人は見た目で判断してはいけない
「なぁ、この後どうする?」
ホテルの部屋に戻った俺たち二人と一匹はこれからのことについて話していた。
「どうしようもないわね、まさに絶望といったところかしら」
「そうだなぁ....」
外では聞きなれない音が鳴り響く。とりあえずそのことについては触れないようにしておこう。
「俺がヘリでも呼んでやろうか?」
「なんでもっと早く言わないんだよ。さっさと呼んでくれ」
そういえばミディアムは金持ちだった。ヘリの一機や二機連れてくることなど造作もないだろう。
「私カニ缶が食べたいわ」
「お前が食ったら共食いになんじゃね?」
「そんな蟹の世界の常識なんて私には通用しないわ」
「ふーん....まぁヘリが来るまでのんびりしてるか」
「人狼でもするか?」
「三人じゃ人狼なんてできないだろ」
「この中に本物の人狼がいたりしてね」
「まさか」
そんな会話をしているとミディアムがガタガタとふるえだす。
「どうしたミディアム、体調でも悪いのか?」
「どうしたのミディアム、頭皮の体調でも悪いの?」
「違う、違うんだ....ウォォォォォォォォォォォォ‼︎‼︎‼︎」
ミディアムはみるみる毛深くなり見た目はまさに
狼だった。
「なんだ....なんだよこれ‼︎」
「よかったじゃない、頭にも毛が生えてるわ」
「本当だ、よかったじゃないかミディアム‼︎」
「って違うわ‼︎ あいつ俺たちのこと襲ってくるぞ‼︎」
「終わりね」
もう駄目だ、どうシミュレーションしても勝ち筋が見つからない。
先に蟹を食わしてもその後食われて死ぬ。俺を食わしても蟹が食われて死ぬ。頭はこんがらがっていた。
その時
「あの、すいません。僕は平気です。大丈夫、僕はミディアムですから、体はビッグになっても、ミディアムですから」
ミディアムは紳士になっていた。