雑談のお時間です「アンドロイド」
「アンドロイドは人間か」
某未来の猫型ロボットアニメを観ていた時である。
「ロボットでしょう」
そう言うと師匠は「違う違う」と寝ころびながらの姿勢で話す。
「言葉が足りなかったな。話すロボットって見た事は無いか」
「あの不気味な人形ですか」
テレビを見つめたまま指を上下に振る仕草。大体は正解だという仕草だ。
「ああいった技術がどんどん発展して、ほとんど人間の様に振舞うアンドロイドが出来たとしよう。それは人間か、アンドロイドか」
またとても面倒な問題だった。そもそもアンドロイドを作ったと自分で言っているではないか。けれどそういった事では無いのだろう。
「もしそんなアンドロイドが出来たとして、人間の様に扱うか、ロボットの様に扱うか。そういう問題ですか」
「そうだな、そういう目線で見てもいい。会話でき食事もできて排泄もする、自我を持ち自分達とまったく同じ外見をした体が機械の存在を自分達と同じカテゴリーに入れるのかと聞いた」
師匠はそんな事を言いながら内股を掻いている。はしたないから止めて欲しい。
「入れてもいいと思いますよ。犬や猫を家族と言う人もいる位です。初めの反発はありそうですけど次第に慣れていくものだとも思います」
「そうか。私は嫌だぞ」
嫌。そうか嫌なのか。むしろそんな世界は楽しそうだと言いそうな師匠が拒絶している。珍しい事だった。
「意外ですね」
理由を聞こうとしたが師匠から話してくれた。
「いや、アンドロイドに否定的な訳じゃないんだ。仮にそういう世界になったとして人のあり方とかそれこそロボット自身のあり方の様なものが壊れてしまうのではないかと思ってな」
「どういう事です。何か新しい事が起これば変わるものでしょう」
そう言うと師匠は私に顔を向け、少し真面目そうな口調になる。
「私は壊れると言った。変わるではなく壊れると。言葉はキチンと汲み取れと教えただろうが」
テレビから聞こえるポップな音楽とは裏腹なその声は、一瞬にして私に緊張感を与える。
「私も上手く説明できないのだが、きっと何かが壊れるんだよ。積み上げた物に新しく積む行為では無く、積み上げた物を壊して新たに積み直す様な」
「それが嫌なんですか」
師匠は向き直りまたテレビを観ている。背中に汗の気配と安堵する自分を感じる。師匠が私に何かを教える時、それがより効果的に植えつけられる様にする節がある。ハッキリ言えば恐怖感や危機感と一緒に教え込む。教えは実に効果的に残っているが心臓にとても悪かった。
「嫌と言うよりも怖いと言った方が適切だ」
「師匠にも怖いものがあったんですね」
「そりゃそうだ。私だって乙女だ」
男女の問題ではなく生物としてと言ったのだが、今度は言葉ではなく蹴りか物が飛んできそうなので言わない事にした。
「それで、アンドロイドは人間に成れそうですか」
「成るんだろうな。人がそうなる様に進み続けたら絶対に成る。予想でも願望でもない確実な未来だ」
そう言ったままテレビを観続ける師匠の背中を見て、明日その未来が来たら師匠にアンドロイドを見せてやりたいと静かに、本当に静かにそう思った。