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解、一ノ瀬 勇太

舞台は遊杏島ではありません

解とは名ばかりの解答…ご賞味ください♪


この世に起こる現象は人が起こすから成る。

その当たり前の事を当たり前と言うにはこの世はまだ認識され切っていない…

だから人は嘘を付き、その嘘に人は嘘の行動を取る。

その結果この世には人が起こせない事象が起きる。

俺の祖父はこの世の真実を知るためにこの仕事を始めた。

全ての真実を求める結社、『アルカナ』を…

俺の母は全くと言って良いほど関心を示さず、親父は祖父の後を継ぎ経営者になったが祖父が創設した当初の思念を無視して金の成る木に変えてしまった。

おかげで今は莫大な金を受け取る代わりに何でもする何でも屋になっている。

俺はそんな親父を責める気も尊敬の念を抱くこともなかった。

ただそう言うモノなのだと思ったからだ。

俺はビルの屋上で自嘲気味に笑うと茜に染まる空を見上げた。

始まりも誰かの事でなら終わりも誰かの事で…と言ういかにも人間らしい行動心理だったからだ。

「なぁ…ハーミット。ホントにコレで辞めるのか?」

「あぁ…」

「やっぱり。お前のじいさんの…」

「なぁ。そんな事より今回の仕事は昔みたいに名前で呼び合う約束だろ?」

姿を見せずに話す幼馴染みの山村はやれやれと言った感じで俺に今日の仕事内容を話し始めた

「まぁ…今回の依頼内容が猫探しなんてふざけたもんじゃなかったら絶対に名前で呼ばないが…猫探しなんだよなぁ〜」

「まぁまぁコイツだって飼い主に取っては家族なんだから騒ぐな」

俺はそう言いながら先ほどから抱いていた黒猫の襟首を掴み山村に見せつけた。

「にゃ〜ん」

間の抜けた声を響かせた黒猫はくた〜と愛らしく垂れていて一鳴きした。

「勇太…考え直さないか?」

「山村…」

「わりぃ…勇太…」

「いや気にするな…それより依頼はコレで終わりだよな?」

「あぁ…」

「山村…時間あるか?」

「まぁお前の最後の仕事を見守るつもりだったらな」

「そうか…俺…ずっとお前に謝ろうと思ってたんだ」

俺は黒猫を抱き抱えると紫になり始めた空を見上げた。

「俺がこの仕事に巻き込んだからお前は…もう…」

「それこそ気にするな!俺はお前に感謝してるんだからな。

勇太…お前が俺を誘ってくれたから俺はこの世界に疑問を持つ事が出来たんだ。

それにその代償が怠惰に過ごしていた今までの生活なら安いもんだ」

山村なりの優しさで言っているのだろうが俺にはその優しさが痛かった。

「俺なんかの事よりお前はこれからどうすんだ?」

「ん?親父が俺の戸籍を創ってくれるらしくてな」

「それはつまりお前は今まで基づいた全てを捨てるのか?」

「そうなるな…だがあの親父らしくてな俺の貯金の半額の費用でしてくれるんだとよ。まぁ持ち出せる金は更にそこから半分だけなんだがな」

俺はやれやれと肩を落とした。

「はぁ?!ふざけてんのか?勇太!」

「ふざけるのは俺の専門外なんだがな?」

「俺が言ってるのはそう言うことじゃない!お前の貯金って総額で一国家よりたけぇじゃねぇか!何四分の一でガッカリみたいな態度とってんだよ!」

俺は黒猫と視線を合わした。

「まぁ遊杏島の旅費がある分いいが…」

「ちょっとまて!…勇太、遊杏島って言ったか?」

「お前が考えてる遊杏島だ」

「そこはお前のじいさんが最後に訪れた地じゃなかったか?」

「あぁ前ハーミットのじいさんがそこを訪れて1ヶ月もしない内に死んだ。

明らかな他殺でだ。

確かに怨みは人の何倍も買っていただろうし…何より自分自身も私怨で死ぬ可能性も否定しなかった。

だが俺には信じられないんだ山村…

アルカナの称号を手にして入る人間が争った経緯もなく殺されるなんて…」

アルカナの称号はタロットの大アルカナ、22枚から取られている。

それぞれのカードの意味がその人間の基本になる。

だが称号内で比較するのは無意味に近い。

なぜならあくまで基本思考だからだ。

能力の示唆に使われているわけではないからだ。

「だから俺はじいさんが何を見て何を知って死んだか…その真実を知りたいんだ」

「そうか…やはりお前は…」

「まぁ遊杏島に行けるのはたぶん一年位かかるしそれまで普通の生活を楽しませて貰うさ」

俺は山村の言葉を遮るように次の話題を振った。

「ハーミット、時間だ。その猫を届けてこい」

しかし山村の声はハイエロファントとしての声に変わっていた。

どうやら俺のハーミットとしての時間は終わりを告げようとしていた。

「あぁ…解った」



一ノ瀬 勇太がハーミットととしての最後の仕事を終えてから三年の月日が流れていた。

山村は自室で数枚の色褪せた紙を受け取り読んでいた。

「はぁ…何でだよ!クソが!!」

山村は近くに有った椅子を蹴飛ばしイラついたようにウロウロ歩き始めて時計を見た。「ちっ…」

最後に一つ舌打ちをすると部屋を後にした。



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