謎の軍団
「謎の軍団が魔物の群れと交戦している!?」
ギルド本部の会議室で、ロンが驚きの声を上げる。
「まぁまぁロン君、落ち着いて。急にそんなに大声を出すものではないよ、びっくりしてしまうからね」
そんなロンを穏やかな口調で注意するファン。
「あ!す、すいません。ですが、この報告は落ち着いてばかりもいられませんよ」
ロンは興奮気味に目の前の報告者を指さすと、そう主張する。
つい先程の事、現場と本部間の連絡を担当していた者が、急ぎで作ったのだろう簡単にまとめられた報告書を持って、委員会のメンバーが会議をしていた会議室を訪れた。
その連絡担当は、報告書を会議に参加していた委員会のメンバー全員に配ると、自らの口でも委員会のメンバーに報告した。報告の内容は、配られた報告書を補完するものだった。
曰く、ギルドメンバーが戦闘中に謎の軍団が援軍として現れたり、ギルドメンバーが接敵前に魔物の群れと戦闘し、此を撃破したりと、所属不明の謎の軍団が各地で魔物と交戦している。という話だった。
それと、判明しているその謎の軍団の特徴を報告すると、その連絡担当は会議室を後にした。
「ロンくん、君の意見も尤もだと思うが、知っての通り、現状我々は人手が不足している。謎の軍団については非常に気になりはするが、現在魔物の殲滅はしても、我々への邪魔は無く、寧ろ救援してもらっている状態だからな、こちらからどうこうするつもりは、今のところありはしないよ」
「しかし、オグンさん――」
まだ何か言おうとしたロンを遮って、ルーが発言する。
「その謎の軍団の正体なら、こちらで把握しています」
その発言に、会議室に居る全員の視線がルーに集まる。
ルーは全員を見渡して、視線が自分に集まっているのを確かめると、
「謎の軍団の正体は、以前お話しましたモナルカさんが造り出した人形です。こちらの人手が足りないので、その手助けをしてくださっているのです」
ルーはゆっくりと、しかししっかりとそう言葉を紡ぐ。
「報告にあるような強力で数の多い人形など聞いた事がありませんが」
ロンが困惑したように問いかける。
「それはそうでしょう、何せモナルカさん以外には不可能な芸当でしょうから」
「………」
納得出来ないという顔をしていたが、発言は控え静かになるロン。
「とにかく、先程の報告の謎の軍団というのは味方という事です」
ルーのその言葉で、報告の件に関しては、一応の区切りとなった。




