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ランバー国到着

「ここがランバー国かぁ〜」

 やっとこさ目的の地へ着きましたよ〜はぁ〜疲れた!

「イナリ殿、ランバー国へようこそ!では早速城へ王の元へ向かいましょう!」

「クレイグさん、俺は城には行かないぜ」

 俺の目的は王様に会う事じゃないし、会うとなったら謁見とかしないとダメだろ?そんな面倒な事誰がするんだ?

 ”無礼者!仮面を外せ!”とか言われるだろうしね、行きませんよ。


「そこを何とか お願いします!」

「イナリさん!」

「何だブラッド?お前からも言ってくれ、お前の妹の治療に来ただけだと!」

「イナリさん!お願いします、一瞬に城へ、俺も今回の件 事情を説明しないとダメなんです」

「え〜マジかよ〜お前だけ行って説明してこいよ〜俺 肩苦しいの嫌だからさ〜」

 ああ 皆んな縋る様な目で見て〜


「イナリ殿、是非!」

「イナリさん、お願いします!」

「モガーモガー!」

 貴様など城に来るな!私の無実は父上に報告する!


「こいつまだ自分は無実だと言ってるぞ、仕方無いなぁ〜何かの陰謀で、こいつが無実になるのも嫌だし一緒に行くか…」

「ありがとうございますイナリ殿!スカム王子が何を言おうと真実を伝えるまでです」

「城に行く前にブラッドの妹を治療してから行ってもいいかな?クズ王子は先に城へ連行してても構わないからさー」

「解りました。では私とブラッドは残り他の者は城へ、私の書いた報告書も渡しておくランズお願いします」

「クレイグ、任せてくれ!」


 ランズさんと他の医術師、薬術師、そしてクズ王子が逃亡しないよう城まで護衛の冒険者達が同行して先に城へ向かった。


「あれ?ドリーも付いて来るのか?」

「狐の旦那の治療を見たくなったんで」

「お前も暇だなぁ」

「ハハそれは言わないで下さい」

 旦那の治療が丸薬での治療じゃない事は知ってますぜ、ブラッドに女帝とスカム王子のやり取りを、こっそり教えてもらいやしたからね、奇跡の治療を間近で見たくなったのは確かですよ。


「じゃあ行こうかブラッド、案内頼む」

「解りました!先に治療してもらえるなんて、妹もきっと喜びます!うぅぅ」

「ブラッド、妹さんの治療が終わる前に何を泣いているんです」

「すみませんクレイグさん」


 ブラッド、クレイグさん、ドリー、俺の四人でブラッドの家に向かう事になった。

 ブラッドの家は町外れにあるようだ、家へ向かう移動中 ブラッドの妹の症状を確認の為 聞いてみる事に。

 一応思考を読んだ時は怪我だと思うんだけど、間違って生れつきで身体が不自由とかだと治せるかどうか俺にも判らないからな…ブラッドの話を聞いて確かに怪我だと聞いた時はホッとした。

 いやそれは不謹慎だなゴメン、何でも妹が12歳の時 買い物帰りに暴走した貴族の馬車に撥ねられてから1年間寝たきりになったようだ…相手は貴族で身分の低いブラッド達など まともに相手をする事無く 泣き寝入りらしい、酷い話だ。


 それでも元の元気な姿になってもらおうと必死に治療費をコツコツと貯め頑張っていた矢先にクズに目を付けられたとか、災難だな。

 妹の症状は恐らく脊髄を損傷して身体が麻痺してるのと違うかな?本物の医者じゃないから判らないけど多分。


「クレイグさん、クレイグさんは医術師だろ どう思う?」

「そうですね、私の見識だとランバー国の医術師では、先ほどブラッドが言っていた症状は、治療不可能だと思いますね」

「エエ!そ、そんな…じゃあ妹は!」

「何言ってんだブラッド、その為に狐の旦那に来てもらってんだろ?」

「そ、そうか!イナリさん妹をお願いします!」

「そういう事だよブラッド」

「まぁ診てからだな」

「はい!」

 そうだ、イナリさんなら必ず妹をポーラを治してくれる、俺は見たんだ!片腕を無くし血だらけの女帝を治す姿を!回復魔法における呪文を一切詠唱せず治療する あの姿を!その時に気付いたんだ、俺達の病を治療する時に差し出された丸薬が唯の飴玉だと…きっとイナリさんならポーラに奇跡の治療をしてくれる!


「もう少しで家に着きます」

「そうか」

 ブラッドが案内してくれる区域は所謂下民が住む区域だ、色々都市を見て回ったけど、どの国も事情は一緒だね、賑やかな場所から外れる場所は下民区域とは。


「あの家です!」

「やっと着いたか」

「あの〜イナリさんクレイグさん、家族に事情を説明してくるので、すみませんが ここで少し待ってもらえませんか?」

「私は構わないよ」

「あー事情を説明して来い!何カ月も家を空けていたんだからな、その代わり家族を心配掛けるような余計な事を言うなよ?素直に妹を治療してくれる者を連れて来たと」

「解りましたイナリさん!」


 ブラッド一人が家に入り家族に事情を話しに行った。まぁ家を何カ月も空け 妹の治療の為にとは言え、仮面をしている胡散臭い男を行き成り連れて来たら家族もビックリ、いや警戒するだろうからな。

 まぁ俺も家を何カ月も空けてるから人の事は言えないけど、全て駄竜が悪い!


「クレイグさん」

「何でしょうイナリ殿?」

「ブラッドの処分は、どうなる?」

「本来ならスカム王子に加担した罪で牢屋送りですね」

「本来なら牢屋送りか?」

「ですが()()()()()()()()()()()()と言う事ですから、今回の件は注意だけの処分だけだと思われます」

()()()宜しく頼む」

「はい、心得ていますよ」


 イナリ殿は噂通りの英雄ですね、優しい方だ、アマゾネスから聞く話では千人もの治療をしたにも関わらず金品など一切要求せず、報酬は数点の仮面と自分で討伐された魔物の素材で服などを作って貰っただけと聞く…悪に対して強く人に対して優しく…昔に読んだお伽話の伝説の賢者の話を思い出しましたよ。



 待つ事数分してからブラッドが家から出て来た、一応家族に事情を説明して来たようだ、親父は仕事でまだ帰って来ておらず家にはお袋さんと妹の二人だけとか。


「こんな所まで、よくお越しになられました。事情はブラッドから聞きました、狭い家ですが寛いで下さい」

「全然お構いなく、早速妹の治療をしよう、ブラッド 妹の部屋は?」

「イナリさん、こっちです」

「あー」

「ポーラ入るよ」

「あぁやっぱりブラッド兄さんだ!お母さんが誰かと話す声が聞こえたから、ブラッド兄さんだと、いいなぁ〜って思っていたんだよ、おかえりなさい」

「ただいまポーラ、今日はポーラの身体を治してくれる先生に来てもらったんだよ、その先生は、ちょっと事情があって仮面をしているけど優しい人だから怖がらないようにな」

「エッ!?」

 私の身体を治してくれる医術師の先生?仮面をしてる?

「イナリさん、どうぞ入って下さい」


「やぁポーラ、俺はイナリと言う者だ、今から君の治療を行うけど何も心配しないように」

「はい…先生お願いします」

 ベッドの上で寝ているポーラは、首から下は麻痺して動かない状態だ…身体も痩せこけて…床擦れも見受けられる…可哀想に…。


「イナリ先生、娘はポーラは、本当に治るのですか?」

「母さん大丈夫だって、イナリさんならポーラを治してくれるから信じていて」

 イナリさん!お願いします!ポーラをポーラに奇跡の治療を!

「イナリ先生、でもウチには先生に お支払いする治療費が…」

「 ポーラは、そんな事一切心配する必要は無いよ!その代わり元の元気な身体に戻りたいと願っていてくるかな?」


 ポーラをうつ伏せに寝かし首から下へ頸椎のある所を優しく摩るように、決めゼリフを唱える!

「癒しの女神様この者を癒したまえ」


 イナリ殿の魔法は、いつ見ても素晴らしいですね、見ている私達まで癒されてるようです。


 ヒャー!これが狐の旦那の奇跡の治療か!全く聞いた事が無い呪文だ、あの時は飴玉で誤魔化されて気付かなかったけど目の当たりにしたらバカな俺でも解る!絶対治っていってる。


 イナリ先生が私の背中に触れた!今まで触れられている感覚なんか殆ど感じられなかったのに…先生の優しく摩る温もりが伝わって来ている!背中が身体の内側が!とても温かい…今まで身体の中で眠っていたモノが起き出している…


「ポーラ、どうだ?ゆっくりでいいから起き上がれるか?」

「う、うん」

 カラダが動く!今まで何度動かそうとしても反応しなかったカラダ動く!

「ポーラ!」ああああ

「お母さんカラダが動くよ」うううう

「ポーラポーラ!うううぅ」

「お母さんああああぁん」

「ポーラ良かったなー!ううぅぅ」


 親子が感動で泣き合う姿は、自分でやっといて貰い泣きしそうだから、一先ず退散!あららクレイグさんとドリーまで付いて来たよ。


「狐の旦那!俺は感動しましたぜ!」

「あっそ」

「その対応は酷いな旦那〜」

「だって野郎の感動する姿なんか興味ねーし!」

「それは言えますね」ウンウン

「うわー!クレイグさんもヒデー!」

 ハハハ アッハッハ ヒデーヒデー!


「じゃあクレイグさん、城へ行こうか」

「もう、宜しいのですか?」

「あ〜問題無い」

「旦那、ブラッドは連れて行かなくてもいいのか?」

「今は、いいんじゃないか?ねぇクレイグさん」

「そうですね」

「じゃあ、ドリーとも ここでお別れだな」

「狐の旦那!色々お世話になりやした!」

「あー、諦めない事だ!だけど女はキャサリンだけじゃないからな」

「うわー旦那は既にお見通しなんですね、でも諦めずにもう一度チャレンジしてみますよ!では失礼します!」


 覗き魔ドリーがんばれよ。


「イナリ殿、先ほどの彼との話は?」

「あー さっきの?あいつ初恋の女に結婚してくれと告白したんだけど振られ自暴になりアマゾーン国へ逃げたんだ」

「なるほど…」

「そんな事よりサッサと城へ行こうぜ」

「そうですね、行きましょう!」





 しかしイナリ殿は不思議な方だ、自分の力に溺れず驕らず偉ぶる事すら一切無い…英雄と呼ばれる事すら嫌がる…これが真なる英雄の証?

 きっとそうですね、真なる英雄は自ら英雄とは言わない!この人は英雄だと、感じた者が呼ぶモノなのだから!



 早く王に”英雄イナリ”殿の話を報告したくなりましたよ。ふふ





 

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