本物vs偽物
《勝負始め!!!》
ワー! ワー! ワー!
さてと勝負は開始したけどデブは、ちゃんと治療しているのかな?ふむふむ一応は治療しているようだ。
しかし双方50人ずつの患者さんと言っても、彼方は軽傷者の患者さんばかりじゃねーの?ホントやってくれるね、こっちは予想通り重傷者ばかりだし。
ワー! ワー! ワー!
「どうですか?彼方の様子は?」
「今のところ動きは、ねーでやす。イナリ様に恐れをなして動けないのと ちゃいますか?」
「では私は、引き続き治療に専念しますので様子を伺っていて下さいね」
「はいでやす!」
ワー! ワー! ワー!
「あの〜猫のイナリ先生…治療は、されないのですか?」
本当に この人、英雄イナリなのか?余所見をして治療をしてくれない…あっちが本物でこっちは偽物か…ハァ
「あースマン、あっちの様子が少し気になって余所見してた!今から治療するよ!」
「イナリ先生お願いします…」
本当に治療してくれるのかな?この人…
取り敢えず一気に治療しますかね。
ワー! ワー! ワー!
「軽症とは言え50名もの患者を治療するには時間も掛かる上 魔力も相当消費しますね、後40名程ですか」
魔力回復薬で補給しましょう。
「イナリ様!奴に動きがあります!」
「ん?どのような様子ですか?」
「患者を自分の周りに一塊にしてやす!まさか複数を治療する気じゃ!?」
「ふふふ!複数を治療?ふふふ!複数を回復魔法で治療することなど聞いた事がありませんね、諦めて患者に言い訳をしているのでしょう!」ニヤニヤ
勝ちましたね!ふふふ
ワー! ワー! ワー!
ちまちま一人ずつ治療なんか面倒だからね、一気に全員やっちまおう!出来るかな?まぁチャレンジあるのみ!
「偉大なる癒しの女神様!この者達を癒したまえー!!!」
ワー…ザワ ワー…ザワ…ザワ
アスラが患者に呪文を唱えた瞬間、ここ野外広場に集まった人達が一瞬静まり返り息を呑んだ!
アスラを中心に淡い光がアスラが担当した患者を優しく包み込む!
その光景は以前アマゾーン国でクレアが呟いた一言、女神の降臨した光景かと見間違えるモノだった。
その優しい淡い光を観ている観客には天を仰ぐ者 手を合わせ拝む者 薄っすらと涙を浮かべ泣いている者までいた…
アスラの詠唱後次々と病を患っている者は完治し怪我をしている者は傷が塞がり治り出す、一部四肢を欠損していた者まで居たのだが見る見る内に再生していくではないか!
そして全ての患者を完治させた!
シ――――――――――――――――――ン
「治ってる…」「お、おれもだ!」
「私もカラダが…」「本当に治ってる」
「魔獣に食い千切られた腕が生えた!」
「あー俺も間近で再生してるの見たぞ!」
「こっちのイナリ先生が本物だ!」
「本物の英雄イナリ様だ!」
ウオオオオオオオオオオ!!!
イナリ様だ! 本物だ!
ワー! 英雄イナリ様だ! ワー!
「イナリ様!大変です!」
「何事ですか!この騒ぎは!?」
「奴が!猫面の奴が50人全員を一気に治しやした!」
「なっ!そんなバカな事がありますか!?」
「しかし観客が奴を英雄イナリと!騒いでいやす!」
「バ、バカな!あり得ない!複数を回復出来ることなどあり得ないのですよ!」
元患者と観客が騒ぎウルサイけどデブのトコへ行って負けを認めさすか。
「イナリ!」
「ようアル!見てたか?一気に治したぞ」
「イナリ!お前は一体何者何だ?俺は夢でも見てるのか?」
「アルしっかりしてくれよ〜現実だって!少し癒しの能力に長けてるだけだよ」ニー!
「そ、そうか?」
癒しの能力に長けてるだけって!そんなレベルじゃないぞこれ?コ、コイツ実は神なのか?
「そんな事より偽物のトコへ行こうぜ」ニー
「そうだな偽イナリに引導を渡してやろう」ニヤ
「おい偽物!お前の負けだな」
「な、何を言うのですか!事前に何か小細工しましたね?でなければ複数の患者を一気に完治さす事など出来ないハズ!」
「そうだテメー!インチキしやがったな!」
「そうだそうだ!事前に全員健康な者揃えたな!」
「コノヤローテメーは、詐欺師か!」
「そうだぞ卑怯だぞテメー!!!」
「何言ってんだ?それは お前らだろ?重傷者ばかりこっちに寄越して!バッカじゃ無いの?(っと言うか最上位の回復魔法なら複数回復出来るだろ。ったく)」
「はん!そうだな、英雄イナリのクセに病人一人も治療出来無いなんてな詐欺師そのものだ!」
「ぐぬぬ!私を詐欺師呼ばわりしましたね!許しませんよ!皆さん、やってしまいなさい!」
「「「「うおおおおおおお!!!」」」」
「アル!俺に任せろ!」
「おう!」
その日 ここ野外広場に集まった人々は二度目の息を呑む光景を目にした!
瞬時に懐から取り出したメリケンサックを装備したアスラは、取り巻き達の振り回す剣などモノともせず、その剣目掛けメリケンサックを叩き込む! ”ガキィン” 怯んだ男達に臆する事無く立ち向かう姿に!まるで演舞を舞っているかな様な、闘う その光景に!次々に観ている人々の目に焼き付いた!
バタ! バタ! バタ! バタ!
「最後は、お前だけだぜ偽物!」
「あ、貴方は一体何者なのだ!?」
「だから言っただろ?本物のイナリだって」
「ぐぬぬ!喰らえー!」バッ!
「喰らうのは お前な!」シュ!
”ガンッ” 脳天に踵落とし!ハイ終了!
「グェ」
バタン
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
「凄いな、イナリの活躍でここまで民が一体となり喜んでる姿を見るのは?」
「歓声で地響きしてるよコレ!アルどうするコイツら?」
「取り敢えず牢にでもブチ込んで素性を調べてみるか」
「任せた」
「おう!」
偽物英雄イナリ一行は、アルフが野外広場を巡回している兵士達を呼び連行して行った。
やっぱり兵士には事前に王子と伝えてあったみたいだね、仮面を取らなくても兵士達は敬礼して言う事聞いていたしね。
「イナリ、偽物の仮面と所持品はどうする?」
「興味無いから要らね〜偽物の顔見ても仕方ないじゃん」
一応透視で見たし、唯のデブ顔だったよ。
「そうか、解った!解ったけど、この騒ぎどうするよ?」
そうなんだよな…俺が偽物を倒して本物だと解った途端凄く周りが騒ぎ出したんだよな、目立た無いよう努力しても目立つんだよね、まぁ全て自分が蒔いた種なんだけど。
この後 偽物に治療されていなかった人達が俺の所へやって来て治療をお願いされ別に断る事もせず治療をしていたら、屋台を出している人達から英雄イナリ様に!って差し入れしてもらったりと、お金を払うと言っても”英雄イナリ様から貰えません”って断られるし!
そんな光景を横で見ているアルフはウンウン頷きながら喜んでいる、残った人達を治療し終え引き上げようとしたら、更に噂を嗅ぎつけた人達(病人)が集まりだし結局アルフのお勧めケーキもブラッドの妹ポーラの様子も見に行けず観光も出来なくなったよ。
まぁいいか、野外広場に集まった人達の凄くイイ笑顔も見れた事だし、アルフがウンウン頷きながら喜ぶ気持ちが少しだけ理解出来るね、結果的に良い休日日和だったのかな?
後にランバー国から新たな”英雄イナリ”の詩が流行り出すのはアスラがこの地を去ってからである。