時間の許す限り
◇ ◇ ◇
翌日
今日のイナリ先生は、お休み。
まぁ粗方王都の妊婦さんは往診したしね、今日は城へ行ってユーリアに会う予定、予定のついでに王様と王妃様に相談を聞いて貰おうと思っている。
ルチハとシャルには、ちゃんと城へ行く事は伝えた。
急にいなくなる訳ではないけど一応伝えとかないと心配するからね。
そしていつものように城の門番に声を掛け、そのまま王宮へ次に侍女さんの案内でユーリアの元へ……アレ?ここはユーリアの部屋じゃないぞ?
もしかしたら今は都合が悪いのか?城へ来るとは伝えたけど時間まで伝えなかったのは失敗だったか?
「アスラ様をお連れしました」
「お通ししろ」
何か勝手なやり取りで知らない部屋へ案内されたんだけど?
入って見ると王様筆頭に王子、宰相、近衛隊長、爺さん、そして知らないお客さん。アレ?ケモミミ…獣人?…凄く睨ま…いや品定めの目だなコレは……
「アスラ殿良く来てくれた」
「はぁ」
「陛下、こちらの方は?」
「先程話をした娘ユーリアを治療した者だ」
「ご冗談を!こちらの方は、どう見ても唯の少年ではないですか?」
「余は冗談など言った憶えが無いが…」
「まさか!こんな少年がユーリア王女を治療したなどと!?」
「あの〜話が全く見えないんだけど?」
「おー済まぬアスラ殿!取り敢えず腰を掛けてくれ!」
「陛下、ワシから小僧に説明しますじゃ」
「うむ」
「小僧、こちらに居られる方は獣人の国ベスティアより来られた使者の方じゃ」
「ベスティアより使者として参上したゲパルドです。医術師アスラ殿にお会いでき光栄です」
「はぁ…一応俺はアスラだ。でも別に期待を裏切る訳じゃないけど医術師じゃないぞ」
「エッ!?」
「王様達と何を話したのか知らんけど、俺は医術師なんかじゃないぞ」
ハッキリ言っとかないと後々面倒だからな。
「エッ!ではユーリア王女を治療したのは嘘?治療しただけ?完治させたのは別の医術師!?」
「ゲパルドさんだっけ?何か勘違いしているようだから、ちゃんと言うけど俺は医術師じゃない!でも お姫様を治療して完治させたのは俺!解った?」
ホッ「なるほどー!そう言う事なのですね」
「誤解も解けたようじゃ。小僧、こちらのゲパルド殿がお主に用があるそうじゃ」
「え?爺さんの説明ってそれだけ?後は当人から聞けって?」
何だよそれ、じゃあ説明とか言うなよな。
「ワシらは、小僧とゲパルド殿の顔つなぎのようなモノじゃ」
「で、ゲパルドさん話って?」
はいはい分かりました。
「はい、率直に申し上げますと、姫様の治療をお願いしたい所存であります!」
出た出た流れ的にそんな感じは したんだよね。
なんでも獣人の国ベスティア獣国の王女様が昨年あたりから不治の病を患ったらしく、国の医術師関係者が総出で治療に当たったが、その病気から治らなかったようだ…。
そして近隣諸国にまで病気を治せる医術師を国に招き入れたようだが、悉く撃沈して帰って行ったとか…。
どうしたモノかと頭を悩ませても王女様の病気は悪化するばかり……そこで風の噂でヴァルトリアの治療不可能の王女様を見事完治させた医術師がいると!
「誰だ?そんなデタラメな噂を流す奴は?そもそも俺が居なくてもエリクサーがあれば お姫様は治ったって!」
「「「そこかいっ!」」」
「小僧!思わずワシまで突っ込んでしもーたじゃないか!」
「現段階でエリクサーは無理です。素材が集まり切らないでしょう」
「アスラ君どうだろう?ユーリアを完治させた君ならベスティアの王女を治療できるんじゃないかい?」
「多分大丈夫だと思うけど…」
「アスラ殿!お願いします。姫を姫様の病気を治して下さい!」
「姫の病気か……余も他人事ではなかったからなアスラ殿、ベスティアの王女の治療できぬか?」
さてと、病気なら恐らく俺のヒーリングで治せるだろう……ただ問題はそこじゃないんだよなぁ〜一応聞いて見よう。
「王様一つ聞いてイイ?」
「どうしたアスラ殿?」
「因みにベスティアまで転移魔方陣なんかは?」
無いよな〜あって欲しいな〜
「うむ、アスラ殿には申し訳無いが勿論無い!」
「はぁ〜やっぱり」
ですよね〜そうなると徒歩…は、無いか!馬車だよね、馬車だとどれ位でベスティア獣国まで掛かるんだろう?
「あのさぁゲパルドさん、ここからその獣人の国ベスティア獣国までどれ位で到着できそうかな?」
「ここヴァルトリアからですと通常馬車で3カ月程です、速馬を用い道中何も無ければ多少は短縮すると思います」
さてどうしようかな〜折角頑張ってヴァルトリアに戻って来たのに、また急に他所へと……ホント俺って巻き込まれ体質なんだな……話を聞いた以上無視も出来ないし……一応我が家へ帰ってルチハとシャルに伝えてみるか……
「そちらの事情は理解したけど、ハイそうですかと返事は出せない。だから返事は明日でもイイかな?」
「分かりました。良い返事を期待しております」
◇ ◇ ◇
部屋を出て今度こそユーリアの元へ!
「どうぞ」
「失礼しまーす」
リリさんに姫様がお待ちでしたよ。ごゆっくりどうぞとか言われちゃったよ。
「アスラ様、お待ちしておりました」
「ごめん待たせたかな」
「いえリリから多少は話を聞きましたので。何でも急にお父様の所へと?」
「あ〜内容までは聞いてないんだ。さっき王様から呼ばれた話なんだけど――――」
もしかしたらまた王都を離れないといけないかも知れないのでユーリアには最初に伝えておこうと思った。
「そう言う事情だったのですね。アスラ様は勿論行かれるのでしょう」ニコ
「んー少し悩んでるけど……でもどうしてユーリアは、そんなに笑顔なんだ?」
「アスラ様は私の時と同じで 困っている方が居る様でしたら、救いの手を必ず差し伸べる方ですから」
「いやそこまで俺は善人じゃないんだけどハハ」
「私は知っております。貴方の優しさを……だからせめて今だけは時間の許す限り一緒にいて下さい!」
あらら押し倒される勢いで抱き付かれちゃったよ……そうだなユーリアの言う通り時間の許す限り一緒に居よう。
この前も色々語りあったけど、話は尽きないね。王都に帰って来てからの話とか俺の元いた世界の話とか色々語りあった。
でもこう言う時って時間が経つの速いね、もう帰らないと妹達が心配する時間だし、でも仕方ない帰ろう。
「ユーリア、明日ベスティアの使者に返事を出しに城へ来る!その時にまた会おう!」
「はい!学園から帰って来た時にアスラ様が居られるのを楽しみにしております」
「じゃあまたな!」
お城を出てダッシュで我が家へ帰る!人の目があるから瞬間移動はできません!イイ運動になったと思いながら我が家へ到着!
夕方っていうのも有って喫茶店は閉まってる!そう言えば 店の名前は何だろう?
「ただいまー!」
「「お帰りなさいー!」」
「ウォンウォン」
我が家へ帰りルチハの作ってくれた夕食を食べた後に今日城で起きた事をルチハとシャルに話した。
話を聞いたルチハは少し困惑した表情をしていたが最終的にユーリアと同じ様に笑顔で応えてくれた。
「アスラお兄ちゃん、王女様を治してあげて」
「また離れ離れになるけど いいのか?」
「うん大丈夫だよ」
「お前達さえ良かったら一緒に行くか?獣人の国だし?」
「…今はココが私達の家だから、この家で待ってる」
「シャルもアシュラにぃに ついて行きたいけど、まってるー」
「そうか分かった…」
そうだな獣人の国って行ってもルチハ達の住んでた村は獣都から離れた山だと聞いた。
それに戻ったとして魔獣に襲われた状態で…最悪の被害の結果を知る事になるかも…いやすでにルチハは知っているのかも……
「分かった!俺もベスティアに到着出来れば、瞬間移動でいつでも行き来できるから、故郷へ帰りたくなったらいつでも言えよ」
「「うん」」
二人と一匹には明日城へ返事の報告へ行き明後日には出発する事を告げた。最悪明日は帰らずそのまま行くかも知れない事も告げた。
そしてお約束の就寝タイム!二人と一匹が俺を挟んで一緒に寝て来る!まったく甘えん坊な妹なんだから……だからルチハさん!くっ付きすぎだって!
仕方ない、ルチハもシャルも…ヴォルフもだな、こいつらも時間が許す限り俺と一緒にいたいだ……