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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第四章:ギルド編

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87頁:告白は言葉で直接伝えましょう

欠陥勇士(ラッキーヒーロー)

 使用者……マックス

 能力値を下げることで回避率、クリティカル率、防御率などの確率をブーストする技(一定時間持続型)。


 マックス曰わく、

「自分より強い相手に敢えて挑む、それが我がスタイルだ!」

 

 丁度100日前。

 デスゲームが始まったあの日。



 ある者は理解した。

 この世界こそ自分が救うべき世界だと。


 ある者は予知した。

 この世界の行く末を。


 ある者は感じ取った。

 この世界は『本物』の世界だと。


 ある者は受け止めた。

 この世界が自分の死に場所になると。


 ある者は考えた。

 この世界は無法になると。


 ある者は選んだ。

 この世界でどうやっても生き残ろうと。


 ある者は興味がなかった。

 ただ、己の知る者を探した。


 ある者は思い出した。

 この世界は生き残るための力を持つ者しか生き残れないと。


 ある者は悟った。

 この世界に自分の求めるものがあると。


 ある者は笑った。

 この世界は楽しそうだと。





 そして、誰でもない者は彼らを見下ろして思う。

 彼らなら、きっと大丈夫だと。








≪現在 DBO≫


 花火玉すり替え事件の後、ナビキはしばし事件の後処理に奔走することになった。

 破壊したドアに関する宿への謝罪。

 本物の花火玉の返却。

 目撃者としてのメモリの証言の記録。

 捕まえた三人からの周辺情報の聴取。

 鬼ごっこで破損した施設の把握と修繕手配。

 


 それらの雑務をすべてこなす頃には、もう日が暮れ始めていた。


「ふう……やっと終わりました」


 本来は休みだったはずなのだが、何分偶然とはいえこの一件に誰より深くかかわってしまったのだ。

 これは、スカイに代休を要求しても怒られない気がする。


「あ、そうだ……まだ一つありましたね」


 今日残された最後の仕事。

 それは、自分が『アイドル』として課せられた唯一の仕事……コンサートだ。


「はあ……精神的に疲労困憊な状態ですることじゃないですよ」


 会場はコロシアムとしても使っていた『本部』の運動場。仮設だがそれなりのステージを作ってそこで歌う予定だ。

 コンサートまでの残り時間は二時間ほど。

 精神集中を考えれば一時間前には楽屋に入っていたい。

 だが、その前に確かめておきたいことがある。


「アイコちゃん……デートうまくいってますかね?」


 それが一番の心配だ。

 ナビキが徹底的にサポートしたおかげでデートが中止になるような事件は起きていないはずだが、今日の一番の目的はアイコから赤兎への『告白』なのだ。

 それは成功してほしい。


「ちょっとだけ時間ありますし、様子見に行ってみましょうか」


 ナビキは、フレンド権限でアイコの位置を確認し、アイコがいるらしい西門近くの耕作地帯へと向かった。






 『時計の街』の生産職は何も武器職人や裁縫屋などの店を出して商売するようなプレイヤーばかりではない。中には、田や畑で作物を育てているプレイヤーもいる。

 『耕作地帯』とは、そのようなプレイヤー達の土地を一か所に集めて、野獣や鳥を防ぐ対抗策や水路などを共有して効率的に作物を育てるために作られた区画である。


 そして、今日は祭で他のプレイヤーが皆プレイヤーショップの密集地帯に集まっているため、ここは人がおらず閑散とした雰囲気を醸し出している。




 そんな中、アイコと赤兎は一緒に沈む夕日を眺めている。


「綺麗だね……真っ赤な夕日」


「ああ……きれいだな」




 そして、フィールドの木の影から、夕日の逆光に隠れて、モンスター避けの香を使って邪魔が入らないように注意しながら望遠鏡を覗くプレイヤーがいた。

 もちろんナビキだ。


 今日一日のデートが上手くいったためか、かなりいい雰囲気だ。

 ナビキはそんな二人を望遠鏡で見ながら、ライト直伝の読唇術で会話を読み取る。


「苦労したかいがありましたね……頑張ってください、アイコちゃん」


 いくらデートが上手く行こうと、アイコの告白が上手く行かなければ全て水の泡だ。

 アイコは告白できると言っていたが……不安だ。


 もう顔から湯気が出そうなほど真っ赤になってるし。


「出歯亀してるみたいで気分は良くないですが……」


 これは親友の恋路を見守るために必要なことなのだ。

 断じて、面白がっているわけではない……はず。





 ナビキに見られているとも知らずに、二人の世界に入っている赤兎とアイコは話を続ける。


「赤兎……初めて会った時のこと憶えてる?」


「んっと……ボスのダンジョン攻略でライトがパーティーに加えたいって言って来た時か?」


「うん……そうだね」


 アイコはやや寂しそうな表情をする。

 それを見て、赤兎は浅くため息を吐いてもう一度口を開く。


「『沼の洞窟』のダンジョンで罠に嵌ってたアイコを助けた時か」


「え……」


「いや、オレも最近思い出したんだけどな……アイコは何も言わないし、罠にかかったことには触れてほしくないのかと思ってな」


「そんな……あたしは、赤兎が忘れちゃってるかと思って」


「……それに、まるで別人みたいだったからな。最初見た時は罠がどうとかを抜いても、すごく弱弱しかった……けど、ボスのダンジョンでまた会ったときはすごく強くなってた。レベルとか関係なく、なんか雰囲気が違った」


「そっか……あたし、強くなれてたんだ」


 アイコは顔をさらに赤らめ、嬉しそうにはにかむ。


「赤兎……あたしさ、このゲームが始まったすぐ後……人を見殺しにしたんだ」


「……」

 赤兎は驚いたようにアイコを見るが……何も言わない。


「元々このゲームを始めたのはちょっと拳法の練習になるかと思ったからなんだけど……デスゲームになっちゃって、でもあたしは他の人よりは強いと思ってたんだよね。低レベルモンスターの単純な攻撃なら避けるのは簡単だったし、デスゲームなんて楽勝だって思ってた時期もあったんだよ」


 アイコはうつむき、顔に影を落とす。


「でも、そんな時にさ……フィールドで沢山のモンスターに追い回されてる人がいたんだよ。その人はあたしに助けを求めて、あたしの方へ走って来たんだ。でも、逃げてる間にさらにモンスターを集めちゃったみたいで、とても相手できなくて……一目散に逃げ出したんだ」


 アイコには自信があった。

 現実世界で磨いた拳法の技術があった。

 事実、ソロでもフィールドに出て安定して狩りができるほどの実力があった。


 しかし、それは他人を窮地から救えるほどではなかった。


「その人の最後の悲鳴を聞いて、攻撃される音を聞いて、振り返ったりせずに全力で走ったよ。モンスター達がその人を襲ってる間しか逃げるチャンスなんてないと思ったから……その日は、眠れなかったよ」


 それまでは、(ゲームオーバー)など他人事だと、遠い場所で起こっていることだと思っていた。

 自分の身は自分で守れる。仲間などいなくても生きていけると思っていた。

 だが、目の前で……いや、その光景を見つめることすらできずに逃げ出した。


「それまでは必要ないからパーティーとかは組んでなかったけど、それからは誰かとパーティーを組んだりするのが怖くなったの。今度は見殺しにされるんじゃないのか……それなら、誰とも組まない方がいいんじゃないのか……本末転倒だけど、そう思ったの」


 それから、アイコはどんな時でも一人でフィールドやダンジョンに潜るようになった。

 しかし、ダンジョンは単純な戦闘能力以外にも罠や仕掛けを見抜くなどの特殊な技能……そして何より経験が必要になる。

 別のVRゲームでダンジョン慣れしたプレイヤーにとっては低レベルの簡単なダンジョンでも、ただ持ち前の戦闘技術だけでレベルを上げたプレイヤーには危険な場所だった。

 本来なら、そう言った場所は経験者を見つけてパーティーを組ませてもらうべきだったのだが、アイコはそれをしなかった。


「赤兎と初めて会ったとき、当然見捨てられるものだと思ってたの。罠にかかったのはあたしの自業自得だったし、見ず知らずのパーティーだったし……何より、あたしもそうだったから。でも、赤兎は当然のことをしてるみたいな顔であたしを助けてくれて、しかも何の見返りも求めなかった……驚いたよ。何の下心もなく、疑問も抱かず、見ず知らずの人を助けるような人がいるなんて」


 赤兎にとっては『困ってる他人を助ける』という行為は当然の事だったのだろうが、アイコにとってはそれは驚天動地のことだった。

 こんな命のかかったデスゲームで……自分一人生きられるかもわからないこのゲームで、当然のように他人を助けるなどということが出来るなんて信じられなかった。


「その後、赤兎をイベントで見かけた時……最初は赤兎が『強い』から他人を助ける余裕があったのかと思った。強い者が弱い者を助けていい気分になってたのかと思って……自分がそうやって出来なかったのを正当化しようとした。でも、戦ってる姿を見て思ったよ……赤兎って、単純に馬鹿なんだなって」


「おい」


「はは、ごめんね。でも、本当にそう思ったんだよ。普通に考えて到底勝てないイベントボスに刀一本で、特別なスキルも秘策もなく斬りかかって行くんだもん。ボスが倒れ時には、信じられなかった。でも、あの時ようやくわかったの……あの時も、赤兎は何も考えてなかった。自分の方が上になれるから助けるとか、倒せるから戦うとか、そんな計算をするような人じゃないんだって思ったの……だから、あなたとなら組みたいって思った……あの時、あたしはライトから無理やり赤兎の隣を奪おうとしたの。負けっちゃったけど……でも、ライトはあたしの浅ましい考えを知ったうえで赤兎に紹介してくれた……ライトは利益の一致みたいなこと言ってたけど、ライトもあたしのそういう所を見抜いたうえでわざわざそんな理由を付けてくれたんだと思う」


 アイコと赤兎の間を取り持つ条件としてライトが提示したのが、前線で手に入るゲームの情報の提供。

 確かに、それはライトの利益としても大きかったが、あとからよく考えたらわざわざアイコにそんなことをさせなくても、当時今のアイコのポジションにいてライトと強いつながりを持つナビキに聞けば前線の情報は手に入ったし、赤兎だって損得関係なく情報提供してくれるだろう。


 アイコがライトを根拠なしには信じられないだろうと、わざわざそんなことを言ってくれたのだろう。

 ライトは赤兎と対照的でいつも何か考えているみたいだが、それも皆が幸せになれる方法を模索しているのだ。

 保身ばかり考えていた自分とは違って……



 アイコがそんなことを考えてしばし沈んでいると、赤兎はアイコから目を逸らし、夕日を見ながら口を開いた。


「俺が最初にパーティーを組んだのはライトだったぜ。それもゲーム初日でな」


 アイコは驚いたように赤兎を見る。

 赤兎とライトがゲーム初期からの知り合いなのは知っていたが、まさか最初のコンビだなんて思っていなかった。


「情けない話な……俺はこのゲーム始まって最初、死ぬのが恐くて街の外に踏み出すこともできなかったんだ。」


「……え?」

 今の赤兎からは想像もできないことだった。

 最前線で誰よりも勇敢に戦っている彼が、最初の一歩すら踏み出せなかったなど想像も出来なかった。


「『準備運動』なんつって何時間も素振りして誤魔化してたんだけどな……本当に今思い出しても、あの時は切羽詰ってた。俺はGWOのトーナメントで上から二番目だったんだが……命がかかってると思うと、とてもじゃないが今まで通りになんて戦える気がしなかったんだ。本当はVRゲームの経験のある俺が率先してフィールドに出ないといけなかったのに、足がすくんじまった」


「そっか……でもたぶんそれは、誰よりもちゃんとこの世界と向き合ってたんだと思う。あたしは、他のフィールドから戻ってきた人の話を聞いて、そう簡単には死なないって聞いて街の外へ出たけど……自分が死ぬなんて覚悟は全然できてなかったと思う。たぶん、運が良かっただけで……死ぬような目に遭ったら、きっと後悔しながら、『こんなことになるなんて思ってなかった』って思いながら死んじゃってた」


 大抵のプレイヤーが最初にフィールドに踏み出す時は、自分に『これは普通のVRゲームと同じだ』と言い聞かせながらその一歩を踏み出したという。

 そう思い込まなければモンスターを前にしてまともに動くことなんてできなかっただろうし、そうやって誤魔化さなければ死の恐怖に押しつぶされてしまっただろう。


 だが、赤兎はそれと最初から向き合っていた。


「ま、それが普通だわな……けど、ライトは違ったんだ。初めて会ったとき、ライトが何をしたと思う?」


「……自己紹介とか?」


「あいつ、ピリピリしてる俺を見て笑いを取ろうとしたんだぜ。驚いて思わずどついちまったくらいだ」


「うわ……でも、ライトらしい」


「しかも、それから一緒にフィールドに出たら、わざとピンチを演出して俺をハラハラさせたりな。まるでこの世界にビビッてなかった……現実逃避してるわけでもなく、狂ってるわけでもなく、まるで見せつけるようにしていやがった……この世界が『生きるか死ぬか』の世界じゃなくて『どうやって生きるか』の世界だってな……きっと、あいつにとっては、『死ぬ』なんてことは問題じゃなくてただ『終わる』ってだけなんだろう。」


 ライトはおそらく、死んでも後悔しない。

 死にたがっているわけではないだろうが、自分の生物としての死には興味がない。

 彼にとっての『死』とは、自分の周りの世界がなくなることだろう。

 自分の生きてきた足跡がどこにも残らないことだろう。


「俺はあいつを見て思ったんだよ……俺が生きてるのは『今』なんだって……俺は馬鹿だから、自分がいつ死ぬかとか、それまでやってきたことで他に何ができたとか……それこそ未来や過去はわからないけど、『今』感じてることは分かるし、『今』できることはなんでもできるんだ。だから、俺は自分の感じたことを全部認めて、自分ができることはやろうと決めてる。死ぬことへの恐怖も消えてはいないし、俺にできることなんて馬鹿みたいに剣を振り続けることくらいだが、それで誰かを護れるなら護りたいし、自分の中にある気持ちを全部認めたうえで前へ進みたい」

 赤兎はアイコの顔を見つめる。


 死の覚悟とは恐怖を忘れることではない。

 恐怖を持ったままそれに向き合うこと。


 自分の中の全てを自分のものとして認め、自分の中にある全てを出し切る。

 だからこそ、赤兎は誰よりも強いのだ。

 ただ単純に、ただ純粋に、ただ真っ直ぐに突き進む強さ。


 そこに、アイコは惚れたのだ。


「あの……赤兎、あたしね……」




「だから、俺の中にあるこの気持ちも認めたい……アイコ、俺はおまえが好きだ」




「……え?」

 アイコが赤兎の予想外の言葉に思考を停止させる。

 それは……自分が赤兎に言おうと思っていたことでは……


 アイコは改めて赤兎の顔をまじまじと見つめる。

 夕日でわかりにくかったが……すごく赤い。


「今日一日一緒に過ごして改めて自分の気持ちを確認できた! 今までは吊り橋効果とか戦闘の緊張とかそういうのを勘違いしてるかもしれないと思って認められなかったけど、今日一緒に何気ない時間を過ごせて、こうやって何気ない会話をしてそれでもやっぱり間違いじゃなかった! 俺はアイコが好きだ、それも異性として!!」


「え……え、え、ちょっと待って!! いきなりすぎて展開についていけない、一回ちょっと落ち着かせて」


「いや、今日一日ずっと考えてたけどもう間違いない。それに、本当に急で悪いが何らかの返事が欲しい……もう、自覚した以上待てないんだ!! そりゃ俺は馬鹿だし、アイコの裸が見えちまったときとかついつい変なこと考えちまうし、馬鹿だし、料理も家事も全然できないし、馬鹿だし、無鉄砲だし、馬鹿だし、独身歴=年齢だし、馬鹿だし、デリカシーもないし、馬鹿だし……アイコは俺のこと嫌いかもしれないけど……俺はお前が好きだ!!」


 勢いが凄い。

 まるで、拒絶されるまえに全てを出しきろうとしているかのようだ。


「ちょっと待って!! 赤兎……もしかして、あたしが断るかもしれないと……あたしが赤兎のこと嫌いかもしれないと思いながら告白してる? なんで?」


「だってアイコ……何かあるとすぐ殴るし、特に他に女の子がいるときとか……今日の朝とか現実じゃシャレにならないくらい全力だし、俺が一人で無茶すると怒るし、いつも『しょうがない』って言いながら俺の身の回りのことしてくれるし……それにギルドの皆、アイコには好きな奴がいるとか噂してるし……」


 アイコは、無言で拳を握りしめた。

 そして、大きく息を吸い、腹の底から声を出すモーションを整え……



「嫌いなところがあるとしたそういう所だよこの鈍感馬鹿!!!!!!」

 過去最強の鉄拳が赤兎の腹に突き刺さり、10メートル以上ぶっ飛んだ。



「グホァ……死ぬ……これ、フィールドか、現実世界だったら……死んでる……内臓破裂で……」


「嫌いだったら二か月も一緒に組んでるわけないだろが!! ほんとしょうがない奴ねあんたは!? こっちはあんたが自分の気持ちに気付く遥か前からあたしはあんたが好きだったよ!! あんたが無茶するたびに死ぬほど心配だったし、あんたが他の女の子とデレデレしてるのを見ると羨ましくて腸煮えくり返ってたわよ!! あたしに好きな奴がいる? そんなもん赤兎に決まってんだろが気付けこの主人公野郎!!」


 赤兎は腹を押さえながら、体を起こす。


「それって……OKってことか?」


 アイコは真っ赤になりながら、今更ながらもじもじと恥ずかしがりながら答えた。


「こんな……暴力女で良かったら、よろしくお願いします」







 同刻。


 ナビキは望遠鏡をしまいながら、優しく微笑み、気付かれないように気を付けながらその場を離れる。

 丁度日も沈んで暗くなり始めている。

 戻るにはちょうどいい頃合いだ。


「良かったですね、アイコちゃん」


 一日の労が報われた気がした。

 赤兎から告白するとは完全に予想外だったが、それも今日のデートが大したアクシデントもなく出来たおかげだというなら、苦労したかいがあったというものだ。


 この後、夜の祭で二人が正式に付き合って初めてのデートはどんなことをするのかは気になるが……そこは後日惚気話として聞かせてもらおう。


「それにしても……せっかく休みだったはずなのになんか一仕事終わった感じですねぇ」


 後はコンサートだけ。

 それが終わったら他の有志のプレイヤーによるステージショウなどもあるし、その間は少しだけ祭りの時間を楽しもう。


 本当は、ライトが帰って来たら一緒に回りたかったのだが……



「『一仕事終わった』か……その割には、詰めが甘かったな」



 ナビキは西門に立つその声の主を見た。

 まるで猛獣のような凄まじい覇気。

 一目で老人だとわかるのに、分厚い革のコートと大剣を装備する姿からは全く『衰え』のようなものを感じさせない。

 彼は……


「OCCの……ジャッジマンさん?」


「ふん、『さん』なんぞ付ける必要はない。それより、お前の仕事のやり残しだ」


 そう言って、ジャッジマンは何かをナビキに放り投げる。

 それは、ナビキの目の前に落ち、薄暗い中でもそれが何かわかる。

 三人の女性プレイヤー……『アマゾネス』のメンバー達だ。


「こ、この人たちは……」


「ふん、街の中でこそこそと弓など使おうとしていたから罰しただけだ。他人の告白を盗み見てあまつさえ卑怯な妨害など、誰も認めんだろ……少し叱ったら気絶などしおって」


 おそらく、この三人は特に熱心に赤兎にアプローチしていた三人だろう。

 ギルドマスターからの規制も破り、アイコの告白を邪魔しようとしたのだろう。

 ……まさか、赤兎が告白するなんて思わなかっただろうが。


 しかし、前線クラスのプレイヤーを気絶させるなど、どんな『叱り方』をしたのだろうか……


「これはどうもありがとうございました。なんとお礼を言ったらいいか……」


「礼など言わなくていい。これはただのついでだ……用件は他にある」


 OCCのリーダー『ジャッジマン』は西門を出て、フィールドに踏み出して言った。


「ナビキ、我々OCCに加われ」

 マックスからの相談

『悩みなど、自力で解決してやる!』


(ジャック)「このコーナーの趣旨を理解してない!?」

(マリー)「まあ……その姿勢は大事だと思いますよ」

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