アスラ先生の診断
只今謁見の真っ只中 何事もありませんように。
「ほぅ 其の方がヴァルトリアの王女を治した医術師か?名は何と申す?」
「アスラ」
ゲパルドさん、医術師じゃないって言ったのに……あ〜訂正するのも面倒だし、もう医術師でいいか。
しかしこの王様…ライオンじゃん!王様と言うより獣王だねメチャ強そう。
それに横に控えているのは息子だろうね、目がギラついてるよ怖!
ランバー国の時みたいな事はありませんように。
「ほぅアスラと申すか。人族の割には中々良い目をしておるな」
ワシからの威圧に対しても視線を逸らさず堂々としておる。
「そりゃどうも」
「貴様!王に向かって何たる口の聞き方か!」
「どこ行ってもこんな感じだから今更取り繕ってもね」
行き成り息子に怒鳴られたよ!あー怖!獣王の方はニヤっとしてる、まぁ丁寧に喋ってもボロがでるからね。
「貴様!」
「気に入らないなら帰るだけだ。別にアンタに恩も義理もないしな」
「グヌヌゥ」
「フハハハ!其の方、中々面白い男ジャ!ワシを前にして堂々としておるとは気に入った!ワシに対して取り繕う必要は無い!」
「そりゃ有難い、来て早々帰らずにすんだよ。所で獣王様 早速だけど姫様の容態を診させてもらってもいいか?」
「構わん!レオン案内して差し上げろ」
ワシの事を獣王様だと!中々面白い事を言う奴ジャ!
「分かりました父上」
獣王様と別れ息子のレオンに姫様のトコへ案内してもらう事になった。
「おい!アスラ…」
「ん?どうしたレオン王子?」
「余りヒヤヒヤさせないでくれ」
「えっ!?」
アレ?王子さん急に口調が変わったよ?
「あの時 私が強気に口出ししなかったら……父上は自分の道理に反する者に対して平気で鉄拳制裁をする人なんだ」
「あの〜もしかして王子さんって、普段そんな口調?」
「あーそうだよ、あの人の前では口調も態度も多少は変えてる」
「なるほどね〜獣王様って、そんなに狂暴なのか?」
「獣王様か…フフ、普段はとても誰に対しても優しい王だけど、一旦ヘソを曲げた途端 力こそ我が正義と変貌する人だからね。今回は偶々君を気に入ったようだから良かったけど。一旦暴れ出すと手がつけられない人なんだよ」
キレる前にキレろ作戦?それとも、人のふり見て我がふり直せ作戦?自分はこうじゃないって言うのを敢えて見せてる訳?んーよく分からん!
「ここが妹リオンヌの部屋だよ」
レオン王子に妹リオンヌの部屋まで案内されて来て見れば、3人姉妹が既に待機しレオン王子に敬礼している。
アレ?2人増えてる……
「レオン王子様、アスラ殿お待ちしておりましたニャ」
「あぁ私はアスラ君を案内しただけだから、畏まらなくていいよ」
「いえ!そういう訳には…」
「じゃあ私は行くから、アスラ君 妹を宜しく頼む!」
「あ〜分かった」
案内が終わり早々にその場から立ち去ったよ。
「所でエーナさん」
「何ニャ?」
「そちらの2人は?」
「妹ニャ!」
「初めましてディーナですニャ」
「初めまして私イーナですニャ」
「は、初めましてアスラです……」
ですよね〜妹って聞いた瞬間直ぐに名前が浮かびましたよ!
ABCDEそのままじゃん!DナとEナは語尾にしっかり”ニャ”が付いてますニャ!
「そう言えばレオン王子が言ってたけど獣王様って、暴れたら手がつけられないって本当の事?」
「獣王様?アスラ殿は王様に対して面白い表現をされるのですね……レオン王子様が仰られた事ですが、以前はそうでしたけど、五年前のアル出来事から その様な事はメッキリ減りましたね。どちらかと言うとレオン王子様の方が普段は大人しいのですが、こと戦闘に成られた時 手がつけられないですね。戦闘中は意識が飛んでる様な素振りに見えます」
「へ〜そうなんだ」
なんとまー五年前のアル出来事が何か知らないけど、似たもの親子なんだね。しかも戦闘中意識が飛んでるとか、それってトランス状態とかバーサクモードとかじゃないの?怖!
って、そんな事を話してる場合じゃないよな、姫様の治療をしないとダメだ。
「今から姫様の容態を診てもいいかな?」
「分かりましたニャ。少し待つニャ!リオンヌ様に伺って来ますニャ」
エーナさんが部屋をノックし姫様の部屋へ入って行く……さてと上手く診察させてくれるかな?まぁ診察と言っても医者じゃないけど。
待つこと数分 扉が開きエーナさんが手招きをしている……コレがホントの招き猫……うあああああ〜親父ギャグだ!
「入りますよ〜」
「どうぞ お入りになって……」
「失礼しま〜す」
中へ入ると椅子に腰掛けニッコリ微笑む妹リオンヌ……しかし症状を一切聞いていなかったが……なんじゃこりゃ!ガリガリじゃないの?
「どうぞお掛けになって」
「はぁでは。初めましてアスラです」
「初めましてアスラ先生、私はリオンヌです」
「あの〜リオンヌさん、付かぬ事を伺いますが、ちゃんと食事摂ってます?」
「すみません先生、余り食事が喉を通らなくて……」
「そうですか……」
コレ拒食症だよね?だってガリガリに痩せている以外どこも悪そうに見えない……さてどうしたものか……拒食症の原因と言ったら色々あるけれど、一般的にはストレスとかだよね?
多分俺のヒーリングじゃ治らないと思う……サイコセラピーなら……ダメだ、恐らく一時凌ぎで再発するかも……。
「アスラ先生どうかされましたか?」
「先生は、付けなくていいよ、呼び捨てでも構わないよ」
「いえ折角私の為に遠くからお越しになった方を呼び捨てなんて出来ません。それにアスラ先生には申し訳ないのですけど身体が治らなくても何ら問題もありませんので」
「リオンヌ様!そんな事を言わないで下さいニャ!昔のように元気になって欲しいニャ!」
「ごめんなさいエーナ……」
コレ完全に拒食症だな、自ら心に病を患わせている……思考を読んで心の病の原因でも調べようか……どうしよう。
「リオンヌ様!アスラ殿に任せて病気を治しましょうニャ!もう直ぐリオンヌ様が毎年楽しみにしている闘技大会も開催されるニャ!」
「やめてエーナ!」
「それにリオンヌ様の誕生日も近いニャ!」
「やめて!出ていって!今直ぐ出ていって!」
なんだ?さっきまで大人しく微笑んでいたのに急に大声だして……
「わ、分かりましたニャ、ご用の時はお呼び下さいニャ」
「アスラ先生も部屋から出ていって下さい」
「なぁ姫様、何を心に抱えてるんだ?」
「エッ!……何故それを?」
「そんなもん見たら直ぐに分かるよ。今まで来た医術師の先生がどんな診察をしたのかは知らんけど、姫様の病気は自ら心に何かを抱えて拒食症になってる、いや自ら食事を摂らないで病の振りをしてるんじゃないの?」
こんなの思考読まなくても分かりやすいって、さっきのエーナさんの”闘技大会”と”誕生日”の言葉に過剰に反応していたからね。