悪戯な笑顔
「せっかくだからギルドハウスを案内しよう」
書斎にて話が終わったあと、出ていこうとしていたモナルカを、オグンが両手を打ってそう提案して引き留めたのが少し前のこと。
「こちらが会議室です。主に国からの依頼など、大きな依頼を請ける時に使用します」
そして現在、モナルカにギルドハウス内を案内しているのはライテであった。
最初はオグンが張り切ってモナルカの案内をしていたのだが、本部からの急用ということで、渋々案内をライテに代わり、ギルド本部へと向かったのだった。
「委員会というのも大変ですね」
そんなオグンの事を思い出して、会議室を見回していたモナルカは、何気なくライテに話かける。
「そうですね、日常の雑務なども多いですが、急な呼び出しも結構ありますからね。特に王都に居る委員会のメンバーの方は忙しいようですよ」
「やはり責任ある立場ってのは面倒ですね」
肩を竦めてそんな事を言うモナルカに、ライテは悪戯な笑顔を浮かべると、
「それだけ得るモノも大きいですけどね」
「なるほど」
そう言うライテに、意味深な笑いを返すモナルカ。
「では、次の場所へご案内致します」
扉の方へと振り返ると、会議室を出ていくライテ。
「他のギルドハウスのなかを見たことがある訳ではありませんが、ここのギルドハウスは1部屋1部屋が広いのに色々な部屋があり、来客用やギルドメンバーの部屋なんかも数が多くて、結構広いですよね。それともギルドハウスっていうのはどこもこんな感じなんですか?」
周囲を眺めながら感心したように話すモナルカ。
「いいえ、それはギルドの大きさによって違ってきますね。ギルドハウスも維持費が掛かりますから、団員数や実績に応じて、小さいギルドは一般的な家屋の大きさのギルドハウスだったり、大きなギルドは貴族が住まう館のようなギルドハウスだったりと、色々です。それこそ、このギルドハウスよりも大きなギルドハウスだって存在するんですよ」
普段よりも楽しそうに解説するライテ。
もしもこの場にモーリエ以外の『夜天光』のメンバーの人間が1人でも居れば、いつもの淑やかな大人の女性らしい姿とは違うライテの姿に、驚きを禁じえない事だろう。
しかし、普段のライテをほとんど知らないモナルカにとっては、
(朝と印象が少し違うような気が?まぁ、慣れてくれた。という事でしょうか)
と、朝の客人向けだろう慇懃な態度と少し違うライテの様子に、こちらがどんな人間か理解が進んだんだろうなと思うだけであった。




