森を抜けよう!
「アスラ殿は、行ってしまわれましたね…」
「そうじゃのぅ…」
「ダメですよ、エロイーナ様!」
「な、何がじゃ?」
「先代様と同じ道を歩まれては…」
「妾は、そんな事はしないのじゃ!」
あんなに優しかった母が幼少の妾を捨て妾の父を追い掛けるとは…あの当時は、なんと酷い女と恨んだ事か…
「じゃがのぅ今なら母の気持ちも解るえ」
「解ったうえで、この国に残られるのですね」
「そうじゃアスラも大事じゃが、もっと大事なモノが妾には有るのじゃ!民を護らなければ成らぬのじゃ」
「フフ成長されましたねエロイーナ様。所で昨夜はどうでした?朝方近くまで頑張っておられましたけど?」
「そ、それがのぅ…最中に月のモノが来てしもうたのじゃ…」
「エッ!?」
月のモノ…
「じゃから最中と言うか始める前に来てしもうたのじゃ」
「ななななな何をしておられるのですか!」
「ヒィ!」
「何故直ぐに私に報告してくれなかったのですかああ!」
「ア、アスラともアノ夜で最後と思い、つい言いそびれたのじゃ」
「ついじゃ有りません!早くに報告して頂けたら私が代わりにアスラ殿の お子を宿させて頂けたのに!」
「そ、それはダメなのじゃ!アスラの子は妾が宿すのじゃ」
ダメじゃ!クレアにも渡しとぉない
「ハァ〜エロイーナ様!次にアスラ殿がお越しに成られるまで、毎日体調を管理して下さいね?お越しに成られた時、月のモノが来た場合は私が代わりを務めさせて貰いますよ」
「わ、解ったのじゃ」
怒ったクレアには逆らえぬえ じゃが次こそ必ずやアスラの子は妾が孕むえ!
・エロイーナは知らなかった、あの時 アスラが寝ボケながらもヒーリングした事により神の悪戯か?将又アスラの秘められた能力なのか?怪我や病気にしか効かない筈のヒーリングが元の健康状態に成っている事を…
◇ ◇ ◇
「しかしイナリ殿は、アマゾネス達に凄い人気ですね、殆どのアマゾネス達が見送りに来ていたのでは?」
「ハハそうかな?」
「そうですよイナリさん!」
「セシリアが言うならそうかもな」
そうセシリアと他数名が森を抜ける途中まで道案内を勤めてくれる事に成っていたようだ、元々セシリアはメンバーには含まれていなかったようなのだがクレアさんの配慮で急遽案内役のメンバーに組み込まれたよう。
セシリアを含むアマゾネス達は、俺の事情を理解しているので名前で呼ぶ時はイナリと呼んでくれる、しかしアマゾネスが道案内をしてくれるのは、有難いね。
何せ樹海のような森なので自然の迷路のような所らしいので森を可なり熟知してないと迷った挙句にモンスターに襲われるとか、まぁ俺は最悪空に飛べるからいいけどな。
「しかし、あんたら残らなくて良かったのか?」
「狐の旦那と一緒に帰る方が安全かなって皆んなと相談した結果、全員賛成で帰る事に決まったんですよ」
「まぁ俺は構わないけどな、確かあんたは覗き魔だったかな?」
「狐の旦那!俺はドリーっすよ!いい加減名前覚えて下さいよ〜」
「あースマねドリーだな」
ランバー国一行は15人、子種組みが10人、案内役のアマゾネスが5人、そして俺で総勢31人で迷路の様な森を抜けるパーティの出来上がりだ!勿論クズ王子も両手を縛られ口も塞がれたまま同行している。
「モガー!モガー!」
貴様ら王子の私にこんな事をして唯で済むと思うなよ!
「狐の旦那、今回の首謀者が何か言ってるぜ?」
「あ〜気にするな、牢に入れられても反省してないようだから、暴れるようなら魔獣の餌で置き去りにするさ」
「そりゃいいやアッハッハ!」
「モガー!モガー!」
貴様ら!殺す殺す殺す!
まぁ意気がるのも今のウチだろう、クレイグさんの話では城に帰っても王様の判断で一生城の中で幽閉されるだろうとの話だしな。
◇ ◇ ◇
移動開始から3週間程経ったのだろうか、襲ってくる魔獣も知能が高い魔獣は人数の多さに滅多に襲って来ないが、それでもゼロとは限らない。
知能の低い昆虫系のモノは襲って来る!虫は苦手だからランバー国の護衛に同行している冒険者に任せ俺は、それ以外の魔獣や魔物を倒すのに全力を注いだ。
「イナリさん、ここまで来れば後は一本道です。このまま真っ直ぐ行くと自然と森を抜けれますね」
「セシリア、ここまでの道案内ありがとうな」
「いえいえ大事なお客人に道中怪我でもされたら私達が姫様に怒られますから」
「いつかまたアマゾーン国へ寄らせてもらうよ」
「その時は私達大歓迎で迎えますから必ず来て下さいね。では私達は、ここまでですので森を抜けるまで油断なさらないように」
「あー、本当にありがとうなセシリア」
「イナリさん、お気をつけて!」
セシリア達アマゾネスと別れを告げ、後は俺達残ったメンバーで森を抜ける事に成った。
人数も多くて移動に時間が掛かると思っていたのだが、問題無くスムーズに移動出来た事もあり、真っ直ぐ進めば5日程で森を抜けれるらしい。
アマゾネス達と別れ移動しながら思い出した事があったのでランズさんに聞いてみる事にした。
「ランズさん、聞きたい事があるんだけど」
「何でしょうイナリ殿?」
「ランバー国からヴァルトリアまで、どれ位の日数が掛かるのかな?」
「そうですね〜ヴァルトリアまででしたらハッキリした日数かどうか判りませんけど恐らく長距離用の馬車を乗り継ぎで利用しても一年から一年半位掛かると思いますね」
「エッ!?そんなに掛かるの?」
「ハッキリとは断言出来ませんけどね、多分それ位は掛かると…」
「でもそれじゃ旅の吟遊詩人達の移動が速すぎるような気がするんだけど?」
いくら何でも駄竜に攫われてから一年半も経っていないような気がするんだけど…?
「あ〜その事ですか!それはですね、彼等にもギルドまでとは言わないですが詩を共有する組織のような組合みたいなモノがあるんですよ、なので情報の共有が速いんですよ〜」
「なるほどね、一人の吟遊詩人が旅をして詩って回ってるのと違うのか〜」
なるほど納得した、いくら何でも速すぎると思ったんだよ。
「そう言う事です」
「それと今回の件…」
「解っております。ここに居る全員には公言しない様約束させています。イナリ殿の事情も理解しています」
「まぁ俺の事よりアマゾーン国の所在が大っぴらに成るのを避けたいだけだけどね、今回のように悪巧みを企てるような奴とか国が現れるのが嫌なだけなんだ」
「解っております、今回は他人事ではありませんでしたからね」
今回の事が世間にでも知れたらランバー国は国家としての運営、他国との信用がガタ落ちし機能しかねませんからね。
その後の移動も順調に進み漸く森を抜ける事に成功した。
森を抜けランバー国へは更に2週間程掛かるようだ 先は長いね、だけどランバー国へ到着するまで村や町が幾つか存在する様なので少しだけホッとしたかな、流石に毎日野宿は疲れるからね。
まぁ野郎は、いいとしても女性の冒険者もいるからね、宿のある町に到着した時は一番に喜んでいた様な気がする。
ここで子種組(ブラッド以外)とはお別れだ、別れる前に皆んな男泣きしながら礼を言ってたかな、いい大人が泣かなくてもいいのに…生きて帰れた事に感動してたのかな?まぁいいや元気でな〜と心で呟いた。
「あれ?ドリーは付いて来るのか?」
「俺はランバー国出身ですぜ、最後まで旦那に付いて行きやす」
「そうなんだ」
そしてその宿の一階、お馴染みの酒場兼食堂でテーブルを囲み食事をしながらクレイグさんとランズさんに俺が持っている地図を見せランバー国の位置を確認してもらった。
「間違いないですね」
「私もそう思うよ」
「あ〜良かった!落書きみたいな地図だから不安だったんだよ」
「これが落書き?」
「結構しっかり描かれている様な気がしますけどね?」
「そうなんだ…」
軍事用の地図を見た事ないから判らないけど…でも前の世界で見た地図に比べたら、やっぱ落書きだよね、コレ!
でもこれで漸く瞬間移動出来そうだね、瞬間移動して全く知らない場所に行くとか海中の中に到着とかシャレにならないかなね。
サッサと用事を済ませ帰らなくちゃな!