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Methuselah  作者: 宮沢弘
第一部:プロローグ
3/21

1-2

(*** Methuselah 1-2 ***)


 翌朝、裏の倉庫で一仕事を終え学院の食堂に行くと、入り口にビラが貼ってあった。ケインズが、今日の昼に妖精人形のデモンストレーションをするようだ。


 昨夜は、これまで表に発表してあるものから電池を作り、同じく発表してあるものからモーターを作った。モーターには羽をつけておいた。これで動くのが見える。発表に使ったポスターも見つけておいた。まったく、こんな時にテクノロジーを使えれば楽なのだが。今回はそういう訳にもいかない。


 朝食を摂りながら、なにを言えばいいものか考える。


 復元できているのは、表にせよ裏にせよこのあたりまでだ。他のテクノロジーも使えることは使える。だが、それらは使えているに過ぎない。電池とモーターだって、一応作れはする。でも、なぜそのような機能が実現できるのかはよくわからない。磁石とコイルでなんで回るんだろう? とはいえ、その点で言えば、マックスと出会えたのは僥倖だった。もっとも、お陰で裏の裏まで私と友人たちは抱え込むことになったが。


 教会が使っている「悪しき業」というような言葉を使えれば楽なのだが。こっちとしては復元できているのはここまでと言うしかない。ケインズのデモンストレーションは説得力があるだろう。むしろケインズこそが何者かと結託しているとでも言ったほうが楽なのだろうか?


 こういう事には私は向いていないんだ。


 ケインズとたまに話しながら、双方準備をする。この後、起こることを考えれば奇妙な風景かもしれない。


 そこに、二頭立ての馬車がやって来た。荷車には一辺2mほどの箱が載っている。どうも嫌な予感がする。帽子をポケットから取り出すと、タップしてリンカを起動する。眼鏡の弦に通した紐に偽装したケーブルを内ポケットの電池に接続する。御者の映像記録を私の視覚と記憶から再構成し、撮っておく。


 ケインズと御者が何かを話している。突然ケインズが声を荒げた。


 「そんな事は聞いていない!」


 あぁ、嫌な予感しかしない。


 ケインズはそれでも納得したようだ。御者は馬と荷物を残して立ち去っていく。


 そしてケインズのデモンストレーションが始まった。概ね予想どおりの口上と、そして山場はあの妖精人形だ。学生たちが驚きの声を挙げる。


 そしてケインズが大きな声を挙げる。


「ゴーレム、起動!」


 御者が残していった箱から、身長3mほどのロボットが立ち上がる。木の箱など簡単に壊して。


 学生の驚きの声がいっそう高まる。


 ロボットはケインズの命令に従っているようだ。なにやら細々した動きをしている。


 ケインズ、君はこれをどう収めるつもりなんだ。


 そう思った時だった。学生の驚きの声が、叫び声に変わった。ケインズの声も聞こえる。


「ゴーレム、止まれ! 停止!」


 だがロボットは止まらない。学生に向けて腕を振り回し、ケインズがポスターを貼り付けていた掲示板も壊している。


 これを収めるのは私なのか?


 「デュカス! お前か!? お前がやっているのか!?」


 ケインズ、こっちに振らないでくれ。振らなければ、マックスにどうにかしてもらえたかもしれないのに。


「俺なわけがあるか!」


 私はケインズの方に走りより、何とかロボットの背面に回ろうとする。


「露出しているケーブルは無いか!? ケインズ、お前も探してくれ!」


 そう叫んだ時、私はロボットにふっ飛ばされた。帽子を何とか押さえながら、転がる。

 だから、こういう事にも私は向いていないんだ。


『マックス、こいつを止められないか?』


『あー、そいつはプログラムが暗号化されている。少し時間がかかるよ』


『構わない。適当にケーブルを見つけて千切るから、それに合わせて止めてくれ』


 ケインズと私が何回かふっ飛ばされた後、私は何とかロボットの背中に取り付き、たまたま見えていたケーブルを思いっきり引っ張って千切った。それに合わせてロボットも止まる。


 『マックス、助かった』


『まぁね』


 怪我をした学生を医療館に行かせ、ともかく騒ぎを収める。


 まぁ、これは良い機会かもしれない。横ではケインズがしょげているが。


「というわけで、こういうケーブルでエネルギーや命令を伝えていることはわかっている。だが、我々に復元出来ているのはここまでだ」


 昨夜作っておいた電池とモーターを見せ、ケーブルを接続したり外したりすることでモーターが動いたり止まったりするところを見せた。


「ケインズがこれをどこから手に入れたのかは知らない。どこかで私たち以上に知識の復元が出来ていることは認める。だが、私たちにわかっているのは、このモーターくらいのところまでだ」


 学生たちが納得したかどうかはわからない。だが、まぁこれで後輩が生まれたかもしれないと考えることにしよう。


私はケインズに顔を向ける。


「ケインズ、どういうことなのかは話してもらうぞ」


ケインズが頷いた。


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