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無名

「………」

 目を醒ますとそこは暗闇だった。

 何も見えないその世界で、私は横になっているらしく、慎重に立ち上がる。

「………」

 辺りを見回すと、少し先に微かに明るい場所があり、私はゆっくりと近づいていく。

 その光源は複数の丸い水晶のような物だった。

 私はそっと手近に在る水晶の一つを覗いてみる。中には見たことのある世界が広がっていた。

「………」

 次に私は隣にある似たような水晶へと視線を移す。その中には見知った顔がいくつか映っていた。

(?…私は彼らの事を知っている?)

 その隣の水晶にも見た事がある人物が映っていたが、やはり誰かは分からなかった。

「………」

 私は思い出せないのが申し訳なくて頭を横に振る。そして更に隣の水晶を覗き込むと、そこには見たことのない何かが移っていた。

「………」

 私はふと、なにかに導かれるように顔をあげると、変わらず暗黒に包まれている周りを再度見回してみる。すると突然、頭の奥に響くような音とともに様々な映像が脳裏を過ぎり、私は記憶を取り戻した。

「………あぁ、そうか、私は――――」

 その小さな呟きは、誰の耳に届くこともなく、暗闇の中へと消えていった。


 「勇者と名無し」はこれにて完結となります。

 色々と省略してしまった部分が多々ありましたが、なんとか完走です。

 ここまで読んでくださりありがとうございました。

 次の物語でお会い出来れば幸いです。それではまた。

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