お役に立てるような情報はなにも
「すまないな、礼をしなければならない立場なのに呼び出してしまって」
書斎に入ると、オグンが申し訳なさそうにモナルカに話しかける。
「いえ、構いませんよ。それで昨日言っていた話とは?」
「あぁ、昨日も言ったが、やはり1人でテトラ遺跡は危ないと思うのだが…」
「私は大丈夫ですよ。今までも様々な遺跡を調べて来ましたので、自分の身の守り方ぐらいは心得てますから」
言いづらそうにするオグンに、モナルカは諭すような口調で返答をする。
「む、そうか。それならばいいのだが…、昨日言っていたテトラ遺跡にあるという魔物についてとはどういったものなのか何か分からないか?」
「確かな事はなにも」
「そうか」
首を横に振るモナルカに、残念そうに呟くオグン。
「訊きたいのだが、色々な遺跡を巡っているのなら魔物についてなにか分かった事はないか?」
「魔物について、ですか?」
漠然とした質問に首を傾げるモナルカ。
「あぁ、モナルカくんは先日王都方面へ魔物の進行があったのは知っているか?」
「はい、噂程度にですが」
「では、簡単に説明するが、つい先日の事だ、ニヒ遺跡、ケラト遺跡、キノドンダス遺跡の3つの遺跡から魔物が群れをなして移動してきたのだ。幸いというか、その魔物たちはノクターン森林で倒すことが出来たのだが、何故そんなことが起きたのかは未だに詳細は分かってはいない」
「だから魔物について知りたいと」
「ああ、そういうことだ」
力強く頷くオグン。
そんなオグンを見て困ったように頭をかくモナルカ。
「お役に立てるような情報はなにも」
「そうか、変なことを聞いてすまなかったな」
モナルカの返答に一瞬落胆の色をみせるも、直ぐに気を取り直してモナルカに答えるオグン。
(言ってもよかったかも知れませんね…)
そんなオグンをみて自分の推測ぐらいは話してもよかったかも知れないな。と思うモナルカであった。




