶっちゃけ話すけど行き成り殴り掛かって来るなよ?」
「何故ワシがお主に殴り掛かる?ワシはそんな野蛮な王などではない!」
「ホントか〜?じゃあ話すぞ」
俺は今回 姫様が何に対して悩み心を痛め拒食症になったのか獣王様に解りやすく説明をした。
終始静かに聞いている獣王様、話を聞いている途中何かを思い出したのか目を閉じ最後まで俺の話を静かに聞いていた。
「ふむ……その様な理由でリオンヌは悩んでいたのか……」
「で、どうなんだ本当の事は?許婚とか婚約者は居るのか?」
「その様な者は居らん!!!」
「エェッ!!!」
エエエエエエエーッ!!!何だってエエエエエエエーッ!!!
リオンヌの悩みとか俺の苦労は一体何だったんだああああ!?