表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/73

気の抜けた声

「…魔物の姿を見なくなりましたね」

 カルマは前を歩くイルカに話しかける。

「ええ、そうですね。あの土人形の軍団が魔物を殲滅しているらしいので、その影響かと」

 あれ以来、魔物の群れと戦闘になると、どこからともなく土人形の軍団が現れて、共闘するようになっていた。おかげで戦闘はかなり楽になり、疲れも大分取れたのだが、最近はその戦闘どころか、魔物の姿すら見なくなっていた。

「まぁ、近頃は歩いてるだけだから退屈ではあるけどさ、こっちの方が平和でいいよね~」

 カルマの隣を歩くミリが、気の抜けた声で話しかけてくる。

「ミリは緊張感が足りないな、いつなんどき襲われるか分からないんだぞ」

 そんなミリをカルマが軽く注意する。

「ここは見晴らしがいいからね、大丈夫だと思うよ」

 小さく両手を広げると、軽く肩をすくめるミリ。

 そんなミリの様子にため息を吐くカルマ。

「…イルカさん、近くの魔物の群れとか本部の方では把握してないんですか?」

「確認出来ている魔物の群れは近くには居ないみたいですよ。というより、もうほとんど魔物の群れは無いようですね」

「それじゃぁ、もう王都に帰れるんですか?」

 イルカの言葉に反応したミリが、横からそう問いかける。

「それは分からないですが、敵も少なくなってきたようですから、近いうちには帰還出来るかも知れませんね」

 小さく首を捻って視界の端にミリを捉えると、そう言って優しく微笑むイルカ。

「わーい、あと少しなら頑張ろう!」

 そう言って、ミリは左手を勢いよく天に向かってつきだすと、「おー」と嬉しそうに自分で自分に気合いを入れた。

「現金なやつだなぁ」

 そんなミリに苦笑しつつも、穏やかな顔をするカルマなのであった。







「さてと、魔物の群れも見なくなりましたし、そろそろここでの調整も終わりですかね」

 モナルカは左腕で肘を押して右腕の関節を伸ばすと、そのまま右腕で同じように左腕の関節も伸ばしながら、ティトルにそう確認する。

「はい、予想よりも魔物の数は多かったようですが、巧く調整出来たようで、ノーア荒野の魔力量は十分高まったようです。後は、世界を消滅させる者がこの世界に顕れるまでの少しの間、待機しておけばよいかと」

 相変わらずの淡々とした口調で答えるティトル。

「少しの間とはどれぐらいですか?」

「そうですね……、大体20日前後と言ったところでしょうか」

「わりと余裕が在るんですね」

 ティトルの言葉に、少し意外そうな顔をするモナルカ。

「世界を消滅させる者は存在そのものが強大ですから、この世界に姿を顕すだけでも結構時間が掛かるのですよ。ちなみに、顕れる過程で攻撃しても、顕れるまでは空気のような存在なので、攻撃は当たりません…一応ですが」

「なるほど。それでは、それまでの間何していましょうかね」

 モナルカは掌で口を覆うように手を置くと、何事かを考えるようにそのまま遠くを見る。

「そういえば、ここはノヒンの近くに位置するんでしたね。日数を考えれば、距離的にはちょうどいいぐらいですし」

 モナルカは気持ちを切り替えるように軽く手を叩くと、ノヒンに向けて歩きだす。

 ティトルは慌ててその後を追うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ