巡り巡って
「落ち着いたか?」
「....あぁ、もう大丈夫だ」
「酷いことだが、これは事実だ。受け止めるしかあるまい」
「分かってる。何も嫌なことばかり起きたわけじゃない」
ぎゅっとカツラを握りしめる。指の隙間から髪の毛がするりと抜けた。
「それで、俺はどうすればいい?」
「本来私が解決すべきことなのだが、力を制限されてしまっていてな。君たちに頼むしかない」
「分かった、任せてくれ。これでも異能力を使えるんだからよ」
どうやらこの異変で人々の体にも様々な変化が起きたらしい。たまたま俺がよくあるファンタジーのような能力を使えるようになった....らしい。
「すまない、感謝する」
「いいってことよ」
カツラを頭にかぶせ、俺は後ろを向く。
「じゃあな」
「待て、杉尾。一つだけ言わせてくれ」
「なんだ?」
「西木はー」
「なんだって⁉︎」
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「お、やっと帰ってきた」
「遅かったわね。それで食料は取れたのかしら」
「あ、悪い。忘れてた」
「まったく、何をしに行ったのかしら」
「......」
「西木? どうかしたか」
「い、いや何でもない」
「まぁいいわ。ついさっき海から食料が流れ着いてきたの」
「へぇ、ラッキーな事もあるもんだな」
「ラッキーどころじゃないぜ。なにせ狼だ。こりゃあ食べ応えがありそうだ」
「....狼?」
宇摩美が顎で「それ」を指す。
その方向には
「ミディアム⁉︎」
昔の友がいた。