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最後の患者

 カランカランと、静かな室内に微かだが鳴り響くドアベルの音でカルマは我に返る。

「オグンさんが帰ってきたのかな?」

 カルマは壁に掛けてある時計に目を向けると、そう呟く。

「直ぐに行きますか?」

 モナルカは椅子から僅かに腰を浮かしてカルマに問いかける。

「へ?」

 モナルカの言葉の意味が理解出来ず間抜けな声を出すカルマ。

「オグンさんに私の事を紹介するのでは?」

「あ、ああ、そうそう、ちょっと待ってて、今時間大丈夫か訊いてくるから」

 部屋に来る道すがら自分が話した内容を思い出し、慌てて立ち上がると、部屋を出ていくカルマ。

「大丈夫ですかね」

 カルマが出ていった扉を眺めながら、心配そうにそう呟くモナルカ。

 暫くしてカルマが部屋に戻ってくる。

「今大丈夫みたいだから、オグンさんの書斎に行こうか」

 そう言うとさっさと廊下へ出ていくカルマ。

 モナルカはそんなカルマのあとを追いながら、オグンの書斎へと移動した。

「おお、君がカルマ君の弟さんか」

 カルマとモナルカが部屋に入ると、そう言って歓迎するオグン。

 部屋には、オグンの他にモーリエとライテの姿があった。

 カルマは3人にモナルカの紹介と、モナルカにオグンたち3人の紹介を簡単に済ませると、オグンはモナルカにカルマのギルドでの活躍を話してくれた。

「そうですか、皆さんにご迷惑をお掛けしてないのならば良かったです」

 大きく頷くと、胸に手をあてて安堵の声を出すモナルカ。

「ね、ねぇ、モナルカくん?…さん?」

「お好きなように」

「ありがとう。カルマから聞いたんだけどモナルカくんはさ、…狂化の治療が出来るって本当?」

 モーリエが勢いよくモナルカに話しかける。最後の方は祈るような真剣さが込められた質問だった。

「………」

 真剣な目でモナルカを見つめてくるモーリエ。よく見ると、オグンやライテも息を呑むほど真剣な眼差しをモナルカに向けていた。

「ええ、可能ですよ」

 そんな視線を受けながらも、モナルカは気楽に答える。

「本当か!?」

 モナルカの答えに誰よりも早く反応したのはオグンだった。

「ええ、本当ですよ」

 そんなオグンに、変わらず穏やかな口調で答えるモナルカ。

「で、では、1つモナルカくんに頼みがあるのだが」

「何でしょうか?」

 話の流れからオグンの頼みの内容を理解しながらも、礼儀として一応そう聞き返すモナルカ。

「今から約3年前になるが、私の妻が狂化してしまってね。現在は王都北東にある研究棟に拘束しているのだが、それを治療してはくれないだろうか?」

 オグンの頼みは予想通りの内容だったが、モナルカは一旦目を閉じると、少しの間を置く。

 その僅かな時間にモナルカは考える。デヒトを倒した以上もう狂化は起きないだろう。と。色々な場所に行き、色々な人間を見てきたが、あれほどの魔力と技術の持ち主は見当たらなかったから、再度狂化が起きる可能性は低いと考えているからだ。

(ならばこの依頼の患者が狂化の最後の患者でしょう、この治療をもって狂化の騒動に区切りをつけますか)

 モナルカはゆっくりと目蓋を上げる。そこには、緊張と期待の籠った4人分視線が向けられていた。

「分かりました、その依頼、引き受けましょう」

 その視線の中、モナルカははっきりとそう告げた。


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