神秘的な光景
「それが雪の実ですか…」
あれから2日と半日が過ぎた。
結局雪の実を見つけられたのは冬の樹が群生している場所まで来てからであった。
「綺麗だろ」
イルカが採ってきた雪の実をカルマに見せる。
「はい」
雪の実は直径20cmほどの球体で、その中心には直径5cmほどの白い実の部分があり、それを氷のような透明な殻が覆っていて、持つと溶けてなくなりそうな儚さがあった。
「えっと、確かこれを10個だったかな?」
イルカは持ってきたリュックサックから依頼書を取りだし確認する。
「10個…だね。えっと現在は─」
次いで雪の実を入れている籠を確認するイルカ。
「…7個か」
もう少しだな。と呟くと、残り3個を探して樹を見上げるイルカ。
「あれは雪の実じゃないですか?」
カルマが1本の冬の樹を指差す。
「ん?あぁそうだな」
カルマはイルカが視線を自分が指差す方へと向けると、
「次は俺が採ってきてもいいですか?」
と、確認する。
「気をつけて登れよ」
カルマはイルカに許可をもらうと、雪の実が生る冬の樹に登り始める。
(高いところに生っているだけ。か)
王都を発った日のイルカの言葉を思い出すカルマ。
(確かに少し滑りやすいけどわりと登りやすいな)
そう思い樹を見上げると、雪の実が見えるが、
(けどやっぱり高いな…)
まだまだ先に生っているのだった。
「すごい…」
雪の実まで登りきったカルマは雪の実の美しさに感嘆の声を漏らす。
花弁の帽子を被る様に花の中央に生っている雪の実が光をキラキラと反射させる様はさながら、陽光を反射する朝露の様であった。
それが周りに複数あり、風に揺れる様はまるで妖精がダンスをしているようなとても神秘的な光景でもあった。
「ここにはまだいっぱい在るんだな」
その光景にしばし見入っていたカルマは、改めてその数に驚く。
「えっと…パッと見12個ぐらい?」
ある程度厳選していたとはいえ、先ほどまでイルカが探索してやっと7個集まっただけである。それだけに一ヶ所にこれだけ在るのは今の時期では珍しいのではないか?と想像する。
今いるところからは見えないだけで、周りにはまだ在りそうでもあるのだが、
「…どれを選べばいいんだろう──」
イルカから事前に選定基準を聞いてはいたが、いざ選ぶとなるとただでさえ迷うものなのに、更に数が予想以上に多くて戸惑うカルマ。
「残り必要数は3個だから」
とりあえず、比べていって少しずつ数を減らす作戦にでる。
「多めに持って降りようかな」
それでも残った5個を見ながらそう決めるカルマなのであった。




