さっさと
「まずはあの一群ですかね」
モナルカは右手で目の上に庇を作ると、小高い丘の上から少し離れたところを移動している魔物の一群を眺めながら呟く。
「はい。ルーさんとの打ち合わせ通りにいくなら、まずはあの魔物の一群の殲滅が、我らのお役目です」
隣でティトルが淡々とした口調で答える。
「ちゃんと大型も二体確認出来ますね。ではさっさと行って、さっさと終わらせますか」
モナルカはその場で軽く伸びをすると、そのまま丘の斜面を滑るようにして降りていく。
「どうやって戦うのですか?」
モナルカの隣で、丘の斜面を駆け降りているティトルが問いかける。
「そうですね、このまま行けばあの魔物の一群の正面にでられそうですからね、…正面から一気に斬りましょうか」
「はぁ、それはいささか時間が掛かるのでは?」
ティトルは、モナルカの言葉の意図が読めず、流麗な眉を僅かにしかめる。
「そうでもないですよ。私の剣を使えば複数体を一気に倒せるので、そう時間は掛からないはずです」
ちょっと近所に買い物に。ぐらいの気軽な口調で話すモナルカ。
「ふむ、…まだ完全には理解出来てませんが、モナルカ様がそう仰るなら大丈夫なのでしょう」
軽く肩をすくめてみせるティトル。
二人は丘を降りると、そのまま魔物の一群に向けて駆けだすと、すぐに二人は魔物の一団の正面に到着した。
「それでは、始めますか」
少し面倒そうな響きが混ざる掛け声を発するモナルカの手には、既に長さ三尺程の一振りの秋水が握られていた。
モナルカがおもむろにその剣を魔物の一群目掛けて虚空を薙ぐと、その軌跡が斬撃となって具現する。
その斬撃は、進む毎に横に広がりながら魔物目掛けて飛翔する。
その飛ぶ斬撃に触れた魔物は、片っ端から真っ二つになり灰になった。
「剣の軌跡を飛び道具にされるとは…」
目の前の光景に、少し呆れたように呟くティトル。
モナルカがそのまま二撃、三撃と魔物の一群に飛ぶ斬撃を撃ち込むと、一瞬にして魔物の半数以上が消滅する。
「う〜む、半分以上は倒せたようですが、まだまだ飛距離が足りないですね」
剣を目の前に掲げると、残念そうにため息を溢すモナルカ。
「…ここで愚痴っていてもしょうがないですね、残りもさっさと倒しましょうか」
そう言ってモナルカは魔物の一群との距離を詰めると、また先程の飛ぶ斬撃を、魔物の一群目掛けて撃ち放つ。
二撃、三撃と連続して飛来する攻撃に、残りの魔物達も成す術なく消滅した。
「大型に当たると威力が落ちますね、こちらも改善が必要なようで…」
剣を仕舞ったモナルカは、力無く息を吐いた。
「お疲れ様です」
ティトルがモナルカの隣に歩み寄る。
「次はこのまま南西でしたよね?」
ティトルに顔を向けると、そう確認するモナルカ。
「はい。次は大型の魔物が確認されている魔物一群を含む魔物の群れが2つ以上合流していると予想されている場所で、大型は予測通りならばおそらく三体が相手です」
「まぁ、大型がいくらいても関係ありませんけどね。しかし、合流したとなると、今回よりも魔物の数は多いという事でか。…少し時間掛かりそうですね」
そう言うと、モナルカは面倒くさそうに次の場所へと駆けだした。




