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仕様です

夕方になった。

 挨拶や紹介もそこそこにカルマはライテに部屋に案内された。

「ここをお使いください」

 案内された部屋は一階のすこし奥まったところだった。

「あの、本当にいいんでしょか?」

 「泊めてもらっていいんでしょうか?」「ギルマスに確認しなくてもいいんでしょうか?」などいろいろ省略された問いだったが、ライテはちゃんと理解したようで、

「大丈夫ですよ」

 と、笑顔で答えた後に、

「ギルマスももうじきお戻りになるはずです」

 と、付け足すのだった。



「夜天光ね」

 ライテの言葉を思い出す。

「確か評議会のひとりがそんな名前のギルドのギルマスしていたような……」

 案内された部屋でそんな事を考えていると、外がすこし騒がしくなった気がした。



「おかえりなさいませ、旦那様」

 扉を開けると、そう出迎えるライテ。

「ただいま、俺が留守の間何かあったか?」

 ライテに問う声は、低くはあったが明るかった。

「はい、いろいろと」

 ライテは声の主と広間に向かいながら留守の間に起こった出来事を報告する。



 外がすこし騒がしくなってしばらくすると、カルマの居る部屋に静かなノックの音が響いた。

「ライテです。カルマさま、いまよろしいでしょうか?」

 ライテの確認の声を聞き慌ててドアを開けるカルマ。

「お休みのところすいません。旦那様…ギルマスが先ほどおかえりになりましたのでご報告を」

 ドアを開けるとカルマが口を開くよりはやくライテは一礼すると、そう告げる。

「ありがとうございます。いま挨拶に伺っても大丈夫でしょうか?」

 モーリエに言われたとはいえ、ここの家主はモーリエの父親であるギルマスなので、ちゃんと確認をとっておきたかったのである。なのでギルマスが帰宅したら教えてほしいとライテに頼んでおいたのだった。

「はい、旦那様もカルマさまにお会いしたいそうです」

 柔らかい笑みを浮かべるライテに少し鼓動が速くなるカルマ。

(まさかここまで年上に弱いとは……)

 カルマにとってお姉さん然としたライテは好みのど真ん中だっただけではなく、さま付けに慣れないというのも緊張する理由だった。

「あ、あのやはりさま付けは――」

「仕様です」

 ニコリと笑顔でカルマの言葉を両断するライテ、何度か頼むも聞き入れてはもらえないのだった。




 ライテに広間に案内されたカルマは、そこでこの屋敷の主に紹介された。

「お、君がカルマ君か。私はギルド『夜天光』のギルドマスターをしているオグンだ。娘と息子が世話になったようだな、感謝する。好きなだけここに逗留してくれてかまわない、なんだったらウチのギルドに入るか?モーリエからも話は聞いた、歓迎するぞ」

カルマが挨拶をすると屋敷の主、『夜天光』のギルドマスターのオグンはにこやかに明るい声でそういうと、右手をカルマにさしだす。

「ありがとうございます。オグンさん直々のお誘い大変光栄ですが、まだこちらに来たばかりでいろいろ見てみたいのですぐに返事は――」

 カルマがオグンの握手に応じながらそう答えていると、

「かまわんよ、せっかく王都にきたんだ、いろいろみて見聞を広めるがいい。そのうえで入りたくなったら言ってくれ」

 カルマの返答は予想済みだったのだろう、途中で言葉を遮るとそう返してきた。

 カルマは「ありがとうございます」と礼をいうと、頭をさげた。

 その後、ギルドハウスにいた『夜天光』のメンバーに紹介され、夕食をみんなで食べ、談笑してその日は終わった。




「………」

 夜、ベッドのなかでカルマは一日を振り返る。

(王都は見て回れなかったけど、いい出会いには恵まれたな)

 そんなことを思いながら、外から月の薄明かりが入る部屋の見慣れない天井をぼんやり眺めていると、急に眠気が襲ってくる。

(さすがに疲れたな…)

 カルマはそのままゆっくりと夢の世界に旅立ったのだった。

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