イノシシ神様
「杉尾、食料とってきなさい」
「今忙しいんだ、自分でやってくれ」
「あ?」
「行きます」
この前からすっかり立場が変わってしまった。俺はこき使われる人生を強いられてしまうことになった。
「おう杉尾、どうした?」
「西木か、あれだよ」
指で宇摩美の方を指す。
「あー....すまんかったな」
「いや、いいよ....」
西木が俺も強くしてくれればいい話なのだが、それをやるにはかなりの力を使うらしくまだできないとのことだった。
「俺も行こうか?」
「大丈夫だ、ゆっくり休んでてくれ」
西木はこの世界をおかしくしてしまった原因を探している。ただでさえ大変なのに俺に付き合わせるわけにもいかない。
「この前は魚食べたしなぁ、何にするか」
「そういや森で動物を見たぜ。それでいいんじゃないか?」
「ナイスアイデア」
俺は森に行くことに決めた。
森に入ると小さなイノシシがいた。怪我を負っていて動けそうにない。こいつを連れて帰れば今夜のメニューは決まりなのだが
「そんなこと、できないよな」
何故だかいまの俺と重ね合わせてしまった。こいつを食べる気にはなれない。軽く回復魔法をかけその場を立ち去ろうとすると
「....待ちなさい」
そこには巨大なイノシシがいた。
「君は優しい人間だな。私の知る人間とは違うようだ」
なんだ、こいつ。
「ついてきなさい」
どうやらついていくしかないようだ。
「....遅いわね」
「食料を頑張って集めているんじゃないか?」
「一人で行かせて悪いことしたわ....お腹すいた」