異議あり!なんだよ
「ふぁ〜あ」
「眠そうだね」
大きな欠伸をするカルマの顔を覗き込むようにして訊いてくるミリ。
「誰かさんに朝っぱらから叩き起こされたからね」
そんなミリを恨めしそうに見つめるカルマ。
「まぁ!そんな人が居るの、カルマも大変だねぇ〜」
そんなカルマなどお構い無しに楽しそうにおどけるミリ。
「そうなんだよ、ミリって言ってな、少しだけ早くギルドに入っただけで先輩面する女の子でね、今朝も依頼を終えたばかりで朝はゆっくり寝てようとしてたら、扉を壊さんばかりの勢いで叩いてくるし、それを無視したらライテさんから合鍵を借りて部屋に入って来るし、更には無理やり叩き起こされて、あげく外に強引に連れ出されてで散々なんだよ」
前を向いてそう言うと、やれやれと首を横に振るカルマ。
「むー」
そんなカルマに頬を膨らませて抗議の眼差しを向けるミリ。
「どうした?そんなに膨れて」
「異議あり!なんだよ」
変わらずとぼけるカルマに、右手をしっかり上げて抗議するミリ。
「何に?」
「さっきの話にだよ!」
「はて、さっきの話とはどの話か…」
「ミリの話だよ!わたしはそんなに乱暴じゃなかった!」
ミリは唇をとがらせると、カルマの正面に回って抗議の眼差しのまま見上げる。
「ん〜?俺は事実をありのまま言っただけだが」
「違うよ!わたしそんなに強く扉叩いてないし、合鍵で扉開けた時はライテさんも一緒だったし、起こす時も毛布めくったぐらいだし、無理やり外に連れ出してないし。なによりわたしは別に先輩面なんてしてないもん」
そう一気にまくし立てるミリ。
「は?あの時ライテさんも居たの?!」
「扉開ける時だけね、開いたの確認したら合鍵返したからそのまま戻っていったし」
「よかった〜」
心の底から安堵の声を出すカルマ。
「むむ?カルマはライテさんに気があるのかにゃ?」
そんなカルマにニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべるミリ。
「ち、違うよ!別にそんなんじゃ…」
あたふたしながら答えるカルマを、ニヤニヤニタニタと愉しそうに見つめるミリ。
「き、今日はどこに行くんだ?」
「あ、露骨に話題替えた」
「いいだろ別に、今日の予定聞いてなかったのも事実だし」
「まぁいいか、今日はね、…特に予定はないよ。気分転換にぶらぶらしようかと、あえて予定というか希望を言うなら甘いものでも食べたいな」
「甘いものねぇ、なら中央広場にでも行ってみるか?」
「う〜ん、あの辺の店は粗方行ったし、今日はギルド本部近くの店がいいな〜」
「ギルド本部ねぇ、じゃ反対側だね」
目的が決まった2人は、そのまま回れ右すると、今来た道を戻り始めるのだった。




