嫌な魔力
ノーア荒野と呼ばれる一帯から半日程北に離れた場所に、様々なギルドに所属するギルドメンバーが集まっていた。
「これだけ人が集まると壮観ですね」
物珍しそうにその集団を眺めていたカルマは、興奮した口調で隣に居るイルカへと話しかける。
「そうですね、人の数だけでなく、これだけの数のギルドが一ヶ所に集まるなど、普通では有り得ない事ですからね」
カルマの言葉に視線を上げたイルカは、軽く周囲を見渡してそう答えた。
「オグンさんも来られるんですよね?」
「はい、もうすぐギルマスだけではなく、委員会のメンバー全員がこちらに来られる予定ですよ。まぁ、これは委員会による呼び掛けの結果ですからね、最後は主催者も参加するという訳ですよ」
「そ、そうなんですね」
イルカには珍しく、どことなく含みのある言い方に、ついどもってしまうカルマ。
「しかし…」
イルカはノーア荒野の方へと視線を向けると、眉根を寄せて呟く。
「これだけの数が必要な相手とは…この先から感じる嫌な魔力の元凶ですかね、やはり…」
そのイルカの予想は、この場に集まった誰もが感じているのだろう、周囲にはピリピリと緊張した空気が漂っていた。
「皆、集まっているな!」
そんな空気をかき消すかのような大声が周囲に響き渡る。
全員が声がした方へと振り向くと、そこには委員会のメンバー9人全員が、揃って立っていた。
「ふむ、我々の自己紹介は必要かな?」
全員の視線が自分達に向いたのを確認したオグンはひとつ頷くと、周りにそう確認する。
さすが委員会のメンバーと言うべきか、「いえ」という声や、首を横に振る動きで、集まった人達は自己紹介が必要ない事を伝えてきた。
「それはよかった。では、すぐにでも説明に移ろうか」
そう言うとオグンは、世界を消滅させる者の事と、これからそれと戦う旨を説明する。
皆の反応は様々だったが、先程からノーア荒野の方向から感じている嫌な魔力が、オグンの説明の証明のように感じ、全員の顔に緊張が走った。
「理解してもらえたようで何よりだ。しかし、戦うといってもまだ少しだけ時間がある、今から緊張していては身体が保たないぞ!」
ハハハと、豪快に笑ってみせるオグンに、集まった各ギルドのギルドメンバー達は、強張った表情を少しだけ緩めたのだった。




