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昔の名作RPGをVRでやってみた件

作者: tamazo

昔のゲームがVRになるとどうなるか?という話です。

ドット絵のゲームをやったことがないと、ネタがまったく分からないと思います。

また、最後がネタというかバットエンドみたいになってますので、そういうのがまったく許せない方はご遠慮ください。

昔の名作RPGをVRでやってみた件



 子供の頃やった、名作RPG「ファイナルクエスト」のVR版というのが出たので、早速やってみる。

 


■ 1日目 ■

 

 VRギアをつけて、ゲームを起動する。

 

 目の前に「ファイナルクエスト」のマークが現れて、暗転するとメッセージがでた。

 

 <名前をきめてください>

 

 目の前にキーボードが浮かぶ。これで入力するのか。

 

 まあ、キャラクリとかはないか。いきなり、名前を決めて終わり。なんとも王道である。

 であれば、当然、名前は<ちん○>で決まりだ。

 

 ん?待てよ。VR版ってことは、名前を呼ばれるたびに、「ちん○、ちん○」と言われ続けるのか・・・

 ここは妥当に、ちゃんとした名前で行くべきか。

 いや、「ファイナルクエスト」の主人公は、「ちん○」というのが定説である。そこは譲れない。

 

 早速<ちん○>と入力する。

 

 <これでいいですか>

 

 <はい>を選ぶ。

 

 <ほんとうにいいですか>

 

 こんな感じだったっけ? <はい>を選ぶ。

 

 <後悔するなよ?>

 

 ここまでくれば、こっちにも意地がある。当然<はい>を選ぶ。

 

 すると、聞きなれたあのテーマソングが始まり、気が付くと町のはずれに立っていた。

 町は当然ドット絵ではなく、中世にありそうな現実そのものの町だった。

 

 とすると、次は王様に挨拶に行く必要があるな。

 俺は迷わず、町の中心にあるお城へ向かう。

 

 お城までの町並みは、なぜか懐かしさを感じる町並みだった。

 途中、武器屋や道具屋があった。思えば、あの頃はドット絵を見ながら、頭の中で目の前にあるような風景をイメージしていたように思う。

 そんなことを思っていると、城の前に着く。門の脇には警備がいるが、かまわず門をくぐる。

 声をかけられるかと思ったが、こちらを見ることすらせず、まったく無視された。決められたことしかしないNPCなのだろう。

 

 お城の中も、誰にも止められることなく進み、王様の部屋の前に着く。一度深呼吸をして、王様の部屋の扉に手をかける。

 

 その瞬間、王様の部屋の扉は自動ドアのように開いた。

 そして、その向こうにある玉座には、王様がいた。白いひげに派手なローブのような服装。そしてその頭にはキラキラした王冠が載っていた。まさしく王様である。

 

 俺はゆっくりと王様の前まで進み、跪く。

 

 「勇者、チン○でございます。」

 

 しばらく待つが、反応がない。

 

 「ちん○でーす。」

 

 「拙者がちん○である。」

 

 いろいろ試してみるが、反応がなかった。というか、王様は正面をむいたまま、動いていなかった。

 

 ふと見ると、床の模様が一部白く光っている。

 

 思い出した、ここを踏むんだった。

 その白く光ったところに移動すると、突然王様が話し出す。

 いや、正確には王様のセリフが、目の前にメッセージとして現れた。

 でも、VRなのにしゃべらないとか、どうなってるんだこれ。

 

 <おう、ちん○よ、良くぞ来た。早速だが、魔王を倒してまいれ。>

 

 きたきたきた、最初から無茶振り。

 ここで <はい> を選ぶと、いきなり魔王の部屋へ飛ばされて、瞬殺される。

 当然、 <はい> を選ぶべきだが、いやな予感がするので、<いいえ> を選んでおく。

 

 <まあ、いきなりは無理か。それでは修行をしてまいれ。>

 

 念のため、もう一度やってみるが、同じメッセージだった。


 

 次にやるべきは、王様の後ろにある宝箱のゲットである。

 

 が、本当に大丈夫だろうか。良く考えたら、いきなり目の前で城の宝箱を開けだすとか、不審者以外の何者でもない。

 箱を開けた途端に、王様のそばの衛兵が襲い掛かってきてもおかしくは無いだろう。王様の部屋の衛兵と戦ったことはないが、今のレベルだと間違いなく瞬殺だ。

 

 しばらく考えるが、先ほどから誰も俺を見ていないことにふと気が付いた。

 

 いける! いけるはず!

 

 おそるおそる玉座の後ろにまわり、宝箱をあける。そして、空けた瞬間に周りを伺うが、衛兵が動く気配はなかった。

 

 しかし。

 

 <金貨100枚をゲットしました>

 

 いきなり目の前にメッセージが現れたので、思わず腰が抜けた・・・

 

 数分後、ようやく動けるようになり、部屋をでて町に向かう。

 

 それでは、となりの町にいくことにしよう。でも、その前に薬草と毒消し草を買っておくか。

 

 道具屋も見た目はしょぼいが、入り口は自動ドアだった。

 そして、道具屋のおやじに声をかけるが、反応はない。床を見ると、やはり光っているところがある。

 

 <よう、よくきたな。ゆっくりみていってくれ。>

 

 メッセージが現れ、商品リストが出てくる。その中から薬草や毒消し草を選ぶと、自動的にバックにはいり、所持金も減った。

 なんていうか、webの通販で買い物をしているような感じだ。

 

 道具屋をでて、町の出口へ向かう。

 先ほどは気にならなかったが、町の人たちは同じ動きしかしていなかった。見た目がリアルな人間なので、結構気持ち悪い。

 

 外に出ると、はるか向こうに町が見える。あれが次の目的地だろう。

 

 町を出て、1時間ほどあるいているが、なかなか町には着かなかった。なんでこんなに遠いんだよ・・・

 

 結局、2時間ほど経ったところでようやく次の町についた。

 でも普通はモンスターの1匹ぐらいには出会うはずだが、まったく出会わなかった。

 

 一休みして、町の人に話しかけよう。

 

 「こんにちわ。」

 

 反応がない。

 

 「はじめまして。」

 

 「やあ。」

 

 「お初にお目にかかります。」

 

 まったく反応がなかった。つうか、俺はなにやってんだ?!

 地面を見渡すが、光っているところは無かった。

 

 ムカッとして、目の前のおやじにデコピンをかます。

 

 <よう、しってるか。東の洞窟には、宝があるそうだ>

 

 いきなりメッセージが現れた。かなりびびったが、今回は腰を抜かすのだけは踏みとどまる。

 

 ん?デコピンが鍵なのか?

 ふと、おやじのほっぺたを突っついてみる。

 

 <よう、しってるか。東の洞窟には、宝があるそうだ>

 

 どうやら、顔を突っつくと、会話が始まるようだ。

 ためしにとなりの女の人の胸をつっつくが、なにも起こらなかった。というか、マネキンなみに硬い。中にプレートアーマーでもきているのだろうか。

 

 次々と、町の人の顔を突っついて、話を聞いていく。

 

 どうやら、東の洞窟で宝をとってくると、話が進むらしい。そういえば、そんな話だったような気もする。

 たしか、東の洞窟が序盤のレベル上げダンジョンだったな。

 

 そして、東の洞窟に向かう前に、もう一つ確認すべきことがあった。

 そう、家のタンスやツボの中を確認するのである。

 

 家に入ってみる。どうみてもしょぼい家なのだが、入り口のドアは自動扉だった。

 で、家の中にはおじいさんと娘がいた。でも、こちらには気が付いていないようだ。なんと無用心な・・

 

 早速だが、タンスを開けてみる。なんか、泥棒にでもなったような気分だった。

 王様の宝箱で、物をとっても大丈夫なことは確認済みだが、どうしてもタンスを開けた瞬間に、振り返って家の人を確認してしまう。

 大丈夫だ。まったくこちらに気が付いていない。

 安心したところで、盛大にタンスやツボを確認していく。

 

 「こ、これは・・・」

 

 そして、宝物はついに見つかった。

 それは2つ目のタンスの上から2段目にあった。

 

 そう、「クマさん柄のパンツ」。

 この家には、おじいさんと娘しかいない。おじいさんが「クマさん柄のパンツ」を履く可能性はない。なぜなら、1つ目のタンスには、トラップのようにおじいさんの下着があったのを確認済みである。そして、おれはそのトラップにまんまと引っかかり、即死級のダメージをうけていた。

 

 話を戻すが、まちがいなく神の使わした宝物に違いなかった。そして、娘はこれを俺に差し出す気がありあり。なぜなら、それをがんみしている俺を非難することも、動揺することもなく、普段とかわらない様子である。これは、つまり、そういうことだろう。

 

 俺は神に感謝をささげ、厳かにその宝物に手を伸ばした。

 

 「ん?」

 

 なぜか、その宝物は取れなかった・・・ おかしい、神は俺をためしているのか・・・

 つまり、なにか? おれはこの宝物に選ばれなかった勇者ということだろうか・・・

 

 急激に、俺のモチベーションが消滅していくのが分かった。

 俺は、この世界には不要な勇者なのだろう・・・

 

 俺は、そっとその家を出た。

 

 ふと考える。

 

 そもそも、町の家の中に宝があるわけがない。

 そう、宝はダンジョンの中や、城の宝箱の中、と相場が決まっている。

 つまり、今目指すべきは東の洞窟であるはずだ。そして、そこには「クマさん柄のパンツ」を越えるお宝が、俺を待っているはずである。

 

 さっそく東の洞窟へ向かう。

 

 結局また1時間ぐらい歩かされたが、ようやくついた。

 入り口で一休みした後、洞窟の中に入っていく。

 

 洞窟の中は、一定間隔でたいまつで照らされていた。このたいまつは誰が交換しているのだろうか?と一瞬思ったが、そこはゲームだ。

 

 しばらくすると、いきなりメッセージが現れた。

 

 <スライムとあばれウサギがあらわれた>

 

 目の前に、突然魔物が出てきた。

 

 早速攻撃である。

 

 ん? 武器がない。俺はなにも手に持ってなかった。

 

 <スライムの攻撃 ちん○のHPが5減った。>

 

 <あばれウサギの攻撃 ちん○のHPが2減った。ちん○は毒になった。>

 

 うおっ、なんだこれ。

 毒になった瞬間に、40度ぐらいの高熱がでたようなだるさに襲われ、吐き気がとまらなくなり、体が震えてきた。

 

 あ、これはかなりまずい。というか、リアルで死にそうになってきた。

 

 あわててVRギアを外し、深呼吸をする。

 ちょっと落ち着いてきた。 よし、毒消し草を使おう。

 

 VRギアをつけると、また体が震えてくるが、なんとかバックを開けようとした。

 

 ん? バックがあかない。いろいろと試してみるが、まったくバックが開く気配はなかった。

 というか、このバックは確かにものが入っている感触はあるが、見た目だけだった。

 

 また耐え切れなくなったため、VRギアを外す。

 

 ど、どうなってるんだ?

 

 そうだ、取説だ! 取説を読め!

 

 パッケージから取説を出して読み始める。

 

 あった。

 

 <毒を受けると、苦しいです。>

 

 そんなものは、とっくに分かっている。どうやって直すんだよ。

 

 <死亡すると、痛いです>

 

 おいおい、痛いってなんだよ・・・ つうか、どのくらい痛いんだよ・・・

 

 <道具は、メニューから選択してください。>

 

 こ、これだ。毒消し草を使えばいいのだ。そして、バックから取り出すのはメニューから。

 

 早速深呼吸したのちに、VRギアをつける。震えてくるが、そこを我慢してメニューを探す。

 

 あった!

 

 <メニュー> <どうぐ> <毒消し草> <使いますか?>

 

 迷わず <つかう> を選択する。

 

 一つ分かったことがある。毒消し草は、その名の通り草だった。見た目も味も草。はっきりいって、ものすごくまずい。唯でさえ吐きそうなのに、余計に吐きそうになった。しかし、そこを我慢して飲み込む。

 

 そして、毒のマークが消え、急に楽になった。

 

 <スライムの攻撃 ちん○のHPが3減った。>

 

 <あばれウサギの攻撃 ちん○のHPが5減った。>

 

 うわ、結局HPが15も減ってる。これで半分になってしまっているが、なんとなくまだいけそうな気がする。

 

 深呼吸しろ、落ち着け。よし、状況を整理しよう。

 

 まず、攻撃はターン制だ。道具を使うとターンを消費する。しかし、先ほどから攻撃をうけていない。これは俺の順番で止まっているということだ。

 そして、俺は素手だった。たしか初期装備で剣があったはずだ。これを装備すればいい。

 

 俺はもう一度メニューを探す。あった。

 

 <メニュー> <そうび> <こんぼう> <装備しますか?>

 

 う、こんぼうかよ・・・ 素手よりはましなので <はい> を選ぶ。

 

 まだ、俺のターンのようだ。 よし、次は戦闘だ。

 

 <メニュー> <せんとう> <たたく> <あばれウサギ>

 

 いきなり俺の体が勝手に動き、いつの間にか持っていた棍棒で、あばれウサギを叩く。

 

 <あばれウサギに10のダメージ。ちん○はあばれウサギを倒した。>

 

 おお、あばれウサギを1発で倒した。勝手に体が動くのは気持ち悪いが、結構強かったようだ。

 

 <スライムの攻撃 ちん○のHPが3減った。>

 

 しかし、スライムからの攻撃を受けてしまう。とはいえ、のこり1匹。

 あばれウサギは一撃だったので、スライムも1撃でたおせるだろう。

 

 <メニュー> <せんとう> <たたく> <スライム>


 また勝手に体が動く。なんか気持ち悪いな、これは。

 

 <スライムに10のダメージ。ちん○はスライムを倒した。>

 

 <まものたちをたおした。ちん○は金貨10枚と経験値150をゲット。レベルが2にあがった。>


 おお、レベルが上がった。ちょっとだけ力が漲ったような気がする。

 さて、ここで薬草を使うか、一旦町に帰るか。 ここは町に帰って宿屋で休むべきだろう。今の状態で薬草に頼ると、あっという間に金貨がなくなりそうだ。

 

 俺は町に帰って、宿屋で休むことにする。

 

 宿屋は金貨3枚だった。薬草が金貨5枚なので、しばらくは宿屋で回復をすべきだろう。

 ということで、宿屋のベットにもぐりこむ。

 

 10秒後、目が覚めた。まったく寝た間隔はないが、HPは回復していた。

 

 うーん、これ精神的にきついな。精神的には仮眠にもなっていないぞ・・・

 

 教会をさがしてセーブすることにするが、この町には教会がなかった・・・

 

 結局、また2時間かけて城に戻り、ようやくセーブできた。

 

 

■ 2日目 ■


 2時間かけて隣の町に行き、東の洞窟でレベル上げをする。

 

 頑張った甲斐もあり、レベルは5まで上がり、武器も銅の剣をゲットし、防具も布の服から、旅人の服になった。

 

 そろそろ、次の町にいってもいいだろう。

 

 一旦、城に戻り教会でセーブしてから、次の町に向かった。

 

 しばらく歩いていると、目の前には砂漠が広がっていた。そう、次の町は砂漠の中間付近にある。

 生身であれば、到底無理な旅だが、そこはゲームである。魔物にさえ気をつければ大丈夫だ。

 

 と、思っていた時期が、俺にもありました・・・

 

 まず、途中で恐ろしく喉が渇いてきた。しかし、薬草と毒消し草ぐらいしかもっていない・・・

 耐え切れずに、VRギアを外す。 ところが、その途端に死にそうな程の喉の渇きはなくなっていた。

 念のため、コーラを一口のんだあとにもう一度VRギアをつける。突然、死にそうな程、喉が渇き始めた。

 

 だ、ダメだ・・・

 

 やむなく、VRギアを外して、リセットした。

 

 再度、城の教会からのスタートである。

 

 まずは、道具屋へ向かい、パンと水を買うことにする。

 

 <よう、よくきたな。ゆっくりみていってくれ。>

 

 まずはパンを選ぶ。パンは自動的にバックに入ったようだ。

 そして、水を選ぶ。ん?なんかバックから水が滴ってきていた・・・

 

 あわててメニューから道具を確認すると、水はなかった・・・

 そして、全ての道具に <濡れた> という表示が付いていた・・・

 なんだこれ・・・

 

 ためしに、道具屋にいた男性の顔をつついてみる。

 

 <水は水筒と一緒に買ったほうがいい。いや、そうするべきだ。でないと・・・>

 

 水そのものを渡されるというオチか・・・

 

 改めて、水筒と水を買うと、無事、水の入った水筒が道具にあった。

 

 今度は無事砂漠を抜けて、町に辿り着いた。

 途中、さそりなどとの戦闘をするが、銅の剣と旅人の服を装備していたので、問題なかった。

 旅人の服は、なにげに侮れん。すまん、バカにしていたことを謝る。

 

 町に入って、薬草や毒消し草を補充してから、人々の話を聞いて回った。

 

 次は北の塔に向かい、姫の救出だった。

 

 ふと、装備を見る。次のイベントは姫を仲間に入れる重要なものである。

 以前のゲームでは、姫はものすごく可愛くないということだったが、今回はさすがに大丈夫だろう。

 つまり、最初のインパクトは大事である。さすがに旅人の服では勇者っぽくない。

 せめて革の鎧ぐらいは着ておくべきだろう。

 

 さっそく防具屋へ向かい、革の鎧を買って装備する。旅人の服はその場で売り払った。

 すまんな、旅人の服。

 

 これで準備完了。さっそく北の塔に向かう。

 

 北の塔は、そこそこ強い魔物がでるが、なんなくクリアする。そしてレベルも8に上がっていた。

 しかし・・・

 

 俺の目の前には、噂通りのものすごく可愛くない姫が眠っている。

 たしか、姫にキスをして起こすと、仲間になってくれるはずだ。

 うーん、なんの罰ゲームだよ、それ。

 

 10分ほど悩んだが、とりあえず姫の顔をつっついてみる。

 

 <姫にキスをして起こしますか?>

 

 <いいえ>

 

 <姫にキスをして起こしますか?>

 

 <いいえ>

 

 だ、ダメだ。おそらくこれは、<はい>を選んだ瞬間に、俺の意思とは関係なく、姫にキスをするパターンだろう。

 

 しょうがない。覚悟を決める。

 

 <姫にキスをして起こしますか?>

 

 <はい>

 

 うわっ、や、やめろーーーーーーーー ・・・・・

 

 俺は吐きまくっていた・・・ せっかく買った革の鎧は俺の吐いたもので塗れていた。

 

 しかし、非情に話はすすんでいく。

 

 <まあ、あなたが勇者ですね。助けてくれてありがとうございます。お礼に仲間になりましょう。>

 

 いや、断る。絶対断る。

 

 <姫が仲間になりました。>

 

 や、やめろーーーーーーーー

 

 こうして、姫が仲間になってしまった・・・

 

 

 分かったことが、いくつかある。

 この姫は魔法が使えるので、その後の戦闘はものすごく楽になった。

 そして、ずーっと俺のあとをついてくる。どこまでもついてくる。おそらく、トイレにもついてくるだろう。

 お前はストーカーかと、問いたい、問い詰めたい。子一時間問い詰めたい。

 

 でも、まったく会話は成立しなかった・・

 なにを言っても、反応しない。パーティって、お互いに助け合い、励ましあい、和気藹々するもんじゃないのか?

 これが現実なのか・・・

 

 気を取り直して、隣の国に向かう。そこで王子が仲間になるはずだ。

 そして、速攻で鉄の鎧を買って、この革の鎧ともおさらばである。実はまだ臭う・・

 

 隣の国では、王子は中ボスの退治に出かけているという展開だ。

 さっそく王子のいる中ボスの城に向かう。

 

 あー、毒の沼だ。

 これは避けられない。入っていくしかない。

 毒の沼はステータスが毒になるわけではないので、入ってる間だけダメージを受けるのだが、俺の脳裏に毒のダメージが浮かび上がってくる。あれはきつい。

 

 覚悟を決めて、毒の沼に入っていく。

 

 げっ、うわっ、ぎょえっ。

 

 なんとか毒の沼を抜けた・・・

 

 ボス部屋につくと、王子とのやり取りメッセージが流れ、王子が仲間になった。

 そして、中ボスとの戦闘開始である。

 

 まあ、なんだ。このゲームは仲間に指示を出す必要があるんだが、指示を待つ間、なぜか姫も王子も俺をじっと見ている。

 戦闘中なんだから、敵を見てろ、と思うんだが、俺をずっと見ている。しかも、中ボスも俺をがん見している。

 

 ここにいる全員の注目を浴びるとか、なんの罰ゲームだよ。

 

 結局、姫と王子が仲間になった状態だと、中ボスはあっという間に倒れた。

 

 そして、レベルも10になり、帰還の呪文を覚えた。

 これで帰りは毒の沼を通らずにすみそうだ。

 

 さっそく帰還の呪文を使う。

 

 <メニュー> <呪文> <帰還> <王子の城>

 

 体がねじれるような感覚とともに、王子の城に帰還した。

 が、俺は帰還の呪文によって、城の入り口で盛大に吐いていた。

 なんというか、乗り物酔いのような感じだ。

 

 すっかり吐ききってなんとか落ち着くが、誰も掃除はしてくれなかった。

 しかたないので、自分で掃除する。

 なんのための仲間なんだと・・・

 

 掃除を済ませ、城のイベントを終えた。

 


■ 5日目 ■

 

 姫と王子を仲間に加え、順調に進んでいる。

 相変わらず後ろをストーカーよろしくついてくるだけだが。

 

 

 ストーリーも後半にさしかかり、魔王に滅ぼされた村にいる。

 

 滅ぼされた村なので、当然廃墟なわけだが、これが恐ろしく気味悪かった。

 リアルなのも、良し悪しである。

 

 で、イベントは幽霊との会話。ここで魔王を倒すために必要な武器を手に入れる。

 ええ、白状します。幽霊との会話でちびりました。

 だ、だってマジ怖いんだもの・・・

 

 無事、武器を手に入れたので、先に進む。

 気持ち、後ろを付いてくる2人の目が冷たいような気がする。

 

 

 その後、なんだかんだで、レベルも30になっていた。

 

 そして、武器の次は防具である。

 

 すばやさの腕輪と、ドラゴンメイルをゲットするために、ダンジョンへ向かう。

 

 ダンジョンの魔物は、そこそこ強いが、こちらもレベルは十分あるし装備もそこそこなので、サクサク進んでいく。

 

 で、お約束の落とし穴に落ちた。

 

 ・・・凄く痛い。多分4mぐらい落ちている。流石に怪我はしていないし、HPも減ってはいないが、おそろしく痛かった。

 鉄の鎧は結構重いので、かなりな勢いで落ちたので、当然といえば当然なのだが。

 

 しばらくうずくまっていたが、ようやく動けるようになり、先に進んだ。

 

 

 <踊る魔導士が現れた。>

 

 <踊る魔導士の攻撃 ちん○のHPが35減った。 ちん○は混乱した。>

 

 あ、ちょうちょだ。わーい、ちょうぢょ、ぢょうちょ・・・・

 

 気が付くと、戦闘は終わっていた。なんだったんだ、あれは・・・

 

 

 無事、すばやさの腕輪とドラゴンメイルをゲットした。

 

 早速、装備する。

 すばやさの腕輪は、10倍の速さで動けるようになり、ドラゴンメイルは、口から火を吐くことができるようになる。

 

 さっそく使ってみる。

 

 <あばれデーモンが現れた。>

 

 <あばれデーモンの攻撃 ちん○は攻撃を避けた>

 

 ・・・魔物の攻撃をおそろしいスピードでかわした。でも、俺の体に恐ろしいGもかかった。まじで死ぬかと思った・・・

 

 だめだ、すばやさの指輪は使えない。これはマジで死ぬ。

 

 でも、大丈夫だ。まだドラゴンメイルがある。

 

 <メニュー> <せんとう> <とくぎ> <火炎放射>

 

 あっちちちっちちちち。うわっ、口を火傷した。

 本当に口から火を吐くが、恐ろしく熱い。口の皮がむけたようだ。

 

 とりあえず、道具から水筒を使って、水を飲む。口の中は痛いが、ちょっと落ち着いた。

 

 ・・・。 ・・・。

 

 町に戻って、教会でセーブした。

 

 

■ 10日目 ■

 

 最果ての村というところに寄り道している。

 

 ここで踊り子のイベントをクリアしておくと、2周目に踊り子が仲間になる。

 踊り子はそこそこ強いのだが、重要なのはそこではない。

 なんと、踊り子はナイスバディの美少女なのである。ここ、ものすごく重要。テストにもでる。

 

 ということで、魔物に捕らえられた踊り子を助けて、イベントクリア。

 

 2周目に期待しつつ、踊り子に見送られながら村をあとにする。

 

 そして、最終決戦となる、魔王の城へと向かう。

 

 魔王と戦う準備は整っている。

 特技は使えないが、ドラゴンメイルはゲットした。武器もゲットした。すばやさの腕輪は魔法使いの姫に装備させている。

 回復が最優先で実行されるので、死ぬことはないだろう。ちなみに姫はどれほどのGがかかっても、けろっとしていた。さすがはNPCである。

 

 魔王の城をどんどん攻略していく。もうね、2周目の踊り子フラグも立てたので、一気に進む進む。

 

 あっという間に、魔王との戦闘である。

 

 躊躇はしない。最初から全力で叩く。あっさりと第2形態になるが、これも全力で撃破する。火が吐けないので、もうちょっと苦労するかと思ったが、その分レベルを上げていたので問題なく進んでいく。

 

 そして最終形態。これはさすがにきつかった。でも、薬草のまずさにも慣れたし、回復の呪文もあるので、思ったより楽に倒すことができた。

 

 崩れていく魔王をみながら、俺は踊り子と2人きりのパーティを想像する。

 会話がないのはあきらめるしかない。体も鉄のように硬いもあきらめる。でも、その美少女っぷりで十分おつりがくるのである。

 そう、俺の脳内補完は完璧である。まあ、妄想と呼ぶ人もいるかもしれない。どっちにしろ、そこにはばら色の人生が待っているのである。

 

 魔王を倒すと、スタートラインの城に飛んで、姫と結婚してテロップが流れる。そのあとで、待ちに待った2周目が始まるのである。

 

 最初は吐きまくった帰還の呪文だが、なんとかなれてきた。ちょっと気持ち悪くはなるが、吐くほどではない。

 城に戻ると、王様に報告に向かう。

 

 なぜか、人の声がしていた。そして、町の人も城の人も、俺達を見ている。後ろを見ると、姫も王子も手を振って答えている。

 さすがにエンディングぐらいはちゃんと作りこんでいたらしい。

 

 王様の前に行くと、王様も声優が当てられていた。

 

「おう、ちん○よ、よくぞ魔王を倒した。褒美として姫との結婚を許そう。」


 まあ、いらんな、そんなものは。つうか、エンドロールはよ、はよ。

 

 一向にエンドロールが始まる気配はない。

 

 いきなり、後ろから襲われた・・・

 

 振り向くと魔物、いや姫に羽交い絞めにされているようだ・・・ なんだ、これは?!

 

「さあ、結婚の儀式をはじめましょう。」


 姫はおそろしい声でそう言うと、俺を引きずっていく。

 

「や、やめろ!!」


「まあ、そんなに照れなくていいのに。」


 いや、照れていない。純粋に嫌がっているのだが。

 

「私達は王様に認められた仲。なにも問題はございませんわ。」


 いや、俺には問題がある。ありまくっている。エンドロールはどうした。

 

 しょうがない、最後の手段だ。

 俺はVRギアを外そうとするが、そこにはVRギアがなかった・・・

 

 ど、どういうことだ・・・・ ま、まさか魔界、いやゲーム内に入ってしまったとか・・・

 

 そうしている間にも、魔物 いや姫は俺をどんどん引きずっていき、ついに姫の部屋についてしまった。

 そのまま、姫のベットに放り投げられる。そして、魔王より恐ろしい姫が襲い掛かってきた・・・

 

 「さあ、ちん○様、ここが私達の愛の巣ですわ。」

 

 や、やめろ・・ く、喰われる・・・・ 俺は意識を失った・・・

 

 <おめでとうございます。末永く地獄を味わいください。>


 <<END>> 


マジ、つまらない話ですみません。それにもかかわらず、お読みいただきありがとうございました。

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