これで今日は五匹目だな
「これでも喰らえ!」
掛け声と共に放たれた人の頭程の大きさの火球が、大型犬の貌をした魔物に命中する。
「よし!これで今日は五匹目だな」
先ほどまで大型犬に似た魔物だったモノが灰の塊になっているのを確認すると、ステルは次の獲物を探して歩き出す。
「ふぅ、それにしてもホントに沢山居るな」
周囲を警戒しながらも、五匹目を討伐した事で少し気の緩んだステルは、軽くぼやき始める。
「さすがにこう魔物退治が連日続けば疲れてくるな。まさかこんなに大変とは、うらみますよ、ギルマス」
そんな恨み言を口にすると、ステルはこの魔物退治の始まりとなった2週間ほど前の出来事を思い出していた。
◆
「みんなは集まったかな?」
「はい、招集した6名全員が会議室にてオグン様をお待ちしております」
ステルが魔物退治の不満を口にした時から2週間ほど前、王都サピオにあるギルド『夜天光』のギルドハウスのギルドマスターの書斎で、『夜天光』のギルドマスターオグンは、『夜天光』の一員でギルドハウスの管理を任せているライテと話をしていた。
「それじゃそろそろ会議室へ向かうかな」
そう言って、ゆっくりと椅子から立ち上がると、書斎を出ていくオグンと、その後に付いていくライテ。
「それにしてもオグン様、今回の任務は本当にあの6名でよろしいのですか?」
書斎を出て廊下を歩いている時、ライテが控え目に、しかししっかりとそう訊いてくる。
「何か気がかりでもあるのか?」
ライテのその問いに、オグンは歩みを止めて振り返る。
「ルルさま、ヤゴウさま、イルカさま、ステルさまは分かりますが、ミリさまとカルマさまはまだ新人、それも魔物との戦闘は未経験だと伺っていますが」
「なるほど。今回の任務の内容と重要性を考えればライテ、君の心配ももっともだと思うがね、だが今回の任務は招集した6人で大丈夫だよ。ミリ君は少々落ち着きがないところもあるが、ああ見えて戦闘のセンスはあるし、カルマ君は今でも純粋に強い、あとは経験を積めば俺でも勝てんだろうさ。だから今回は2人の経験も兼ねての抜擢だ、確認されている魔物程度なら遅れはとらんさ」
「そうでしたか、そのようなお考えとは知らず、差し出口申し訳ございません」
笑い出しそうなほど軽やかな口調で答えるオグンに、深々と頭を下げるライテ。
「構わんよ。さっきも言ったが、ライテの指摘ももっともだからな。それに、君の忌憚のない意見には毎度助かってるしな」
そう言って軽く笑うと、再度歩き出すオグンと、それに続くライテであった。




