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Methuselah  作者: 宮沢弘
第二部:本編
17/21

9-2

「大出力の物質攻撃?」

 横にいたオブライエンに思わず問い返した。

「そんなのは、対応する時間を与えるだけじゃないか」

「だが、それが彼女の希望だ」

 オブライエンは首を横に振った。

「仮に、連中がシステムに干渉できるとしたらどうでしょう?」

 後からタックマンが言った。

「ロックの段階でということか?」

「かもしれません」

 私の前にはハルダーソンとジェフリーが相手の様子を見ている。いつもどおり、このような話には興味はないという様子だ。

「それなら物質攻撃でも同じだろう?」

「ちょっと待って。ロックの時に干渉をどうにかできれば、物質攻撃ならあとは自律して……」

 オブライエンを思わず睨みつけた。そうだ。その方法がある。

「すると、ミサイルも撃つとして…… それと鉄球がある。鉄球なら落ちるだけだ。迎撃される可能性はあるが、他の干渉の方法はない」

「その方法だと、いくつか小型の鉄球も落す方がいいでしょう。目眩しになるかもしれません」

 『鉄球』と、それは呼ばれている。耐熱タイルで保護されているが、それだけのただの鉄球だ。質量と衛星軌道という高さだけがその威力になる、単純な兵器だ。50トン級の鉄球で、40ギガ・ジュール程度。昔の基準となっていた火薬に換算して10トン程度の威力だろう。旧世界の核兵器はキロ・トン級だったことを考えれば可愛いものだ。もちろん、この場でキロ・トン級の爆発なんかがあったら、私たちも消えてしまう。空気抵抗を考えなければ、もっと馬鹿げた威力になるが。

「そうだな」

 目眩しは必要だ。ただ、放出の時間をずらす必要があるだろう。

「少し下がろう。さすがにここでは危険だ」


  ****


「オブライエン、今から攻撃すると伝えてくれ」

 オブライエンはうなずくと命令を唱えた。

「タックマン、ミサイルを頼む」

 タックマンは黙ってうなずいた。

「位置特定 -起点=私 -方向=視線 -距離=5km -補正=必要 -対象=建造物 パイプ ティー 別名=攻撃目標 パイプ 攻撃 -方法=鉄球 -クラス=5 -数=10 -対象=攻撃目標 セミコロン スリープ 120秒 セミコロン 攻撃 -方法=鉄球 -クラス=10 -数=5 -対象=攻撃目標 セミコロン スリープ 120秒 セミコロン 攻撃 -方法=鉄球 -クラス=50 -数=1 -対象=攻撃目標 実行」

 横ではタックマンが同じように命令を唱えている。

 ジェフリーとハルダーソンは後から様子を伺っている。ジェフリーは双眼鏡を使って。木もあるのだから見え難いと思うが、こういう心配性なところが信頼できる点の一つだ。

「いつもと違って何も起こらないな」

 ハルダーソンの緊張した声が聞こえた。

「何百kmか上から落ちてくるんだ。それも光がじゃない。物がだ。何分か、かかる」

 後の二人から少し気が抜けた雰囲気が伝わってくる。

「気を抜くなよ。見たことがないことが起こるぞ。俺も見たことがないことが」

 その時だった。

「デューカース!」

 その声が聞こえた。

 この場にいた全員に緊張が走った。各々あちらへこちらへと眼をやる。

「拠点で何か光った」

 ジェフリーが叫んだ。

「もう始まったのか?」

 ハルダーソンが叫んだ。

「こっちのはまだだ。だが、何かが始まった」

「デューカース!」

 またその声が聞こえた。

「デュカス、この声はまさか!」

 タックマンが叫んだとおりだ。そう、そのまさかだ。ありえない。

「タイラ教授の声だ。ありえない。マックス!」

「すまない、デュカス。私の命令が充分ではなかったのかもしれない」

 オブライエンがいつもの落ち着いた様子とは違い、早口で言った。

『デュカス、三人に割り込むぞ』

「マックス、助かる。承認」

『あれはタイラの複製だ。だが君たちの頭蓋内回路を過信するな。君たちの頭蓋内回路で複製できるデータはたかが知れている。あれはできそこないに過ぎない』

 タックマンもオブライエンも私を睨んでいる。いや、睨んではいないのだろう。ただ驚きからだろうか、見開いた眼がそう見えるだけだ。

「君が言っていた結社との繋りというのは、こういうことだったのか」

 タックマンの口調もいつもとは少し違う。

「そういうことらしい。こんなことだとは予想もしていなかったが」

『タイラが今すぐに君たちに手を出せるわけではない。今、タイラの体となっているロボットと通信している衛星と、さらにそれと通信している衛星を探している』

「それでどうなる!」

『どうにもならない。こうなった存在を消し去るのは難しい。だが復元に時間が必要になる程度にはできるだろう』

「デューカース!」

 確かにこれはタイラ教授のできそこないなのかもしれない。

 後の二人は息を殺している。

「デューカース!」

 その時だった。

「私のが来るぞ!」

 タックマンが叫んだ。そして、光、爆発音、衝撃。

 それに遅れていくつもの大きな、あるいは小さな光、爆発音、そして衝撃。

計算をミスってたらすみません。


鉄球の放出時刻をずらしているのは、空気抵抗を考慮すると、少しその影響を受けるためです。

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