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見せて!

「あの大鎌以外には何かないの?」

 カルマの話が一段落ついたところでそう質問するモーリエ。

「俺が持ってるので大鎌以外にだと…、あと剣と盾の2種類があるけど――」

 記憶を漁るように天井を見ながら答えるカルマ。

「見せて!」

 その答えに瞳を星空を写したかのように輝かせ、カルマとの距離を一気に縮めるモーリエ。

「っ!」

 そんなモーリエに再度驚き、今度は軽く後ろに身を引くカルマ。

 しかし、今度はそんなカルマの反応など意にも介さずに詰め寄るモーリエ。

「わ、わかったから少し落ち着いて」

 モーリエの両肩を掴み押し返すカルマと、それにより少し距離が離れるも、肩に置かれた手など気にもせずコクコクと頷きそのままカルマを目を輝かせたまま見つめるモーリエ。

「え、えっと、まずは剣だけど、別に珍しくもない魔工具だよ」

 モーリエの肩からゆっくりと手を離し、少し後ろに下がって距離を取ると、虚空に浮かぶ見えない何かを掴むように手を握り締める。するとそこから1本の剣が顕れる。

 飾り気のないその剣は、素朴ながらも白銀の光をまとったそれはそれは美しい剣だった。

「きれい」

 あまりの美しさに我知らずため息とともにそう声がでるモーリエ。

「うん、純粋に剣としては美しい剣だとは思うけど、魔工具としてはいたって普通のよく切れるだけの剣だよ」

 剣の切れ味を良くするのは、剣に付加する魔力のなかではもっとも一般的な性能である。

「そうなの?なんかこう、どことなく神々しさを感じるんだけど…」

 たしかに剣が纏う魔力は刃に集中しているようだったが、上手くは言えないが、それは一般的な切れ味上昇の魔力付加とはどことなく違うような気がした。

「そう言われてもな、貰っただけで俺これ使ったことないしな」

 困ったように剣を見つめるカルマと、観察するように剣を見つめるモーリエ。だけどモーリエのその瞳は研究者や技術者のそれというよりは芸術品を見るそれに近いような気がした。




「次は盾だけど、こっちはあまり出したくないんだよね…」

 剣を収めたカルマは、そう声を沈ませるも、モーリエの期待の眼差しに不承不承といった感じでそのまま虚空から1つの盾を顕す。

「ひっ!」

 重厚な鈍色をしたその盾には前面に人のにしてはおどろおどろし過ぎる目が彫られていた。

 その目は見る人を不安にも、不快にもさせ、見つめ続けると体の奥から言い知れぬ恐怖が沸き上がり、発狂してしまいそうだった。

「そ、その盾こっちに向けないで…」

 必死に目を逸らし、身体を恐怖で震わせカルマにそう頼むモーリエのその声も震えていた。

「ご、ごめん」

 慌てて盾を収めるカルマ。

「な、なん、なんなのその恐い盾、あの目、すぐに目を離したいのになかなか離せないし、頭にずっと残ってるし、なんなの…」

 ガタガタと震える自分の身体をかばうように両腕で抱き、そう訴えるモーリエは、恐怖の元凶が去ったことへの安堵感からか涙を流していた。

「…そういう盾なんだ、見る者を死へと誘う盾にして、持ち主をあらゆる災いから守る盾」

 申し訳なさから相手を窺うような気まずい声になるカルマ。

「はい、これを使って」

 カルマは未だに震えるモーリエにそっとハンカチを差し出す。

「…ありがとう」

 最初カルマのその行動の意味が理解出来なかったモーリエだったが、自分が泣いていることに気がつくと、安堵と恐怖の混ざった声でそう礼を言った。

(落ち着いてきたかな)

 ハンカチで涙を拭くモーリエの姿に心の中で安堵のため息を吐くカルマ。

(俺の時も大変だったな…)

 モーリエの様子を見ていると、モナルカが自分にこの盾を渡した時のことを思い出すカルマ。




『兄さん、念のためにこれも持っていってください』

 大鎌と剣を渡され、その言葉とともに差し出される盾。

『ん?…ッ!!』

 それを見たカルマは恐怖のあまり凍りつく。

『あっ、すいません』

 その様子に目が彫られた方を上に差し出したことに気づいたモナルカは慌てて盾を裏返す。

『あ、え、な、な…』

 恐怖と混乱のあまり言葉が上手く出ず、ピントが合ってないような虚ろな目になるカルマ。

『ふむ、この――はまだ――ですかね?でも、――に比べれば…』



(あの後モナルカが何か言っていたな、恐怖で頭が回ってなかったから覚えてないけど)

 カルマはもう1度昔の記憶を漁るも、それ以上は思い出すことは出来なかった。


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