本物?偽物?
アルフと一緒に喧騒がする方へ近づき様子を伺う事に、何やら野郎5人組と二人の冒険者風の女性が言い合っている、そして彼女達後方の狐の面をしている人達を庇ってる…?
「だから誰の許可を得て その仮面をしてやがる!野次馬のテメーらもだ!」
「なんでアンタ達に そんな事言われないといけないのよ!」
「バカヤロークソアマ!さっきから言ってるだろ!こちらに居られる方が”英雄イナリ”様だ!イナリ様の許可を得ず狐の面をしている奴らは金を置いていけ!」
「嘘を吐くんじゃないわよー!アンタがイナリな訳ないでしょ?」
「そうですわ絶対違いますわ」
何となく状況は解った、あの5人組の狐面をしてる奴が英雄イナリで他の4人が取り巻きだな、そして自分の許可無しに狐面をしている者から金を巻き上げてるんだ。
「ナリ、あいつが本物の英雄イナリなのか?」
「んな訳ないだろ?俺はあんなに太って無い!」
「だよな、しかしアノ冒険者の姉ちゃん威勢がいいな」
「そうだな」
あれ?あの娘達どっかで見たような?気のせいかな…しかし親父とか姉ちゃんとか全然王族らしい喋り方じゃないな。
「よし!ここは俺に任せろ困っている民を救うのも俺の仕事だ」
「あー任せたぞアル」
まぁ本人の俺が行くのが間違い無いのだけど、ここはアルフに任せてみるか。
「お前達何をしている!弱いものを虐めてそんなに楽しいのか?」
「なんだ〜こいつ?」
「おい!赤面ヤローお前には関係ないから引っ込んでろ!」
「そうだ引っ込んでろ!それとも お前が無許可でイナリ様の面を真似て使用した代金を払ってくれるのか?」
「何で偽物に金を払わないといけないんだ?それに英雄イナリは、困っている庶民の味方だと聞くぞ?」
「テメー!英雄イナリ様に向かって偽物とは どう言う事だ?あん」
「俺の知る英雄イナリは、そんなにブクブク太って無い筈だ!」
「そうよ!私の知っているイナリは、こんなデブじゃないわ!」
「本当ですわ」
「テメー!イナリ様にデブとは失礼だぞ!」
「私はデブでは無いですよ、少しぽっちゃりしているだけですよ。そこの赤い面をしている貴方、何を根拠に私が偽物だと言っておられるのですか?」
「はん!俺は本物と知り合いだ!いや親友だ!」
「エッ!」
この赤面のお兄さんイナリと親友なの?
「私は、貴方と親友に成った覚えが無いのですけどね?」
「俺もデブと親友に成った覚えが無い!」
「本当に失礼な方ですね、貴方が言う本物のイナリは何処に居るのですか?」
「そうだそうだー!自分が本物だと言う奴前に出て来やがれー!」
シ―――――――――――――――――ン
「ホラ見なさい、誰も出てこないじゃないですか、私が本物のイナリだからですよ ふふふ」
「チッ!埒があかねーな、すまんイナリ!出て来てくれ」
「はぁ〜仕様がないな〜結局は俺が出ないとダメなのか?」
まぁ仕方ないかカスとは言え行き成り武力で力ずくはマズいよな多分?目立たないよう折角仮面を変え名まで変えたのに意味無いじゃん。
ザワ ザワ あれが本物か? ザワ ザワ
でも猫の面だよな ザワ ザワ
「オヤ?貴方は誰ですか?」
「あー俺か?俺は一応イナリだ」
「ふふふ 貴方がイナリ?」
「ブハッ!コイツが英雄イナリだってよ!」
「ギャハハハ!にいちゃん冗談は仮面だけにしてくれよ!」
「ハッハ!にいちゃん狐じゃなく猫だぜそれは!アッハッハ 」
「にいちゃん!名前がイナリだから出て来たのか?クク」
「コレは失礼しました、偶々私と同じ名前だったのですね 」
好き勝手言って…
「まぁアンタらが言うように英雄では無いけどな、アンタ偽物なんだろ?今なら許してやるから もう止めないか?」
「聞き捨てなりませんね、私は本物の英雄イナリですよ、なんでしたら私と勝負してみますか?ふふふ」ニヤニヤ
「勝負?」
まだ自分が本物だと言ってる、しかも勝負だと!何なのこのデブ?自分で英雄とか言ってるしバカじゃないの?
「テメー!イナリ様に怖気付いたか!ハッハッハ」
「そうだよな!猫のイナリじゃ勝負にならーな!ゲヘヘ」
「で、なんで勝負するんだ?5対1で闘えばいいのか?」
「ふふふ、そんな野蛮な勝負は、しませんよ。私と貴方で怪我人相手に回復魔法で勝負など どうでしょう?」
「怪我人に回復魔法勝負?」
「どうしますか?」
「ん〜魔法は苦手だけど、面白そうだな!お互い勝っても負けても怪我人が治るんならいいか!」
「決まりですね、ルールは後で説明しましょう。ふふふ」ニヤニヤ
「アル!どこか公園か広場なんかあるか?」
「あるぜ!首都の中心に野外広場がな!」
「じゃあそこで決まりだな!ここに集まっている皆んなも協力してくれ!怪我人や病人が居たら野外広場に集まるようにと!」
◇ ◇ ◇
俺の呼び掛けで、どれ位の怪我人病人が集まるのやら…勝負のスタートは午後12時!時間も3時間近くあるし野外広場まで移動してノンビリ待ちますか。
「イナリすまないな俺のケツを拭かせて」
「な〜に気にするな、元々俺が原因なんだからアルのせいじゃ無いさ」
「イナリさん?ですよね」
「そうだけど君達は?」
「やっぱりイナリさんだ!仮面は違うけど声がそうだもの!」
「私達はアマゾーン国から一緒に同行した冒険者です!余り会話とかしてなかったから…憶えてます?」
「アッ!どこかで会った事あると思ったら!あの時は男の冒険者を凄く睨んでいたから近づかないようにしてたんだ」
思い出した思い出した!とばっちりを食いそうだったから、敢えて避けてました。
「だってねーアイツらときたら幾ら頼まれたからってねー!」
「そうですわね〜」
「イナリ、何の話なんだ?」
「それは、これこれこういう事なんだ」
「ほう そんな事があったのか…」
「そっ!だから一緒に行動してたけど面識自体余り無い状態なんだ」
「あんな偽物に負けないで下さいね」
「わたくし達応援していますから!」
「あ〜多分負けないだろう」
◇ ◇ ◇
「サーギさん大丈夫なんすか?」
「何がです?」
「もし奴が本物のイナリだったら…」
「そ、そうですよ本物なら俺達ヤバイんじゃ?あの小僧やたら自信満々だったし…」
「大丈夫ですよ、彼は本物では有りませんよ。ふふふ」
「どうして分かるんですサーギさん?」
「私はね一度は別の国で宮廷魔導師を勤めていた事もあるんですよ」
「はい、それは知っていやす」
「魔法の他に、ある程度の鑑定もできるのです」
「鑑定?」
「そうです、鑑定です。彼を鑑定したところ魔力が殆ど無いじゃないですか!しかも仮面から見え隠れしている顔の傷!魔法が苦手とも言っていましたね!回復魔法が使えるなら治せる筈です!」
「なるほど!勝ちましたね!サーギさんの回復魔法は上位魔法!勝負あったな!ガハハ」
「ところでサーギさんルールは?」
「勿論敗者が身ぐるみを剥ぎ取られるのですよ、ふふふ」
「そりゃいいや!ガハハ」
「ついでに赤面ヤローの身ぐるみも!」
「ですが勝負は勝負!手は抜きませんよ、万が一を考えて魔力回復薬を用意しておきましょう!ふふふふふふふ」
◇ ◇ ◇
野外広場
時間も余裕があり、《本物イナリvs偽物イナリ》の噂が一瞬で拡散し一種のお祭りに!噂が噂を呼び普段静かな野外広場が屋台や対決の観客、そして治療の為訪れた怪我人病人やらで、本当にお祭りに成ってしまった!城から兵士も緊急で駆け付けてくれて、要らぬ騒ぎにならないよう野外広場を巡回してくれている、恐らくアルフの手配だろう。
「結構人 集まってるじゃん!お祭りみたい」
「余裕じゃねーかイナリ!」
「そりゃ相手は偽物だろ?本物が負ける訳ないじゃん!それに俺は勝負となったら手は抜かないし妥協もしないからな!」
「そうだな、俺達も一瞬で負けたからな!」
「さてと、どんなルールをブチ込んでくるんだろうな楽しみだ」
アルフと雑談しながら待っていたら奴らが現れて来たよ、勝負の始まりだな。
「おや怖気付いて逃げたと思っていましたよ、私を待っていたとは感心感心」
「あっそ!でルールは何だ?」
「今から私が指定するルールは私の部下がここへ集まっている人達に大声で発表させますが宜しいですか?」
「いいぜ、証人代わりにかるしな」
「では一つ敗者は仮面を外し素顔を晒す」
《敗者は仮面を外し素顔を晒す!》
ワー! ワー! ワー!
「敗者は全ての所持品を勝者に譲渡する」
《敗者は全ての所持品を勝者に譲渡する!》
ワー! ワー! ワー!
「以上です」
「解った!そんなんでいいのか?」
「そうですね、後で勝者が追加しても良いかもですね」
「そうだな」
さてとルールも決まったし後は怪我人病人の振り分けか、デブが部下に均等に振り分けさしますのでとか言っていたけど、どうせ俺には怪我人より病人が多い、いや病人全員と怪我の具合が悪い者を振り分けるんだろうね、カスの考えは丸見えなんだよ。
サッサと終わらせて観光の続きだ!