規格外
「こんなものですかね」
モナルカは目の前に整然と立ち並ぶ沢山の人形に、ひとつ満足気に頷く。
そんなモナルカの隣では、感心するような、呆れたようなため息を吐くティトルの姿があった。
「どうかされましたか?」
そんなティトルに、首をかしげるモナルカ。
「いえ、ただ…まるで、ではなく、神そのもの力のようだと思いましてね、少々驚いていました」
小さく首を振るティトル。
「神…ですか。そこまで大それた力は使ってないと思うのですがね」
不思議そうな顔でティトルを見返すモナルカ。
「一国の軍隊並の数の人形を創る力が大それた力ではなくてなんなんですか。…全く、モナルカ様には驚かされっぱなしですね」
呆れたような口調のなかに、どこか嬉しそうな響きのある呟きを漏らすティトル。
「予想総数が現在確認されている魔物の約倍ですからね。ノーア荒野の防衛に、各ギルドの援護、それと魔物の殲滅と、まだ足りないぐらいかと」
軽く肩をすくめるモナルカ。
「この人形1人の強さが並みの人間ぐらいならそうでしょうが、3人居れば大型の魔物さえ倒せそうな強さですからね。それにわたし達2人を加えますから、…十分過ぎる戦力ではないですか」
「戦力だけなら私達だけで魔物相手なら過剰戦力でしょうが、広大な土地を相手にするなら数が必要ですから。といっても、主に戦っているギルドの援護と、ギルド側が戦う前に魔物の索敵と殲滅ですがね。正直、魔物達を一気にここで迎え撃った方がこちらとしては楽なんですがね」
首に手を当てると、面倒くさそうにため息を吐くモナルカ。
「本部ギルドにも、本部ギルドの意地があるでしょうから、大人しく退いてはくれませんね」
淡々とした口調のティトル。
「『それは難しいでしょう』って、言われましたからね」
状況の説明と、戦っているギルドメンバー全員の撤退を進言した時のルーの言葉を思い出して、ついつい苦笑してしまうモナルカ。
「傷つくのはギルドメンバーでしょうに…」
「だからこそのこの人形ですよ。現在も戦闘中のギルドの人達を救援してますし」
「人形の行動全て把握してるんですか?」
驚きから僅かに目を見開くティトル。
「ええ、行動の把握だけではなく、全ての人形を操る事も可能ですよ…物凄く疲れますが」
「はぁ、やはりモナルカ様は規格外の存在なのですね」
ティトルは改めてモナルカの異質性を実感するのだった。




