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おとなしいミリ

 本来、王都サピオと呼ばれる場所は、ラソル王国の中心たる王の住まう城『ザイード』を中心に四方に拡がり、外側を城壁で囲まれた都市全体の事を指す。

 しかし、一般に王都サピオと言えば王城ザイードの南部一帯の事を指した。

 何故なら、王城ザイードの北部・東部・西部は主に王に仕える重臣や武官、文官やその家族が住んでおり、それぞれの役職によって居住する区画が決められていた。

 その他には各地の貴族などの王都での住まいがあり、その性質上外側は勿論のこと、内側も出入り可能な場所が限られ、出入口には門番が立っていた。

 その出入口を使用可能なのは、居住者の他に許可を得た商人や家屋の管理者など、生活を維持するのに必要な人間しか出入りが許可されておらず、許可のない人間は立ち入ることが出来ないので、自然と庶民にとっての王都は、自分たちの住まいがあり、自由に行き来が出来る南部を指すようになったのであった。

 ミリとカルマはそんな王都南部の観光名所や、自分たちそれぞれのおすすめの店や場所など色々な場所を時間が許す限りエドワードとサラに案内した。

 外はすっかり暗くなり、エドワードとサラを2人が部屋を借りている宿屋に送り届けると、カルマとミリの2人はギルドハウスに戻ってきた。

「あ〜、楽しかった!」

 ギルドハウスに戻ると、ミリは満足そうにそう言い、笑顔でカルマに感謝の言葉を述べると、頭を下げる。

「今日はありがとうカルマ。わたしの都合に付き合わせちゃってごめんね。だけど、おかげですごく楽しい時間が過ごせたよ。エドワードにぃとサラねぇも楽しそうだったし」

 そんな普段とは違っておとなしいミリに若干の戸惑いを覚えながらも、

「いや、大丈夫だよ。最初こそ緊張したけど、途中から俺も楽しんでたし。それにエドワードさんもサラさんもそんなに色々と訊いてくる人じゃなかったから助かったしね」

 そう答えると、カルマも笑顔をみせる。

「ね、元から大人っていうか、やるからには自己責任!みたいなところがあったけど、結構あっさりしてたのにはわたしも驚いた」

 ミリは今日1日を振り返って、エドワードとサラがあっさりとカルマを受け入れた事に多少の驚きを滲ませる。

「それだけミリを信頼してるのかもね」

「興味ないだけかも知れないよ。それかカルマがものすごく気に入られたか」

 笑顔でそう言い合う2人の元に、おそらくオグンの書斎か執務室から出てきたのだろう、2階から降りてきたライテが歩いてくると、2人の前で一礼する。

「お帰りなさいませ、カルマさま、ミリさま。お食事はいかがいたしましょうか?」

「わたしたちは外で食事は済ませましたので大丈夫ですよ」

 ライテの問いに答えるミリ。

「そうでしたか、それではわたくしはこれで――」

 そう言ってライテは頭を下げようとして、

「あぁそうでした、カルマさまに言伝ことづてを預かっていたのを失念していました」

 そう言ってライテはカルマの方へ顔を向ける。

「言伝て?誰からですか?」

 自分にわざわざ伝言を残すような相手に心当たりのないカルマは、そう言って首を傾げる。

「モナルカさまと仰る、カルマさまの弟だと名乗られた方からです」

「へ?モナルカ!」

 その名前に驚くカルマ。

「はい、モナルカさまから『明日の昼頃にまた来ます』と、カルマさまに伝えてほしいと頼まれました」

「モナルカはいつ頃来ましたか?」

「昼過ぎですね。カルマさま達が出掛けられたあと直ぐでしたので」

「そうですか、モナルカからの言伝てを預かっていただきありがとうございます」

 カルマがそう言うと、今度こそ頭を下げてその場をあとにするライテ。

「モナルカが来てるのか…」

 独り言のようにそう呟くカルマ。

「ごめんね、わたしが外に行こうなんて言わなければ弟くんに会えたのに」

 申し訳なさそうにそう言うミリ。

「いや、事前に聞いていたわけじゃないし、ミリのせいじゃないよ。それに明日また来るみたいだし」

 左右に首を振ると、優しくミリに微笑みかけるカルマ。

「…うん。ごめんね、ありがとう」

 そう言って一瞬カルマを見つめると、部屋に戻っていくミリ。

 そんなミリの姿が見えなくなるまで見送ると、

「さて、じゃ一応モーリエにも伝えといた方がいいかな」

 その場で一度両手を頭上に伸ばし、身体を反らして伸びをすると、モーリエの部屋へと足を向けるカルマだった。


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