兄さんは相変わらず元気ですね
「さあ、がんばるぞ!」
冬が過ぎ、春が訪れた頃、活発そうな短髪をしたその少年は目をきらきらと輝かせながらひとつ気合いをいれると、旅に出る。
「兄さんは相変わらず元気ですね」
もうひとりの黒髪で表情が乏しいせいか全体的に暗いイメージのする少年が少し暑苦しそうにつぶやく。
「当たり前だ、念願の旅立ちだよ!むしろモナルカ、お前がいつも通り過ぎるんだ」
「言いたい事はわかりますが、私は別に初めての旅ではありませんし、それに変に気張って怪我をしても知りませんよ」
「そのときはお前の治癒魔法で治してくれればいいじゃないか。得意だろ?」
先を歩くカルマが笑顔で振り返り、それをモナルカは呆れた様な眼差しで見つめると、「ハァ」とため息をひとつ零した。
「お忘れですか?兄さんと私は同じ場所に向かっているのではないのですよ」
二人が向かっているのは王都サピオ、しかしモナルカが目指す場所は王都の北に在る街マスカ。二人は途中で別々の道を進む事になるのである。
「分かってるさ、でも途中までは一緒だろ」
なにを分かりきった事を。と言いたげに答えるとカルマは前を向いて歩きだす。
そんな暖気な様子にまたため息を零すモナルカなのであった。