普通の女子大生の日常
私からは見えるけど、君からは見えない距離にいつも私はいた。
だって君は雑誌の中や、テレビの中、現実で会えても人に囲まれていて、私が近づけたことなんてなかった。
それでも私たちは「恋人」っていう関係だったりする。
よそから見るとそうは見えない…というか中にいてもそう見えない。
私は普通の女子大生で、君は人気アイドル。
数年前まではあんなにずっと一緒にいたのに。
なんでこうも離れてしまったのかな。
「ナナ!昨日のドラマ見た!?もう超かっこよかった!!」
「見てないよー」
「え、なんで!?あんなにオススメしたのに!他のドラマは見てるくせになんであれだけ見てないの?今期1番の話題作じゃん!」
「…んーなんでだろ」
なんて、あのドラマを見ないのは主演があの人で、恋愛物だから。…ドラマの中とはいえ、あの人のキスシーンなんてみたくない。
…キスなんて最後にされたのはいつだっけ。っていうかいつから会ってないんだっけ。メッセージアプリですらメッセージなんてきてない。
「あ、もしかしてヒロのドラマ!?この間の雑誌ヒロ載ってたよ!見る?」
「見る見る!!」
私は苦笑しつつ、同じゼミ生の子が見せてくる雑誌を見た。
…浩樹。長谷川浩樹。私の中学、高校の同級生。そして私の彼氏…であるはずの人。
「きゃーーーもうほんっとかっこいい!!」
「この顔で歌も上手くて、ダンスも上手くて、お芝居もできて、ほんとなんでもできるよねー!」
「欠点あるの!?」
浩樹の欠点なんてたくさんある。好き嫌いは多いし、我儘だし、すぐイタズラはするし、宿題はよく忘れて、先生に怒られてた。
「昨日のインスタもさーなんか写真めっちゃ可愛くて!」
でも最近の浩樹のことなんて私は何一つ知らない。
きっとこの子たちの方が今の浩樹のことをよく知ってるだろう。
「こんな人と付き合いたーい」
「いや、無理だって。こんな人ヒロ以外にいるわけないじゃん」
「っていうかもうヒロじゃなきゃやだー!」
私はもう浩樹と半年会えていない。