昔の名作RPGをVRでやってみた件
昔のゲームがVRになるとどうなるか?という話です。
ドット絵のゲームをやったことがないと、ネタがまったく分からないと思います。
また、最後がネタというかバットエンドみたいになってますので、そういうのがまったく許せない方はご遠慮ください。
昔の名作RPGをVRでやってみた件
子供の頃やった、名作RPG「ファイナルクエスト」のVR版というのが出たので、早速やってみる。
■ 1日目 ■
VRギアをつけて、ゲームを起動する。
目の前に「ファイナルクエスト」のマークが現れて、暗転するとメッセージがでた。
<名前をきめてください>
目の前にキーボードが浮かぶ。これで入力するのか。
まあ、キャラクリとかはないか。いきなり、名前を決めて終わり。なんとも王道である。
であれば、当然、名前は<ちん○>で決まりだ。
ん?待てよ。VR版ってことは、名前を呼ばれるたびに、「ちん○、ちん○」と言われ続けるのか・・・
ここは妥当に、ちゃんとした名前で行くべきか。
いや、「ファイナルクエスト」の主人公は、「ちん○」というのが定説である。そこは譲れない。
早速<ちん○>と入力する。
<これでいいですか>
<はい>を選ぶ。
<ほんとうにいいですか>
こんな感じだったっけ? <はい>を選ぶ。
<後悔するなよ?>
ここまでくれば、こっちにも意地がある。当然<はい>を選ぶ。
すると、聞きなれたあのテーマソングが始まり、気が付くと町のはずれに立っていた。
町は当然ドット絵ではなく、中世にありそうな現実そのものの町だった。
とすると、次は王様に挨拶に行く必要があるな。
俺は迷わず、町の中心にあるお城へ向かう。
お城までの町並みは、なぜか懐かしさを感じる町並みだった。
途中、武器屋や道具屋があった。思えば、あの頃はドット絵を見ながら、頭の中で目の前にあるような風景をイメージしていたように思う。
そんなことを思っていると、城の前に着く。門の脇には警備がいるが、かまわず門をくぐる。
声をかけられるかと思ったが、こちらを見ることすらせず、まったく無視された。決められたことしかしないNPCなのだろう。
お城の中も、誰にも止められることなく進み、王様の部屋の前に着く。一度深呼吸をして、王様の部屋の扉に手をかける。
その瞬間、王様の部屋の扉は自動ドアのように開いた。
そして、その向こうにある玉座には、王様がいた。白いひげに派手なローブのような服装。そしてその頭にはキラキラした王冠が載っていた。まさしく王様である。
俺はゆっくりと王様の前まで進み、跪く。
「勇者、チン○でございます。」
しばらく待つが、反応がない。
「ちん○でーす。」
「拙者がちん○である。」
いろいろ試してみるが、反応がなかった。というか、王様は正面をむいたまま、動いていなかった。
ふと見ると、床の模様が一部白く光っている。
思い出した、ここを踏むんだった。
その白く光ったところに移動すると、突然王様が話し出す。
いや、正確には王様のセリフが、目の前にメッセージとして現れた。
でも、VRなのにしゃべらないとか、どうなってるんだこれ。
<おう、ちん○よ、良くぞ来た。早速だが、魔王を倒してまいれ。>
きたきたきた、最初から無茶振り。
ここで <はい> を選ぶと、いきなり魔王の部屋へ飛ばされて、瞬殺される。
当然、 <はい> を選ぶべきだが、いやな予感がするので、<いいえ> を選んでおく。
<まあ、いきなりは無理か。それでは修行をしてまいれ。>
念のため、もう一度やってみるが、同じメッセージだった。
次にやるべきは、王様の後ろにある宝箱のゲットである。
が、本当に大丈夫だろうか。良く考えたら、いきなり目の前で城の宝箱を開けだすとか、不審者以外の何者でもない。
箱を開けた途端に、王様のそばの衛兵が襲い掛かってきてもおかしくは無いだろう。王様の部屋の衛兵と戦ったことはないが、今のレベルだと間違いなく瞬殺だ。
しばらく考えるが、先ほどから誰も俺を見ていないことにふと気が付いた。
いける! いけるはず!
おそるおそる玉座の後ろにまわり、宝箱をあける。そして、空けた瞬間に周りを伺うが、衛兵が動く気配はなかった。
しかし。
<金貨100枚をゲットしました>
いきなり目の前にメッセージが現れたので、思わず腰が抜けた・・・
数分後、ようやく動けるようになり、部屋をでて町に向かう。
それでは、となりの町にいくことにしよう。でも、その前に薬草と毒消し草を買っておくか。
道具屋も見た目はしょぼいが、入り口は自動ドアだった。
そして、道具屋のおやじに声をかけるが、反応はない。床を見ると、やはり光っているところがある。
<よう、よくきたな。ゆっくりみていってくれ。>
メッセージが現れ、商品リストが出てくる。その中から薬草や毒消し草を選ぶと、自動的にバックにはいり、所持金も減った。
なんていうか、webの通販で買い物をしているような感じだ。
道具屋をでて、町の出口へ向かう。
先ほどは気にならなかったが、町の人たちは同じ動きしかしていなかった。見た目がリアルな人間なので、結構気持ち悪い。
外に出ると、はるか向こうに町が見える。あれが次の目的地だろう。
町を出て、1時間ほどあるいているが、なかなか町には着かなかった。なんでこんなに遠いんだよ・・・
結局、2時間ほど経ったところでようやく次の町についた。
でも普通はモンスターの1匹ぐらいには出会うはずだが、まったく出会わなかった。
一休みして、町の人に話しかけよう。
「こんにちわ。」
反応がない。
「はじめまして。」
「やあ。」
「お初にお目にかかります。」
まったく反応がなかった。つうか、俺はなにやってんだ?!
地面を見渡すが、光っているところは無かった。
ムカッとして、目の前のおやじにデコピンをかます。
<よう、しってるか。東の洞窟には、宝があるそうだ>
いきなりメッセージが現れた。かなりびびったが、今回は腰を抜かすのだけは踏みとどまる。
ん?デコピンが鍵なのか?
ふと、おやじのほっぺたを突っついてみる。
<よう、しってるか。東の洞窟には、宝があるそうだ>
どうやら、顔を突っつくと、会話が始まるようだ。
ためしにとなりの女の人の胸をつっつくが、なにも起こらなかった。というか、マネキンなみに硬い。中にプレートアーマーでもきているのだろうか。
次々と、町の人の顔を突っついて、話を聞いていく。
どうやら、東の洞窟で宝をとってくると、話が進むらしい。そういえば、そんな話だったような気もする。
たしか、東の洞窟が序盤のレベル上げダンジョンだったな。
そして、東の洞窟に向かう前に、もう一つ確認すべきことがあった。
そう、家のタンスやツボの中を確認するのである。
家に入ってみる。どうみてもしょぼい家なのだが、入り口のドアは自動扉だった。
で、家の中にはおじいさんと娘がいた。でも、こちらには気が付いていないようだ。なんと無用心な・・
早速だが、タンスを開けてみる。なんか、泥棒にでもなったような気分だった。
王様の宝箱で、物をとっても大丈夫なことは確認済みだが、どうしてもタンスを開けた瞬間に、振り返って家の人を確認してしまう。
大丈夫だ。まったくこちらに気が付いていない。
安心したところで、盛大にタンスやツボを確認していく。
「こ、これは・・・」
そして、宝物はついに見つかった。
それは2つ目のタンスの上から2段目にあった。
そう、「クマさん柄のパンツ」。
この家には、おじいさんと娘しかいない。おじいさんが「クマさん柄のパンツ」を履く可能性はない。なぜなら、1つ目のタンスには、トラップのようにおじいさんの下着があったのを確認済みである。そして、おれはそのトラップにまんまと引っかかり、即死級のダメージをうけていた。
話を戻すが、まちがいなく神の使わした宝物に違いなかった。そして、娘はこれを俺に差し出す気がありあり。なぜなら、それをがんみしている俺を非難することも、動揺することもなく、普段とかわらない様子である。これは、つまり、そういうことだろう。
俺は神に感謝をささげ、厳かにその宝物に手を伸ばした。
「ん?」
なぜか、その宝物は取れなかった・・・ おかしい、神は俺をためしているのか・・・
つまり、なにか? おれはこの宝物に選ばれなかった勇者ということだろうか・・・
急激に、俺のモチベーションが消滅していくのが分かった。
俺は、この世界には不要な勇者なのだろう・・・
俺は、そっとその家を出た。
ふと考える。
そもそも、町の家の中に宝があるわけがない。
そう、宝はダンジョンの中や、城の宝箱の中、と相場が決まっている。
つまり、今目指すべきは東の洞窟であるはずだ。そして、そこには「クマさん柄のパンツ」を越えるお宝が、俺を待っているはずである。
さっそく東の洞窟へ向かう。
結局また1時間ぐらい歩かされたが、ようやくついた。
入り口で一休みした後、洞窟の中に入っていく。
洞窟の中は、一定間隔でたいまつで照らされていた。このたいまつは誰が交換しているのだろうか?と一瞬思ったが、そこはゲームだ。
しばらくすると、いきなりメッセージが現れた。
<スライムとあばれウサギがあらわれた>
目の前に、突然魔物が出てきた。
早速攻撃である。
ん? 武器がない。俺はなにも手に持ってなかった。
<スライムの攻撃 ちん○のHPが5減った。>
<あばれウサギの攻撃 ちん○のHPが2減った。ちん○は毒になった。>
うおっ、なんだこれ。
毒になった瞬間に、40度ぐらいの高熱がでたようなだるさに襲われ、吐き気がとまらなくなり、体が震えてきた。
あ、これはかなりまずい。というか、リアルで死にそうになってきた。
あわててVRギアを外し、深呼吸をする。
ちょっと落ち着いてきた。 よし、毒消し草を使おう。
VRギアをつけると、また体が震えてくるが、なんとかバックを開けようとした。
ん? バックがあかない。いろいろと試してみるが、まったくバックが開く気配はなかった。
というか、このバックは確かにものが入っている感触はあるが、見た目だけだった。
また耐え切れなくなったため、VRギアを外す。
ど、どうなってるんだ?
そうだ、取説だ! 取説を読め!
パッケージから取説を出して読み始める。
あった。
<毒を受けると、苦しいです。>
そんなものは、とっくに分かっている。どうやって直すんだよ。
<死亡すると、痛いです>
おいおい、痛いってなんだよ・・・ つうか、どのくらい痛いんだよ・・・
<道具は、メニューから選択してください。>
こ、これだ。毒消し草を使えばいいのだ。そして、バックから取り出すのはメニューから。
早速深呼吸したのちに、VRギアをつける。震えてくるが、そこを我慢してメニューを探す。
あった!
<メニュー> <どうぐ> <毒消し草> <使いますか?>
迷わず <つかう> を選択する。
一つ分かったことがある。毒消し草は、その名の通り草だった。見た目も味も草。はっきりいって、ものすごくまずい。唯でさえ吐きそうなのに、余計に吐きそうになった。しかし、そこを我慢して飲み込む。
そして、毒のマークが消え、急に楽になった。
<スライムの攻撃 ちん○のHPが3減った。>
<あばれウサギの攻撃 ちん○のHPが5減った。>
うわ、結局HPが15も減ってる。これで半分になってしまっているが、なんとなくまだいけそうな気がする。
深呼吸しろ、落ち着け。よし、状況を整理しよう。
まず、攻撃はターン制だ。道具を使うとターンを消費する。しかし、先ほどから攻撃をうけていない。これは俺の順番で止まっているということだ。
そして、俺は素手だった。たしか初期装備で剣があったはずだ。これを装備すればいい。
俺はもう一度メニューを探す。あった。
<メニュー> <そうび> <こんぼう> <装備しますか?>
う、こんぼうかよ・・・ 素手よりはましなので <はい> を選ぶ。
まだ、俺のターンのようだ。 よし、次は戦闘だ。
<メニュー> <せんとう> <たたく> <あばれウサギ>
いきなり俺の体が勝手に動き、いつの間にか持っていた棍棒で、あばれウサギを叩く。
<あばれウサギに10のダメージ。ちん○はあばれウサギを倒した。>
おお、あばれウサギを1発で倒した。勝手に体が動くのは気持ち悪いが、結構強かったようだ。
<スライムの攻撃 ちん○のHPが3減った。>
しかし、スライムからの攻撃を受けてしまう。とはいえ、のこり1匹。
あばれウサギは一撃だったので、スライムも1撃でたおせるだろう。
<メニュー> <せんとう> <たたく> <スライム>
また勝手に体が動く。なんか気持ち悪いな、これは。
<スライムに10のダメージ。ちん○はスライムを倒した。>
<まものたちをたおした。ちん○は金貨10枚と経験値150をゲット。レベルが2にあがった。>
おお、レベルが上がった。ちょっとだけ力が漲ったような気がする。
さて、ここで薬草を使うか、一旦町に帰るか。 ここは町に帰って宿屋で休むべきだろう。今の状態で薬草に頼ると、あっという間に金貨がなくなりそうだ。
俺は町に帰って、宿屋で休むことにする。
宿屋は金貨3枚だった。薬草が金貨5枚なので、しばらくは宿屋で回復をすべきだろう。
ということで、宿屋のベットにもぐりこむ。
10秒後、目が覚めた。まったく寝た間隔はないが、HPは回復していた。
うーん、これ精神的にきついな。精神的には仮眠にもなっていないぞ・・・
教会をさがしてセーブすることにするが、この町には教会がなかった・・・
結局、また2時間かけて城に戻り、ようやくセーブできた。
■ 2日目 ■
2時間かけて隣の町に行き、東の洞窟でレベル上げをする。
頑張った甲斐もあり、レベルは5まで上がり、武器も銅の剣をゲットし、防具も布の服から、旅人の服になった。
そろそろ、次の町にいってもいいだろう。
一旦、城に戻り教会でセーブしてから、次の町に向かった。
しばらく歩いていると、目の前には砂漠が広がっていた。そう、次の町は砂漠の中間付近にある。
生身であれば、到底無理な旅だが、そこはゲームである。魔物にさえ気をつければ大丈夫だ。
と、思っていた時期が、俺にもありました・・・
まず、途中で恐ろしく喉が渇いてきた。しかし、薬草と毒消し草ぐらいしかもっていない・・・
耐え切れずに、VRギアを外す。 ところが、その途端に死にそうな程の喉の渇きはなくなっていた。
念のため、コーラを一口のんだあとにもう一度VRギアをつける。突然、死にそうな程、喉が渇き始めた。
だ、ダメだ・・・
やむなく、VRギアを外して、リセットした。
再度、城の教会からのスタートである。
まずは、道具屋へ向かい、パンと水を買うことにする。
<よう、よくきたな。ゆっくりみていってくれ。>
まずはパンを選ぶ。パンは自動的にバックに入ったようだ。
そして、水を選ぶ。ん?なんかバックから水が滴ってきていた・・・
あわててメニューから道具を確認すると、水はなかった・・・
そして、全ての道具に <濡れた> という表示が付いていた・・・
なんだこれ・・・
ためしに、道具屋にいた男性の顔をつついてみる。
<水は水筒と一緒に買ったほうがいい。いや、そうするべきだ。でないと・・・>
水そのものを渡されるというオチか・・・
改めて、水筒と水を買うと、無事、水の入った水筒が道具にあった。
今度は無事砂漠を抜けて、町に辿り着いた。
途中、さそりなどとの戦闘をするが、銅の剣と旅人の服を装備していたので、問題なかった。
旅人の服は、なにげに侮れん。すまん、バカにしていたことを謝る。
町に入って、薬草や毒消し草を補充してから、人々の話を聞いて回った。
次は北の塔に向かい、姫の救出だった。
ふと、装備を見る。次のイベントは姫を仲間に入れる重要なものである。
以前のゲームでは、姫はものすごく可愛くないということだったが、今回はさすがに大丈夫だろう。
つまり、最初のインパクトは大事である。さすがに旅人の服では勇者っぽくない。
せめて革の鎧ぐらいは着ておくべきだろう。
さっそく防具屋へ向かい、革の鎧を買って装備する。旅人の服はその場で売り払った。
すまんな、旅人の服。
これで準備完了。さっそく北の塔に向かう。
北の塔は、そこそこ強い魔物がでるが、なんなくクリアする。そしてレベルも8に上がっていた。
しかし・・・
俺の目の前には、噂通りのものすごく可愛くない姫が眠っている。
たしか、姫にキスをして起こすと、仲間になってくれるはずだ。
うーん、なんの罰ゲームだよ、それ。
10分ほど悩んだが、とりあえず姫の顔をつっついてみる。
<姫にキスをして起こしますか?>
<いいえ>
<姫にキスをして起こしますか?>
<いいえ>
だ、ダメだ。おそらくこれは、<はい>を選んだ瞬間に、俺の意思とは関係なく、姫にキスをするパターンだろう。
しょうがない。覚悟を決める。
<姫にキスをして起こしますか?>
<はい>
うわっ、や、やめろーーーーーーーー ・・・・・
俺は吐きまくっていた・・・ せっかく買った革の鎧は俺の吐いたもので塗れていた。
しかし、非情に話はすすんでいく。
<まあ、あなたが勇者ですね。助けてくれてありがとうございます。お礼に仲間になりましょう。>
いや、断る。絶対断る。
<姫が仲間になりました。>
や、やめろーーーーーーーー
こうして、姫が仲間になってしまった・・・
分かったことが、いくつかある。
この姫は魔法が使えるので、その後の戦闘はものすごく楽になった。
そして、ずーっと俺のあとをついてくる。どこまでもついてくる。おそらく、トイレにもついてくるだろう。
お前はストーカーかと、問いたい、問い詰めたい。子一時間問い詰めたい。
でも、まったく会話は成立しなかった・・
なにを言っても、反応しない。パーティって、お互いに助け合い、励ましあい、和気藹々するもんじゃないのか?
これが現実なのか・・・
気を取り直して、隣の国に向かう。そこで王子が仲間になるはずだ。
そして、速攻で鉄の鎧を買って、この革の鎧ともおさらばである。実はまだ臭う・・
隣の国では、王子は中ボスの退治に出かけているという展開だ。
さっそく王子のいる中ボスの城に向かう。
あー、毒の沼だ。
これは避けられない。入っていくしかない。
毒の沼はステータスが毒になるわけではないので、入ってる間だけダメージを受けるのだが、俺の脳裏に毒のダメージが浮かび上がってくる。あれはきつい。
覚悟を決めて、毒の沼に入っていく。
げっ、うわっ、ぎょえっ。
なんとか毒の沼を抜けた・・・
ボス部屋につくと、王子とのやり取りメッセージが流れ、王子が仲間になった。
そして、中ボスとの戦闘開始である。
まあ、なんだ。このゲームは仲間に指示を出す必要があるんだが、指示を待つ間、なぜか姫も王子も俺をじっと見ている。
戦闘中なんだから、敵を見てろ、と思うんだが、俺をずっと見ている。しかも、中ボスも俺をがん見している。
ここにいる全員の注目を浴びるとか、なんの罰ゲームだよ。
結局、姫と王子が仲間になった状態だと、中ボスはあっという間に倒れた。
そして、レベルも10になり、帰還の呪文を覚えた。
これで帰りは毒の沼を通らずにすみそうだ。
さっそく帰還の呪文を使う。
<メニュー> <呪文> <帰還> <王子の城>
体がねじれるような感覚とともに、王子の城に帰還した。
が、俺は帰還の呪文によって、城の入り口で盛大に吐いていた。
なんというか、乗り物酔いのような感じだ。
すっかり吐ききってなんとか落ち着くが、誰も掃除はしてくれなかった。
しかたないので、自分で掃除する。
なんのための仲間なんだと・・・
掃除を済ませ、城のイベントを終えた。
■ 5日目 ■
姫と王子を仲間に加え、順調に進んでいる。
相変わらず後ろをストーカーよろしくついてくるだけだが。
ストーリーも後半にさしかかり、魔王に滅ぼされた村にいる。
滅ぼされた村なので、当然廃墟なわけだが、これが恐ろしく気味悪かった。
リアルなのも、良し悪しである。
で、イベントは幽霊との会話。ここで魔王を倒すために必要な武器を手に入れる。
ええ、白状します。幽霊との会話でちびりました。
だ、だってマジ怖いんだもの・・・
無事、武器を手に入れたので、先に進む。
気持ち、後ろを付いてくる2人の目が冷たいような気がする。
その後、なんだかんだで、レベルも30になっていた。
そして、武器の次は防具である。
すばやさの腕輪と、ドラゴンメイルをゲットするために、ダンジョンへ向かう。
ダンジョンの魔物は、そこそこ強いが、こちらもレベルは十分あるし装備もそこそこなので、サクサク進んでいく。
で、お約束の落とし穴に落ちた。
・・・凄く痛い。多分4mぐらい落ちている。流石に怪我はしていないし、HPも減ってはいないが、おそろしく痛かった。
鉄の鎧は結構重いので、かなりな勢いで落ちたので、当然といえば当然なのだが。
しばらくうずくまっていたが、ようやく動けるようになり、先に進んだ。
<踊る魔導士が現れた。>
<踊る魔導士の攻撃 ちん○のHPが35減った。 ちん○は混乱した。>
あ、ちょうちょだ。わーい、ちょうぢょ、ぢょうちょ・・・・
気が付くと、戦闘は終わっていた。なんだったんだ、あれは・・・
無事、すばやさの腕輪とドラゴンメイルをゲットした。
早速、装備する。
すばやさの腕輪は、10倍の速さで動けるようになり、ドラゴンメイルは、口から火を吐くことができるようになる。
さっそく使ってみる。
<あばれデーモンが現れた。>
<あばれデーモンの攻撃 ちん○は攻撃を避けた>
・・・魔物の攻撃をおそろしいスピードでかわした。でも、俺の体に恐ろしいGもかかった。まじで死ぬかと思った・・・
だめだ、すばやさの指輪は使えない。これはマジで死ぬ。
でも、大丈夫だ。まだドラゴンメイルがある。
<メニュー> <せんとう> <とくぎ> <火炎放射>
あっちちちっちちちち。うわっ、口を火傷した。
本当に口から火を吐くが、恐ろしく熱い。口の皮がむけたようだ。
とりあえず、道具から水筒を使って、水を飲む。口の中は痛いが、ちょっと落ち着いた。
・・・。 ・・・。
町に戻って、教会でセーブした。
■ 10日目 ■
最果ての村というところに寄り道している。
ここで踊り子のイベントをクリアしておくと、2周目に踊り子が仲間になる。
踊り子はそこそこ強いのだが、重要なのはそこではない。
なんと、踊り子はナイスバディの美少女なのである。ここ、ものすごく重要。テストにもでる。
ということで、魔物に捕らえられた踊り子を助けて、イベントクリア。
2周目に期待しつつ、踊り子に見送られながら村をあとにする。
そして、最終決戦となる、魔王の城へと向かう。
魔王と戦う準備は整っている。
特技は使えないが、ドラゴンメイルはゲットした。武器もゲットした。すばやさの腕輪は魔法使いの姫に装備させている。
回復が最優先で実行されるので、死ぬことはないだろう。ちなみに姫はどれほどのGがかかっても、けろっとしていた。さすがはNPCである。
魔王の城をどんどん攻略していく。もうね、2周目の踊り子フラグも立てたので、一気に進む進む。
あっという間に、魔王との戦闘である。
躊躇はしない。最初から全力で叩く。あっさりと第2形態になるが、これも全力で撃破する。火が吐けないので、もうちょっと苦労するかと思ったが、その分レベルを上げていたので問題なく進んでいく。
そして最終形態。これはさすがにきつかった。でも、薬草のまずさにも慣れたし、回復の呪文もあるので、思ったより楽に倒すことができた。
崩れていく魔王をみながら、俺は踊り子と2人きりのパーティを想像する。
会話がないのはあきらめるしかない。体も鉄のように硬いもあきらめる。でも、その美少女っぷりで十分おつりがくるのである。
そう、俺の脳内補完は完璧である。まあ、妄想と呼ぶ人もいるかもしれない。どっちにしろ、そこにはばら色の人生が待っているのである。
魔王を倒すと、スタートラインの城に飛んで、姫と結婚してテロップが流れる。そのあとで、待ちに待った2周目が始まるのである。
最初は吐きまくった帰還の呪文だが、なんとかなれてきた。ちょっと気持ち悪くはなるが、吐くほどではない。
城に戻ると、王様に報告に向かう。
なぜか、人の声がしていた。そして、町の人も城の人も、俺達を見ている。後ろを見ると、姫も王子も手を振って答えている。
さすがにエンディングぐらいはちゃんと作りこんでいたらしい。
王様の前に行くと、王様も声優が当てられていた。
「おう、ちん○よ、よくぞ魔王を倒した。褒美として姫との結婚を許そう。」
まあ、いらんな、そんなものは。つうか、エンドロールはよ、はよ。
一向にエンドロールが始まる気配はない。
いきなり、後ろから襲われた・・・
振り向くと魔物、いや姫に羽交い絞めにされているようだ・・・ なんだ、これは?!
「さあ、結婚の儀式をはじめましょう。」
姫はおそろしい声でそう言うと、俺を引きずっていく。
「や、やめろ!!」
「まあ、そんなに照れなくていいのに。」
いや、照れていない。純粋に嫌がっているのだが。
「私達は王様に認められた仲。なにも問題はございませんわ。」
いや、俺には問題がある。ありまくっている。エンドロールはどうした。
しょうがない、最後の手段だ。
俺はVRギアを外そうとするが、そこにはVRギアがなかった・・・
ど、どういうことだ・・・・ ま、まさか魔界、いやゲーム内に入ってしまったとか・・・
そうしている間にも、魔物 いや姫は俺をどんどん引きずっていき、ついに姫の部屋についてしまった。
そのまま、姫のベットに放り投げられる。そして、魔王より恐ろしい姫が襲い掛かってきた・・・
「さあ、ちん○様、ここが私達の愛の巣ですわ。」
や、やめろ・・ く、喰われる・・・・ 俺は意識を失った・・・
<おめでとうございます。末永く地獄を味わいください。>
<<END>>
マジ、つまらない話ですみません。それにもかかわらず、お読みいただきありがとうございました。