軽く泣きたくなった
王都を発ってから3日が過ぎた。
カシワミの森まではトラブルもなく無事にたどり着くことが出来たが、今回の依頼の本番はここからだった。
「どっちを向いても木、木、木……しかも違いがいまいち分からん」
カシワミの森に入って1日、森の中を歩き続けるも、周りは似たような木ばかりで同じところをぐるぐる回っていると言われたら信用しそうなほどだった。
「同じように見えても1本1本は違う個体ですからね、違いはちゃんとありますよ」
イルカの言葉にカルマは改めて周りを観察するも、
「……分からん。違うのは分かるけど、少し前の風景と同じところだ。と言われたら納得しそうだ…」
カルマは少しげんなりした顔でため息を吐いた。
「イルカさんはよく分かりますね。俺なら即迷子ですよ」
精神的に疲れてきたのか、声に疲労の色が混じる。
「はは、まぁ慣れかな。前にも言ったが、僕はここに何度も来てるからね、なんとなく木の違いが分かるんだよ。そうすると目的地までの道が分かるようになるのさ。僕も最初はカルマ君と同じようなものだったよ」
なんでもないことのように答えるイルカに、
「そんなものですかね?」
理屈では分かるが、そんな簡単なことではないんだろうな。と少し呆れるカルマ。
「冬の樹まではあとどれくらいですか?」
「そうだね、1番近い場所であと1日ぐらいかな」
「そこに雪の実は在るでしょうか?」
「さぁ、それは分からない。時期が少し遅いからね、雪の実が生っているかは行ってみないと…」
少し答えずらそうなイルカ。
「無ければどうするのですか?」
「無ければ更に1日程行った先に次の冬の樹があるからそこに行くことになるな。そこでも駄目なら更に半日程行った場所の冬の樹を調べることになるな。まぁ、そこは冬の樹が群生してるから、今の時期でもまだ見つかるはずだよ」
「そうですか…」
つまりはカシワミの森を抜けるには最短であと3日。最長であと6日かかるという事実に、精神的に疲れてきているカルマは軽く泣きたくなったのだった。




