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 自宅に戻ると机の上に置かれた両親の笑顔が目に飛び込んできた。今までずっともやもやしていた心に綺麗な水が流れている感じがした。

「お父さん、お母さん、あたし秀馬とやっと繋がれたよ。もう離れることもないよ」

 ほっと息を吐いた時、ふと透也の顔が頭の中に浮かんだ。優しい王子の仮面を被っていたなんて夢にも思っていなかった。もしかしてすずなと秀馬を切り裂こうとしているのではと考えてしまう。そんなに酷いことを企んでいるとは信じられないが嫌な予感は消えてくれない。

 いろいろな思いが胸に溢れていて勉強に集中などできなかった。仮病を使って学校に休むと連絡をしてからベッドに横たわった。キスをした時のどきどきが蘇り急に恥ずかしくなり全身が熱くなった。無意識に外に出ると好きな場所をぶらぶらと歩いた。スキップをしたり踊ったり、とにかくじっとしていられない。

 しかし突然背後から誰かの視線を感じた。振り返ると透也が睨みながら立っていた。大股で近寄りすずなはびくっと体を震わせた。

「え……?学校は……?」

「すずなさんが休んだって聞いて、早退したんだ。どうしても君に会いたかったから」

 無視をしたかったが逃げられそうになく仕方なく答えた。

「どうして会いたかったんですか」

「君は俺のことをどう思っているんだ」

 告白をされた時に自分が何を話したのかよく覚えていない。戸惑ったが適当な言葉を返した。

「あたしは透也先輩とお付き合いはできません」

「誰がそんなことを決めたんだ。東条秀馬か」

 きっと睨み付けた。悪者はすぐに秀馬だと考えるのが気に障った。

「違います。というか、本当に好きなんですか?」

 透也は石のように固まった。動揺しているのがわかった。

「それに透也先輩の周りには、可愛い女の子がたくさんいるじゃないですか。どうしてあたしなんですか?あたしじゃなくても透也先輩と付き合える女の子はいますよ」

 うろたえて一歩後ずさった。すずながこんなことを言うとは思っていなかったのだろう。

「すみませんが、あたしと秀馬は既に繋がってるんです。あたしが繋がりたい人は透也先輩じゃなくて秀馬なんです」

「繋がりたい人?」

 さらに後ずさった透也を見つめながらこくりと頷いた。

「最初はお互いに大っ嫌いで、毎日ケンカばっかりしてました。でもよく考えるといつもそばにいてくれて、秀馬がとなりにいないと真っ直ぐ歩いて行けないんだってわかったんです。それに透也先輩は何でも持ってるじゃないですか。大きなお屋敷でお父さんとお母さんと一緒に暮らして友だちだって数え切れないほどいる。だけど秀馬は狭いマンションでたった一人で生きているんですよ。秀馬が不幸になるのが嬉しいんですか」

 一気にまくし立てた。けなされても平気なくらい心は強く、秀馬のためなら何でもすると考えた。完全に言葉を失った透也は項垂れるように下を向いた。

「生意気なことを言ってごめんなさい。でもあたしは秀馬と繋がっていて、絶対に離れる気はありませんから」

 捨て台詞を吐くと後ろを振り返った。答えを待っていても時間の無駄だ。もう透也に用はない。

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