モグラバンジージャンプ
昔投稿した残骸を加筆したものです。
中二病の能力が下がっていることを痛感しています。
その時、彼はある庭の花壇から顔を出し、あるテレビ番組を目撃してしまった。
「お父さん、バンジージャンプって凄いね!」
「ああ、父さんもやったことあるぞ。あれは恐い」
彼は花壇からのそのそと移動し、ゆっくり近づく。
「モ、モグゥー!」
と、主人公のモグラは驚きの声を発した。
ちなみに、普通のモグラはそんな鳴き方はしない。そんなの聞いたこともない。聞いたことがある人がいたなら、それは彼しかいない。
「モグモグ!」
訳:こんなに素晴らしいものがあったのか!
「モグモグモグ!」
訳:こりゃ、ミミズを食べている場合じゃないな!
モグラは穴を掘り始め、この家の庭から出ていった。
モグラは、偶然近くに落ちていた雑誌によって、バンジージャンプの詳細を目にした。だが、所詮はモグラである。人様の文字が読めるはずはないのだが……モグラは感動していた。
そして、動物的勘によって文字を解読する。
「モグモグ!」
訳:山形県朝日村!
モグラは、山形県朝日村に向かって地中を掘り進む。
途中で何度も挫けそうになりながらも、モグラはバンジージャンプのために必死になって穴を掘りつづけた。
空腹時、たまたま強襲した畑でモグラ用の罠に串刺しにされそうになったが、それも動物的勘で回避する。
希望に満ちた今の彼を止められるものはいないだろう。
数日が経ち、モグラはとうとう山形県朝日村に到着した。
山形県朝日村のバンジージャンプは、日本で一番最初にバンジージャンプを開催したことで有名である。
梵字川に向かって、ふれあい橋からジャンプは、約三四メートルの高さがある。
「モ、モグ……」
訳:た、高い……。
モグラにとっての三四メートルとは、どんな感じなのだろう。だが、このモグラは勇敢にもふれあい橋をゆっくりと渡り始める。
そして、ここに来て、驚愕の事実を知ることとなる……。
「モ、モグゥゥゥゥー!!」
訳:な、なにぃぃぃぃー!!
「モグモグモグゥー!」
訳:年齢制限があるだとぉー!
ここでは一三歳以上しかできないのである。
もちろんこのモグラは、そんなに生きてはいない。根性でどうにかなる問題ではないのだ。モグラ的には何歳だとか、そんな甘いことが通用するものでもないだろう。
しかしモグラは諦めなかった。
係員の足元にそっと近づき、目で訴える。
係員もモグラの存在に気がつき、ひとりと一匹はしばらくの間無言で見つめあった。
キラキラキラキラ……つぶらな瞳が訴える。
「う……っ」
モグラの訴えに反応した係員。危険だとはわかりつつも、モグラの願いを聞き入れることにした。
さすがに、足にロープをつけることはできないので、体につけてから飛ぶことにした。
「真っ直ぐに前を見て、両手を広げて飛んでください」
「モグッ!」
訳:了解っ!
「…………」
モグラはなかなか飛べないでいた。
係員は、心の中で声援を送りながら、モグラが飛ぶ瞬間を見守っていた。
(思えば、モグラのバンジージャンプなんて初めて見るな。世界でも俺だけだろう)
貴重な体験をした係員は、そんなことを思っていた。
モグラがゆっくりと前に倒れ……飛んだ。
「モ、モグゥゥッ!」
産まれて初めての体験であるバンジージャンプ。
モグラは感動した。達成感が全身を包み、宙にぶら下がっていた。
係員との握手(?)が終わり、モグラは帰ろうとしていたところ、そこに、またしても偶然雑誌が落ちていた。
「モ、モググ!」
訳:こ、これは!
群馬県利根郡新治村猿ヶ京にあるバンジージャンプスポット。
そこは、世界で三番目、日本で一番の高さを持つバンジージャンプスポットだった!
今では日本のバンジージャンプスポットはほとんど閉鎖されています。昨今いろいろ訴えられまくりの社会ですからねー。触らぬ神にたたりなしってことなんでしょう。
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