蟹の声
「......ん、ここは....」
「気がついたか、杉尾」
目が醒めると砂浜で眠っていた。夢だったかと思いたいが目の前のハゲが現実だと伝える。ミディアムは背を向け座っていた。
「あの後、二人は満足したのかどこかへ行ってしまってな。とりあえずお前をここまで連れてきた」
「そうか、....すまなかった。色々と」
ちらりとミディアムの頭を見る。彼の頭の光はこれでもかとばかりに光り、主張する。気づけば朝日が昇っていた。そういえば俺もハゲにされたんだった。ふと頭を触ると
「......ある⁉︎」
俺の頭には確かに髪があった。
「ん?」
だがそれがカツラだということにすぐに気づいた。
「ミディアム、これは?」
「....予備のカツラだ。お前に、やるよ」
「そんな、そんなことできねぇよ‼︎」
「俺は、いいんだ。」
ミディアムの肩はプルプルと震えていた。俺は言葉が出なかった。
「うわ‼︎ なんだ⁉︎」
俺の足に痛みが走る。それがカニだと気づくのに時間はかからなかった。
「なんだ、カニか」
ホッとしているとどこからか声が聞こえてくる。その声の主はカニだった。
「か、カニが喋ってる‼︎」
「そんなことあるわけ「私だよ」ギェェェェェェェェェ‼︎‼︎」
ミディアムは泡を吹いて驚く。お前が泡を吹く役目ではない。
「ねぇ、聞こえてる?」
「誰だよ」
「私だよ、蟹野 宇摩美」