疲れました
ギルド本部に雪の実を10個無事に届け終えると、カルマとイルカは『夜天光』のギルドハウスに戻っていた。
「おかえりなさいませ」
ギルドハウスに着くと、ライテが笑顔で出迎えてくれた。
「た、ただいまです」
「今戻りました」
相変わらずライテの前では緊張で固くなるカルマに楽しそうに微笑むライテ。
「活動報告をしたいのですが、ギルマスは居ますか?」
どことなく事務的な口調で問いかけるイルカ。
「はい、現在は書斎に居られるかと」
「そうですか、ありがとうございます」
その答えに軽く一礼すると、書斎に向けて歩き出すイルカ。
「え?あっ、ちょ、ま─―」
それに慌ててついていくカルマ。
そんな2人をライテは一礼して見送るのだった。
「あ、あの。活動報告ってどんなことを報告するんですか?」
階段を昇るイルカの後をついていきながら、先程の話で気になったことを聞くカルマ。
「どんなことって、依頼を請けてからギルド本部に報告するまでを大まかに一通りかな。まぁ、ものによっては詳細に報告しなければならないのもあるけれど、大体は簡単な報告だけだね」
「そうなんですか」
「本来報告は義務ではないけどね、『夜天光』ではギルマスの意向でほとんど義務みたいなものかな。ギルドによっては報告すらない所もあるし、名称だってばらばらだ」
「へ〜、そうなんですね」
「実力とか性格とか色々知りたいのだろうけど、ウチはそこそこ数が多いから報告も大変なうえに、ギルマスも忙しい人だから大抵は書類提出なんだけど、今回はカルマ君の初めての外での依頼だからね─―っと、着いたね」
そんな話をしている間に、書斎に到着するカルマとイルカ。
「イルカとカルマです。依頼を終えたので報告したいのですが、今よろしいでしょうか?」
書斎の扉をノックして入室の許可を請うイルカ。
「大丈夫だ、入れ」
扉越しにオグンの声が聞こえる。
「失礼します」
その声を聞き、静かに扉を開くイルカ。
イルカに続き入室したカルマをオグンは笑顔で迎える。
「依頼完遂の報告は届いていると思いますが、ご報告を─」
そう言うとイルカは、ギルドハウスを出た所から雪の実をギルド本部に届けた所までの要点だけを簡単に説明する。
「なるほど、依頼完遂と報告ご苦労」
オグンはイルカの説明を聞き終えると、ゆっくり頷き笑顔で2人を労う。
「それでカルマ、初めての王都の外での任務はどうだった?」
オグンは視線をイルカからカルマに移すと、そう問いかける。
「は、はい!なんと言いますか、終始緊張していて疲れました」
「ふははははっ、疲れたか、そりゃ大変だったな」
カルマの感想を聞き、楽しそうに笑うオグンと、
「ふむ、君は相変わらずどこかずれてる気がするな」
カルマを興味深そうに見つめるイルカ。
そんな二人の視線に晒されて、少し居心地が悪いカルマだった。




